天才贋作者のモチベーションとは?

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションです。

『好きこそものの上手なれ!』とは、よく使われる言葉です。確かに夢中になれることがあれば、知識や技術は自然に身につくはず。そして、その夢中になったことに市場性があれば、なお良しです。

野球やサッカーなどのプロスポーツは、それを見ることが大好きなファンの存在があってこそ、ビジネスとして成立します。観客がゼロになってしまうと、市場が成立せず、今や大きなクラブでも経営危機になっているのだとか。無理矢理開幕をすすめるプレミアリーグで感染爆発が起こらなければ良いのですが…。

さて、今回は《美術館を手玉にとった男》という映画の話です。30年に渡って、米国20州、46の美術館を騙した天才的な贋作専門画家のドキュメンタリー映画です。

2008年に主人公マーク・ランディスの贋作事件はニュースになるのですが、彼は捕まることはありませんでした。

《美術館を手玉にとった男》

なぜかというと、彼はお金もうけのために贋作を描いたのではなく、専門家が本物と見紛う絵画を自ら描き、慈善活動と称して寄贈しただけだったから。なんとも妙な話なのですが、彼の飄々とした語り口やその人となりを見れば、少し納得できる気もします。

ポール・シニャック(1863〜1935年)、スタニスラス・レピーヌ(1835〜1892年)、ルイ・ヴァルタ(1869〜1952年)などなど、中世の時祷書までも、ウォルマートで購入した安い画材を使って、楽しみながら贋作をしている様子をカメラが捉えています。

なぜ自らオリジナルの作品を作らないのか『この世界にオリジナルなものなんてないのさ』と彼は語っていました。そして、なぜ贋作を作るのかという質問に対しては『贋作を作るのが好きだから』と話します。

もちろん、単純にその言葉どおりに受け取ることはできないのですが、その言葉の中には確かに本音があったような気がします。

彼がどのように画を描いているか、その屈折した精神を知ることは、アートファンの皆さまにとって、何かの刺激になるかもしれません。

複雑な現代社会の病理の中にある、決して評価されることの無い才能を知り、皆さん自らの真贋を見極める力につなげていただければ幸いです。

サムライオークションとしては、決して贋作製作者をリスペクトしているわけではありませんので、念のため (*´ω`*)

「かるた」が嫁入り道具?

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

映画やアニメでも大人気の、競技かるたが題材の「ちはやふる」というマンガをご存知の方は多いのではないでしょうか。競技かるたとは、かるたの一種である百人一首を用いた競技のことです。小さい活動を含めると競技人口が100万人を超えるスポーツ競技となっており、「畳の上の格闘技」とも言われるそうです。バシバシ叩かれてボロボロになる、そんな誰もが知るかるたですが、昔は惜しみなく財をつぎ込まれる高価なものでもありました。

かるたの歴史

トランプのようなカードのことをポルトガル語で「carta(カルタ)」と言います。そのカルタが、室町時代後期にキリスト教や鉄砲と一緒にポルトガル人によって日本に伝えられました。日本にはそれ以前から「貝覆い」という二枚の貝殻に絵柄を書いて同じものを見つける、という遊びがありました。この貝覆いとカードゲームであるカルタが融合され、日本独自のカード型のゲームとして「かるた」が誕生したと言われています。

惜しみなく財をつぎ込む

かるたが誕生した頃は遊ぶものというよりも、貴族が嫁入り道具として贅を尽くしたり、教養や観賞のためにコレクションするものでした。そのため、一枚の絵や縁に金箔を贅沢に使い、裏一面には銀を使用するなど細部にこだわります。また、かるたを入れる箱は職人が絵を描き、漆を塗った豪華なものに仕立て上げるなど、各分野のプロによってひとつのかるたが作られていました。そこに集約される財や技術からわかるように、当時のかるたは間違いなく美術品としての役割を担っていました。現代ではお正月に遊ぶ子どものゲームというイメージがありますが、昔は大人の嗜好品だったのです。

遊ぶだけではもったいない!

小さい頃よく遊んでいた、家の引き出しにしまってあるその「かるた」。年季の入ったものであれば、もしかするととても価値のあるものかもしれません。遊ぶだけではなく、鑑賞して楽しんでみてはいかがでしょうか。

初心者のための骨董・古美術用語シリーズ!

こんにちは! 初心者大歓迎の《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションです。

美術品、骨董品を楽しむためにご紹介している基本用語集。不規則・不定期に掲載しています。今回は〈掛軸〉にまつわる言葉について、まとめてみました。ご参照ください。

【掛物:かけもの】

床の間にかけるように作られた書画のこと。掛軸は、掛物の一種です。仏画、浮世絵、山水画、花鳥画などのジャンルがあります。連作となる複数の画を同じ表装で仕立てたものを〈対幅(ついふく)〉と呼びます。床の間は本来、掛物や生花などを飾る日本独自の専用スペース。その建築文化が失われてきたことで、掛物を飾る機会が減っているのは、寂しい限りです。

【表具:ひょうぐ】

書画を飾るために、布や紙などによってつくられたベース、額に相当する部分。掛軸、屏風、ふすま、衝立、巻物などのことを指します。それらを仕立てることを表装(ひょうそう)といい、表装を仕事にしている人を表具師(ひょうぐし)と呼びます。

【本紙:ほんし】

掛軸や屏風、巻物などに飾る作品本体。書画の描かれた紙や絹のことを指します。鑑賞の中心となる対象物ですね。本来は、〈本紙〉が鑑賞のメインではあるのですが、掛軸などは〈表具〉も含めた全体を作品としてとらえる場合も多いです。

【上・下:じょう・げ】

掛軸の上の部分と下の部分。それぞれ、天・地とも呼びます。掛軸を床の間に飾った時、本紙が鑑賞の中心となって、違和感がないようにバランスをとるのが上・下の役割です。日本文化に特有の余白ですね。

【中廻し:ちゅうまわし】

掛物の上・下の間の〈本紙〉をとりかこむ部分を指します。〈本紙〉のバックに重なるところで、書画の印象に影響するのでとても重要なため、上等な〈裂(きれ)〉が使われます。

【風帯:ふうたい】

掛物の上部に上部の軸から下に向けて垂らす細い紐状の布のこと。一般的に〈一文字〉と同じ〈裂〉を使うことが多いです。

【一文字:いちもんじ】

〈本紙〉の上と下の部分に貼る幅の狭い〈裂〉のことを指します。面積は小さいのですが、〈表具〉の要といわれる大変に重要なポイントです。通常は〈中廻し〉や〈上・下〉よりも上等な〈裂〉を使います。上の〈一文字〉が、下の倍の幅で作成されます。

【八双:はっそう】

掛軸の一番上に付いている、棒状のものを〈八双〉または、〈半月(はんげつ)〉、〈表木(ひょうもく)〉と呼びます。多くの断面はかまぼこ形ですが、江戸中期以前のものには、三角形のものもあります。

〈本紙〉と同様に奥深い〈表具〉の世界。まずは、〈上・下〉〈風帯〉〈中廻し〉のスペースのバランスを評価すること、そしてそこで使われている〈裂〉を見て、自分なりの価値判断をすること。そんなところから、掛軸コレクションを楽しんでください!

心の中の庭を散歩する

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2007年に亡くなった故・河合隼雄は、日本の臨床心理学の土台を築いた第一人者であり、元文化庁長官でもあった方です。彼がカウンセリングの現場に導入した「箱庭療法」は多くの人々を救ってきました。「箱庭」とは、浅い箱に砂や小さな人形、模型など様々なものを自由に置いて物語を表現する遊びのようなものです。箱庭を通じて行う自己表現によって治癒効果を促すという、世界でも確立されたセラピーです。

ところで、コロナウイルスの影響で不要不急の外出を控える状況が続いています。部屋にこもったままだと閉塞感を感じますよね。もやもやを吐き出したい、でも出歩くのは気が引ける。こんなとき自宅でできる遊びとして「箱庭」を試してみてはいかがでしょうか。箱の上で無心に物語を作る作業は、心が開放される効果があります。頭の中のことは紙に書き出すと良いと言われますが、気持ちを言葉にして書き出すのは意外と億劫に感じるものです。箱庭は言葉が不要なので、気軽に楽しむことができると思います。

さらにここでオススメしたいのが、アートの要素も取り入れた「枯山水」を箱庭にしてみるということです。枯山水とは、禅の教えとともに発達した日本庭園の様式で、水を使わず、石や砂で自然の情景を表現する日本独自の庭です。京都のお寺などで実際に見たことがある方も多いのではないでしょうか。庭が無くても、室内で作ることができるキットがネットショップなどで販売されており、面白い作品がネット上にもたくさんアップロードされています。お出かけは難しくても、家にある小箱の中に河原の砂や石、花びらや木の枝などを拾ってきて作ってみれば、小さなお子さまでも楽しめると思います。

穏やかな水面やうねりのある波を「砂」で、おとなしい面や荒々しく力強い面を「石」の角度で表現し、無心になって作ってはやり直すという作業を繰り返してみると、そのときの気分と作品が似通ってくることに気がつくかもしれません。自宅でも楽しめるアートとして、ゆったりと「箱庭枯山水」を散歩してみてはいかがでしょうか。

社会が不安定な時、変革者は現れる

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歴史が好きだったなどとは、口が裂けても言えない学生だったのですが、年齢を重ねると突然大河ドラマにハマる友人がいたり、なぜか歴史に興味を持つようになる人は多いものです。人生経験が深まると、歴史上の出来事や誰それと自分を比較して、しみじみ共感できることが増えてくるのでしょうか。

最近、現在とルネサンス期を比較する評論やテレビ番組に触れることが何度かありました。ルネサンスという言葉は、辞書的には〈再生〉を意味するフランス語。ただ、その概念を語る切り口は幅広く、定義もさまざまあります。

私は塩野七生さんの『見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発』(『ルネサンスとは何であったのか・塩野七生ルネサンス著作集1』〈新潮社〉)が、この精神運動の本質であるという解釈が気に入っています。

1348〜1420年頃、キリスト教会が支配してきたヨーロッパでペストが大流行し、イングランドやイタリアでは、人口の8割が死亡したそうです。その時、人々は初めて教会を疑いはじめ、宗教改革やルネサンス運動につながっていきました。

病気による極端な人口減が社会に与えた影響も大きいでしょうが、それまで圧倒的な権力や信用を誇っていた教会の権威が損なわれたことで社会は不安定になり、その後大きく変化していったのだと思います。

世の中が不安定な時に、変革者は現れます。ルネサンス期にキラ星のごとく現れた芸術家たちは、それまでの強力なルールから解き放たれて、自由な表現を生み出していった、というわけですね。

アフターコロナの世界でも、さまざまな分野でゲームチャンジャーが出てくるような予感がします。アートの分野でも、新しい表現者が現れてくるでしょう。古い思考の人間にとっては、楽しみなような、怖いような複雑な心境です。

サムライオークションにも、表現の変革者たちの作品が出品されています。お時間のある時に、ぜひじっくりと作品を探してみてください。

バーチャルツアーならルーヴル美術館へ行ける!?

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

新型コロナウィルス対策で各地の美術館や博物館が臨時休館を余儀なくされていましたが、2020年5月5日の政府の発表で、東京都など13の「特定警戒都道府県」にて、密集防止策を条件に開館を容認する決定がされました。日本で美術館から感染者が出たという報道は特に出ていない状況ですが、感染リスクへの不安の声も少なくありません。入場制限やアルコール消毒、検温などの対策を徹底した中での再開になると思われますが、海外の美術館ではどのような対策を行っているのでしょうか。

2020年3月17日(火)に外出禁止令が出されたフランスでは、フランス内務省が発行する特例外出証明書を持ち歩かなければならなくなりました。その後、5月11日(月)からは100キロメートル以下の移動の外出が解禁され、100キロメートル以上、あるいは県をまたぐ場合などは外出証明書が必要となります。

世界最大級の美術館であるフランス・パリのルーヴル美術館は、この外出禁止令が出る前は入場制限を実施しながら営業を続けていました。しかし3月初め、従業員が働くことを拒否するなど感染への恐怖を訴えたこともあり二日間の営業停止がありました。その後営業を再開し、来場者へのソーシャルディスタンスやエチケットなどの呼びかけを行っていましたが、現在は閉館しています。レストランやカフェなどの飲食店なども営業停止していますが、美術館を含むこれらの商業施設以外は5月11日(月)以降に営業が一部再開されます。レストランでの飲食や美術館への入館ができるようになるのは6月2日(火)以降が検討されています。

そんな状況ではありますが、営業が再開されるまで待ちきれないという方の間で「美術館のオンラインビューイング」が注目を集めています。これを機に、館内を歩き回ることができるバーチャルツアーを体験してみてはいかがでしょうか。

▼ ルーヴル美術館

https://www.youvisit.com/tour/louvremuseum

https://www.louvre.fr/en/visites-en-ligne#tabs

【一流が憧れる天才《カラヴァッジオ》】

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションです。

熱心なファンというほどではないのですが、野外球場でビールを飲みながらプロ野球観戦するのが好きです。今年は開幕が遅れていますが、ロッテに入団した大型ルーキー佐々木朗希投手に注目しています。スポーツニュースでは、ブルペンで投げる佐々木選手の投球を見て驚く、一軍選手や解説者のコメントを紹介していますが、ダルビッシュ投手以上の逸材のようです。

〈一流は一流を知る〉とよく言われますが、一流の芸術家に目標とされた天才として思い出すのは、カラヴァッジョ(1571〜1610年)です。29歳で『聖マタイの殉教』と『聖マタイの召命』を完成させると一躍ローマ画壇の寵児となり、2週間を絵画制作に、その後の2ヶ月を遊んで暮らすというライフスタイルや素行の悪さも有名ですね。まさに古い時代の天才職人といった印象が、管理社会に生きる現代人には魅力的に映ります。

同じく天才と呼ばれるダビンチ(1452〜1519年)やピカソ(1881〜1973年)と比べて、絵画一本であったこと、そして38歳で早世したことからも、個人的にはよりヒロイックな印象です。何より、その光と闇のコントラスト、劇的照明効果による表現は、ルーベンス(1577〜1640年)、ヴェラスケス(1599〜1660年)、レンブラント(1606〜1669年)、フェルメール(1632〜1675年)などなど、超がつく一流画家たちに影響を与えました。そのスタイルに憧れた画家たちは〈カラヴァジェスキ〉と呼ばれています。

その天才カラヴァッジョの〈キリストの捕縛〉は、200年以上行方不明とされていた作品。しかも、1990年にアイルランドのダブリンで修道院に飾られていた時には、別人〈ホントホルスト(1592〜1656年)〉の、しかも複製画だと認識されていたそうです。1990年、優秀な絵画修復士との幸運な出会いによって、カラヴァッジョの作品と証明されました。

こんなお宝発掘ストーリーを知ると、ついつい骨董市に足が向いてしまいませんか? 

サムライオークションにも、そんなドラマチックな作品との出会いがあるかもしれません! お時間のある時には、ぜひサムライークションのサイトまで遊びにきてください!

【感染症と美術の効用】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションです。

コロナ禍によって、70年以上前の小説「ペスト」がヒットしているようです。アルベール・カミュによって書かれたこの作品は、感染症である「ペスト」の蔓延によって人々の精神や生活がどのように変化していくかが描かれています。

ヨーロッパでは、14世紀〜15世紀にかけて実際にペストが流行ったそうですが、現在よりもずっと未発達な医療によって恐怖を感じたであろう人々の動揺、困惑、そして流言飛語によって繰り広げられる愚かな行為が、とてもリアルなものとして実感できます。

振り返って考えると、科学技術が相当に発達した現在においても、感染症によって人間が感じる恐怖やその行動の愚かさというのは、それほど変化していないように感じます。本当に人間て進歩しないですね。

日本でも、天然痘や麻疹、赤痢やコレラなどの感染症が何度も流行してきた歴史があります。その都度、その原因を鬼や妖怪などの超自然的なものに求めて、それらを鎮めるために、加持祈祷や祭礼が行われてきました。京都の祇園祭の起源も疫病の流行がきっかけだったと考えられています。

中でも注目したいのが《疱瘡絵》や《百鬼夜行絵巻》。《疱瘡絵》は、浮世絵の一つのジャンルとして確立されていますが、疱瘡(天然痘)にかかった病人への見舞い品として贈られたり、病人の部屋に貼られたりして使われたようです。病気の原因を鬼や妖怪として考え、それを具体化することで、精神的な落ち着きを求めたのかもしれません。

妖怪たちが行列をする絵巻物《百鬼夜行絵巻》は、室町時代から明治・大正頃にかけて多数制作されていますが、その成立は《疱瘡絵》と同様に疫病の原因を妖怪と考え、それらを目に見えるカタチにして理解し、それらと共存しようとする先人の知恵によって誕生したのではないでしょうか。

葛飾北斎(1760〜1849年)、歌川国芳(1798〜1861年)、河鍋暁斎(1831〜1889年)らも、疫病がらみの作品を描いています。これらの作品は、見て楽しむためというよりも、死を身近に感じて不安が蔓延する社会の中で、何らかはっきりとした精神的な効果がもたらされていたのだと思います。 そういえば、アマビエという妖怪の絵が流行っていますね。つくづく人間は、進歩しないものだなあと感じてしまいます。

「根付」が「小宇宙」と呼ばれる理由

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根付は江戸時代に流行ったおしゃれ小物です。「手のひらに収まる小宇宙」とも呼ばれる理由はどんなところにあるのでしょうか。

実用的かつ精巧な作り

根付は置いて鑑賞するものではなく、あくまでも実用品として使われることを前提にした作りになっています。見た目は手のひらサイズでありながら、上下左右どこから見られてもいいように隅々までしっかりと彫刻がされています。また、ぶら下げて持ち歩くものなので、危険がないように丸みを帯びたデザインが採用されます。動物でも人でも、全身を小さな丸や楕円の中に収めるようなポーズに工夫することで、愛らしさや、時には躍動感などをリアルに表現します。ひとつの小さな根付を作るのに一ヶ月かかるようなものもあるそうです。

知的なアピール・遊び心

根付そのものが謎掛けになっているものを「判じ物」と言います。例えば「草履」で旅を表し「蛙」を帰ることに見立て、草履の上に蛙を乗せたデザインにすることで、旅から無事に帰ってほしいと表現できます。大切な思いを込められたり、伝えたりすることができるお守りのような存在としても愛された背景があります。

変色してすり減っている方が良い?

年月が経って変色したりすり減った状態を「なれ」と呼びます。たいていの骨董品は状態が良いほど価値が高くなる傾向があります。しかし根付は、変色しても彫りがすり減ってところどころ無くなっていても、それが「味」となります。人々の手を渡りながら使い込まれ、どのように現代まで引き継がれてきたのかを想像すると、時間の経過の重みを感じずにはいられません。

日本人は昔からこのような小さなものに魂を宿してきました。細部に技術や心を集約させ、それを粋に楽しむという精神が「根付いている」のかもしれませんね。

【我々はどこから来たのか、我々はどこへ行くのか!】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションです。

長引くパンデミックですが、ようやくいくらか落ち着きをみせてきました。そして、今度はアフターパンデミックの社会や経済についての予測がさまざまに喧伝されています。我々はどこへ向かうのか。

《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》は、ポール・ゴーギャン(1897〜1898年)の代表作です。ほとんどの方は、フランスの画家ゴーギャンをご存知だと思います。ゴッホとの共同生活と喧嘩別れの逸話も有名です。では、そのゴーギャンが、専業画家になる前、証券会社のサラリーマンだったことはご存知でしょうか? 

ゴーギャンは、23歳から株のブローカーとして働き、オランダの裕福な階級の奥さんと結婚して子どもを5人もうけています。経済的には相当にリッチで、当時流行の印象派、ルノワール、マネ、モネ、セザンヌ、ピサロなどの絵画をコレクションし、休みの日には自らも趣味として絵画を描いていたそうです。

そんなゴーギャンが、なぜリッチで安定した生活を捨てて、最終的に客死するタヒチへ渡っていくのか。それは〈創作への情熱〉から? というイメージも湧いてきそうですが、実はその理由は、1882年にフランスで起こった金融恐慌、大きくレバレッジをかけた取引が原因のバブル崩壊でした。

それまで優秀なブローカーとして活躍していたということは、パリ証券取引所での株価暴落によって、自分自身も取引相手も大きな痛手を受けたことは間違いがないでしょう。それによって、価値観が大きく変わったというのが、わかりやすいところでしょうか。

画家になれば、経済的に再び成功できると考えていたかどうかはわかりませんが、それまでの生活水準は全く維持できず、生活が貧しくなった時、奥さんは、実家に帰ってしまいます。踏んだり蹴ったりですね。奥さんを追いかけて、一旦奥さんの実家でマスオさんをしてサラリーマン生活に戻ろうとしたようですが、妻の実家の冷たい仕打ちに耐えられなかったのかどうか、パリに戻ってしまいます。 タヒチに渡った時には、ほとんど無一文。船員として働いてお金を稼ぎ、下船したのがタヒチだったというのが真実のようです。当時、生活費の安いタヒチは暮らしやすかったのでしょう。そんな風にしてタヒチにたどり着いたゴーギャンに、親近感を感じてしまいます。でも、最終的に歴史に名を残すアーティストになるのですから、才能があったのは間違いがないようです。