【「渋沢栄一」ゆかりの施設に有り!今昔を自由自在に行き来する「山口晃」作品〈バッタリ出合った名画シリーズvol.1〉】

出かけた先で、たまたま大好きな作家の作品に出合うこと、ありませんか? 「ここに、こんな名画が⁉」と、驚きとともにしばらく鑑賞し、なんだかホクホクした気分になったり。近くを訪れたら、つい立ち寄るスポットになっていたりして。

今回は、サムライオークション・スタッフが個人的にバッタリ出合い、つい足を止めて見入ってしまった、弊社独自の視点による「名画」をご紹介します。

その作品とは、山口晃さんの「養育院幾星霜之圖」(2013年)。飾られているのは、東京都板橋区にある〈東京都健康長寿医療センター〉の1階。エレベーター前の広々とした空間で、やさしく淡い色彩ながらも、威風堂々とした存在感を放っています。

山口晃さんは、日本の現代美術家、現代浮世絵師。大和絵、浮世絵、鳥瞰図、合戦図など、日本古来の絵画様式を油彩で描くなど、古くて新しい視点と、じつにユーモラスで心くすぐる作品を手がける画家です。

2019年のNHK大河ドラマ「いだてん 〜東京オリムピック噺〜」のオープニング・タイトルバックを担当したことでも話題になり、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

そんな山口さんの原画作品を、こんなにも間近で見られるとは! たまたま病院を訪れて、ふいにこの大作と出合ったときは、胸が高鳴りました。

横幅2m以上はあるであろうキャンバスには、昔ながらの長屋や西洋様式の建物、そのなかで過ごす人々の姿が描かれています。丁髷に着物姿の人、洋装の人、白衣や作務衣を着た医師らしき人や看護師など、過去と現代が融合したような世界観。

じつはこちら、〈東京都健康長寿医療センター〉と、その前身である〈養育院〉を、歴史の年表と共に描いた作品になっています。

明治5年、救貧施設として本郷に開設された〈養育院〉は、神田和泉町、本所長岡町、上野護国院跡、大塚辻町、現在の板橋と、都内あちこちに拠点を移してきました。その変遷が絵と文章で描かれています。

「ヤレヤレ マタ移動ダ」と引っ越しをする人物のボヤキ、昭和45年11月に提供されていた食事の献立内容も。山口さんの描くモチーフや視点がなんとも面白く、ついニンマリしてしまいます。

ところで、この作品のモチーフである〈養育院〉は、かの渋沢栄一さんが大きく尽力した施設。養育院開設の7年後には院長に就任し、半世紀以上に渡って同院の維持・発展に貢献したといいます。

それらの功績を示すべく、〈東京都健康長寿医療センター〉の2階には「渋沢記念コーナー」が設置されています。渋沢さんによる書や手紙、書籍や資料も多々。〈養育院〉の歴史、関わった人物、医療・福祉の発展の経緯などを知ることができ、もはやひとつの資料館。

山口さんの作品とあわせて覗いてみると、日本における医療や福祉の起こりや、その変遷など、興味深く感じられるはずです。

そして、「渋沢記念コーナー」には小さな図書室もあり、病院を利用する人に向けてさまざまな本の貸出を行っているようです。

さて。 話は山口さんの作品に戻り、絵画の以下の部分を見て、もしかしたら……と思っていたことがありました。〈東京都健康長寿医療センター〉の1階にはカフェがあるんです。

病院を出て「やっぱり!」と確信。絵画には現建物とその内部が描かれているのでした。

この円柱部分の1階はカフェ。そしてさきほど紹介した「渋沢記念コーナー」と小さな図書室はこの2階にあります。リアルとイマジネーション、現在と過去とを自由自在に行き来する山口さんの作品に、改めてノックアウトされてしまいました。

〈東京都健康長寿医療センター〉という場所柄、入院されている方々、そのご家族や関係者などを、クスッと笑顔にさせているであろう山口さんの「養育院幾星霜之圖」。病院を訪れる機会はないに越したことはありませんが、もしも訪ねる際は、本作品を探してみてはいかがでしょうか。

Information

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター

東京都板橋区栄町35番2号

※病院という場所柄、作品鑑賞のためだけに訪れるのはご遠慮ください。

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【文房清玩の目利き〈百八研齋〉渡邉久雄さんを訪ねて】

2月某日、〈百八研齋〉の渡邉久雄さんを訪ねました。

「文房清玩(注)」の目利きとして知られる渡邉さん。15歳から奉公していた浅草の書道用品専門店〈宝研堂〉で古硯と出合い、見たことのない色、姿形、彫刻などに魅了されたといいます。以降、硯、筆、墨、印材など、文房にまつわる多くの名品・珍品を蒐集。定年までの50年間、公私共に文房清玩と歩んできました。

文房へ向けられた情熱は退職後もなお冷めやらず、むしろ渡邉さんの“人生”ともいうべき大趣味に。膨大なコレクションを自宅の書斎に展示し、屋号を〈百八研齋〉と定め、文房の愛好家へとひらいてきました。さらに、東京都葛飾区立石に店舗を構え、多くの人に文房清玩の魅力を発信しています。

(注:文房清玩とは、筆墨硯紙といった文房四宝に加え、水差し、硯屏、文鎮、印材など、中国の文人が賞玩した品々のこと)

今回、店舗だけでなく、自宅の書斎兼ギャラリーに通していただき、渡邉さんのさまざまなコレクションを拝見。「すばらしいものを、数多く見るということが大切なんです」と、書斎の片隅から、奥の倉庫から、2階から、何度も部屋を出入りしては、数多くの名品を広げてくださいました。

そのうちのひとつがこちら。1970年代に彫られた、端渓石の「雲龍有眼硯」です。

比較的年数の若い、縦横30センチ程の大ぶりな硯ですが、龍の口元、爪、鱗に至るまで妥協など一切ない、ミリ単位の緻密な彫り。触れるのが怖いほどです。

「私もこの硯を見たときは、鳥肌が立ちました」と渡邉さん。

彫りの凄まじさもさることながら、突然表れる石眼(石の紋様)を、なぜこのように自然な形でモチーフに含め活かすことができるのか……手がけた職人の技術力の高さと、圧倒的な感性に驚愕しっぱなしの作品でした。

中国へ何度も足を運び、硯の産地を訪ね、現地の人とさまざまな交友関係を築いてきた渡邉さん。その審美眼と情熱を認められているからこそ入手できた貴重な品も。

こちらは安徽省の歙州硯(きゅうじゅうけん)の産地を訪れた際に譲り受けた「歙州硯石紋三十種」。世界に2点のみ存在する、貴重な資料です。

硯のほかにも、印材、墨、文化大革命前につくられたという入手困難な毛筆、中国の吉祥文様が描かれた蝋箋など、姿の美しい品々がずらり。

できるならば、ひとつひとつを時間をかけてじっくり眺めて過ごしたい……。そんな欲望をふつふつと湧かせる書斎は、もはや美術館にも勝るとも劣らない、唯一無二の場所だと感じました。

渡邉さんの活動は、中国のすばらしき品々の蒐集だけではありません。日本の文房にまつわる作家の偉業を後世に伝えていきたいと、趣向を凝らした資料制作にも力を入れています。

下の写真は、近代日本の篆刻家・中村蘭台、二代目蘭台秋をはじめ、大正・昭和期に活動した約60名の印人の篆刻作品をまとめた『百八研齋蔵印選』。約20年かけて印を100点ほど集め、篆刻印、側款、画をつけ、8巻にもなる資料を制作しました。

また、現在取り組んでいるのは、明治期に紀州の墨づくりを復興させ、多くの銘墨を残した鈴木梅仙の「梅仙墨」の資料制作。数年をかけて20点ほど蒐集し、『百八研齋蔵印選』とは趣向を変えた資料づくりを進めているのだとか。

希少で貴重な品をひとつでも多く後世に残し、文房清玩の文化や魅力を永続的に伝えていきたい、というのが渡邉さんの切なる願い。「どうか譲ってほしい」と申し出る客人もいるようですが、一度手放せば二度と手に入れることは不可能に近いものばかり。だからこそ手放せない、といいます。

そして、若い人にこそ、これらのコレクションを見て、触って欲しいという渡邉さん。

「今は硯も墨も売れなくなっている時代。筆の職人さんなんかは年々少なくなっています。でも、こういった姿形の美しいものがたくさんあるということを、若い人たちにも知ってもらって、たくさん見て、目を肥やして、文房清玩の世界に興味を持ってもらいたい。文化を繋いでいってもらいたい。若い人にこそ、間近で触れられる資料として、どんどん見せていきたいんです」

年内には渡邉さんが所蔵する108点のコレクションを紹介する書籍を上梓する予定。さらに今後、個展の開催も視野に入れているのだとか。

日本の文房界において大きな偉業と名を残すことは間違いない渡邉さん。これからの活動にも注目必至です。

Information

百八研齋

住所:東京都葛飾区東立石3-25-14

TEL:03‐5875‐7590

営業時間:10時~18時(日曜は17時まで)

定休日:月曜、祝日

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【桃の節句の「ひな飾り」を、骨董やアンティーク雑貨で楽しむ】

3月3日の「桃の節句」も、間近です。

この時期になると、旧家では代々受け継ぐ「七段飾り」や「御殿飾り」といったひな飾りを出し、眺めて楽しむご家庭もあるのではないでしょうか。城下町などでは、武家屋敷に伝わるひな飾りをそれぞれの自宅に展示し、一般に向けて公開する、地域ぐるみのひな祭りを行うエリアもあります。

近年は住宅事情により、殿・姫・三人官女の「三段飾り」、または殿と姫のみの「親王飾り」で楽しむご家庭が多いと思いますが、我が家のひな人形も、親王飾り。

娘の初節句に購入した、人形作家・柴田家千代さんによるひな人形です。

眉がキリリと引き締まり凛とした表情の殿と、ふっくらとした頬に少し幼さが残る姫の顔。全体の雰囲気をぐっと引き締める高貴な紫の衣装と、桜色のグラデーションの十二単。背後にはモダンな屏風。殿と姫のふたりだけのシンプルな飾りですが、華やかさと重厚感をリビングにもたらしてくれ、とても気に入っています。

お顔や衣装だけでなく、台座、菱餅、花飾り、ぼんぼりと、さまざまなパーツのひとつひとつに改めて目を凝らすと、こんな所にこんな意匠が! と初めて気づくものもあったりして、日々眺めて楽しんでいます。

さて、本格的なひな飾り以外にも、玄関やちょっとしたスペースに桃の節句をイメージさせるものを置くだけでも、季節感をもたらし、楽しいもの。

我が家では、骨董市で手に入れた対のこけしを玄関に飾りました。8センチほどの小さなこけしですが、かわいらしい存在感で、私たち家族を見送り、出迎えてくれます。

男の子の胴体には、萩とスズメ。女の子にはバラと瑠璃色の鳥が緻密に描かれています。二羽は言葉を交わしているようにも見えますが、瑠璃色の鳥はスズメを相手にしていない様子。こけしの男女、二羽の鳥、植物と、描かれているこれらのモチーフには、なにか隠された意味があるのかもしれません(読み解けた方はお知らせください!)。

我が家の玄関に飾るのは、だいたい骨董市でみつけた古いもの。季節や節句ごとに飾りを変えています。「このお飾りを出す時がきた!」と品々を出し入れするのは、案外楽しいひとときです。

マンションやモダンなお家に古い民藝品などを置いてみると、思った以上に空間にしっくりはまることも。節句などの日本伝統行事の際に使えそうなお飾りを探しに、骨董市などに出かけてみるのもいいかもしれません。もちろん、サムライオークションに出品されている品々もぜひチェックしてみてください。

さて、ひな祭りに関連した展示をご紹介します!

東京・日本橋にある〈三井記念美術館〉では、「三井家のおひなさま」展を3年ぶりに開催中。三井家の夫人や娘たちが愛したひな飾りは、日本屈指の財閥ならではの絢爛さ。約3メートルにもなるひな段飾りや、銀細工でできたひな道具の展示も。衣装も顔立ちも、時代によってさまざまなおひなさまをぜひ見比べてみてはいかがでしょうか?

Information

三井家のおひなさま

場所:三井記念美術館(東京都中央区日本橋室町2‐1‐1 三井本館7階)

会期:2023年2月11日(土)〜2023年4月2日(日)

時間:10時〜17時 (最終入場時間16時30分)

休館日:月曜日、2月26日(日)

観覧料:一般 1,000円、大学・高校生 500円、中学生以下無料 公式サイト:三井記念美術館

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【日本の骨董品「焼物」について】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

日本の代表的な骨董品の一つが「焼き物」です。

そもそも日本で一番古い焼き物は、青森県太平山元で発掘された1万6500年前の縄文土器といわれています。時代ごとにおいて特徴的なデザインや柄があったり、日本の各地域によってオリジナル性の高い作品が数多くあります。各地方ごとにたくさんの種類の焼き物がありますが、今回は代表的な3種類について紹介します。

・有田焼(ありたやき)

誰もが一度は聞いたことがあるであろう代表的な焼き物です。

佐賀県有田町を中心に焼かれた磁器です。陶器よりも割れにくく硬質な焼き物となっていて、肌触りがとても滑らかなのが特徴です。 有田焼は、透明感あふれる白磁に色鮮やかな絵付けが魅力となっています。

・瀬戸焼(せとやき)

愛知県瀬戸市を中心に焼かれた物の総称をいいます。

よく食器のことを「セトモノ」と呼んだりしますが、この呼び方は瀬戸焼からきているようです。幅広い種類の陶器を作ることができて、黒っぽくならずに白い焼き物を作ることができるのが特徴です。当時では唯一の釉薬がかかった焼き物で素焼きと比べて耐水性に優れて色の幅が広がります。そのため実用食器として好まれて東日本を中心に広がっていきました。 1000年以上の歴史を誇る日本人が長く愛用してきた焼き物の一つでもあります。

・美濃焼(みのやき)

岐阜県東濃地域を中心に焼かれた焼き物のことを指します。

岐阜県東濃地域は日本一の陶磁器の産地として知られていて、生産量は日本全体の約60%にもなります。時代、人々の好みに合わせて釉薬を開発し、技術を築き様々な形、色彩の焼物を誕生させてきました。そのため、美濃焼とは「このような焼物」とひとつを示さず、様々な技法を持つことだと言われています。

一般家庭やお店でもよく使われている食器類になります。私の実家は岐阜県で、食卓に並んでいたお皿は美濃焼だったんだと今更ながら思い、どんな作りだったのか気になるところではあります。笑

皆さんもお気に入りの焼き物を見つけて、コレクションしてみるのも楽しいかもしれませんね。

サムライオークションでは焼物も多数出品されていますので、是非ご覧になってみてください。サムライオークション焼物の検索結果はこちら

【掛軸の歴史について】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

掛け軸の誕生した時代や場所を知っていますか? また、日本にいつ何の目的で掛け軸が入ってきたのでしょうか。

掛け軸は、西暦265年〜400年あたりに中国で誕生したと言われています。仏像などを運ぶのは大変なので、いつでもどこでも拝めるように仏教徒の礼拝目的として掛け軸を利用したことが始まりのようです。

日本に伝わってきたのは飛鳥時代(593年〜710年)とされています。仏画の掛け軸が仏教を広めるための道具として日本に持ち込まれたようです。その後、鎌倉時代(1192年〜1335年)になり禅宗の影響で水墨画が流行るとそれに伴い掛け軸も流行るようになりました。室町時代(1336年〜1568年)になり、茶道が流行ると茶室の床の間を飾ることを目的とした観賞用の水墨画の掛け軸がたくさん作られるようになりました。茶道における掛け軸の重要性を千利休が述べたことにより、注目度がさらに上がったようです。

日本国内全体に本格的に掛け軸が普及するようになったのはその後の江戸時代(1600年〜1868年)となってからのようです。戦争などがほとんどない平和な世の中になってきて、色々な文化が栄えるようになりました。その一つに掛け軸もあったということです。この頃から安価な庶民でも楽しめる掛け軸も徐々に広まってきたそうです。 掛け軸を鑑賞するときはこういった歴史的背景を知っているとまた違った楽しみ方ができると思います。

サムライオークションでは様々な掛軸が出品されていますので、ご覧になってみてください。サムライオークションはこちら

【綾小路きみまろが語る骨董品コレクターとは 】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

自身が骨董品コレクターである綾小路きみまろさんですが、何かモノを集めるという行為は「まるで想いを寄せるまだ見ぬ恋人に会いに行くような豊かな時間を過ごすことに繋がる」と語っています。

綾小路きみまろさんが骨董品コレクターになったきっかけとしては「自分が生きてきた時代の中で、あるひとつのモノが紛失することなく存在し続けている」ということに興味を持ち、器などを集め始めたそうです。集め始めたら、次のモノがほしい、全部ほしいとなっていく人がコレクターの素質がある人の特徴です。

集めなくてはという使命感よりも増えていくことの喜びが大きいようで、誰かがこんなに集めるのがすごい!なんてことを言ってくれるともっと買いたくなるようです。

骨董品の器などは、デパートに行けば同じような形の新しくて良いモノが売っています。その新しいモノを買うのではなくて古くて良いモノやもう二度と生産できないモノに触ることに価値があり、幸せがあるといいます。

コレクターの特徴としては、優しい人が多く、集めることで安心感を得られておしゃべり好きの人が多いようです。また、最初は大きいものを集めがちですが、段々と小さなものを集めるようになるそうです。

小さなものを集める理由としては「奥さんに煙たがられるから」だそうで、奥さんの理解をなかなか得られないのが骨董品コレクターの宿命でもあります。

コレクターの方はなかなか家族からの了承を得られず、肩身狭い思いをして集めていかないといけません。また、値段と価値も分かってもらえず非難される場合が多いようです。 小さいものを購入してこっそりと楽しむのか、家族の了承を得て大々的に楽しむかは家庭の事情により変わると思いますが、好きなことに向き合うのは大切な時間なので大事にしていきたいですね。

骨董・美術コレクターの皆さん、サムライオークションを覗いて新たな出会いを見つけてください。

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【独自スタイルの魅力《織部焼き》】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

気候変動への取り組みが世界的に加速しています。欧米の金融機関では、コロナ禍からの経済復興の中心に温暖化対策が明確に位置づけられており、『グリーン・リカバリー』やら『グリーン・ファイナンス』、『グリーン・シフト』なる言葉を良く見るようになりました。

世界的にグリーンと言えば森林をイメージするのだなあと改めて感じながら、でも骨董好きなら緑と聞いて思い出すのは、深みのある暗緑色の《織部焼き》かなと思い直しました。

戦国武将であり稀代の数奇者であったと言われる古田織部(1543〜1615年)が、故郷の美濃国で若葉を器に表現しようと緑釉を使って作らせた織部焼き。黒織部や赤織部などバリエーションもありますが、やはり特徴的な美しい緑をした青織部が標準的な織部焼の色として認識されています。

織部焼は、当時(安土桃山時代)の最新技術だった連房式登窯を使って大量生産されました。武士であった古田織部のぶこつさを象徴するような、左右非対称のひずんだデザインは好みがわかれるところもあるかもしれませんが、皿、鉢、酒器や茶碗、花入れ、香合など幅広い種類の伝世品が残されており、人気の一端が感じられます。

その大胆さや不完全さが、既存の規格や常識こだわらない古田織部自身の自由な精神を象徴しているようにも感じられ、その人物像をとても魅力的にしています。また、千利休の弟子としても侘茶を発展させたとして高く評価されており、茶器はもちろん、建築や庭園などについても『織部好み』と呼ばれるある種のスタイルを生み出しています。 歴史に残って語られていくスタイルには、まず独自の視点や個性が欠かせないのだと思います。むやみに世間に迎合することなかれと、織部焼きは静かに主張しているように感じます。

【小さいながらも魅力に溢れる《香合》】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

世の中には、さまざまなコレクターがいます。コレクションする理由もさまざま。唯一のものばかり集める人がいるかと思えば、マックの包装紙とか空き缶とか多くの人にとってはゴミとしか思えないものをコレクションする人も意外と多いです。集める理由から人間の奥深さを感じることができ、それはそれでとても面白いと感じます。

骨董・美術品に限っても、なぜ浮世絵なのか軸物なのか器なのかと考えた時、やはりコレクターによって集める理由は異なります。ただ、コレクター気質がない人でも、理由なく思わず集めたくなってしまうというアイテムというものも存在します。《根付》《茶碗》などもそうですが、集めたい、集めやすい道具の代表として、《香合(こうごう)》があります。

《香合》は香りを聞くための茶道具ですが、単に香りを楽しむのではなく、焚く香りによって、あるいは《香合》の提示の仕方によってコミュニケーションツールとしての役割があります。そのため、季節や茶席に応じて使い分ける必要があり、茶道を本格的に嗜む人であれば複数の香合を自然と所有するようになります。

ただ、《香合》は単純に造形物としての魅力に溢れています。香を収納するので匂いがでないようにぴったりと合う蓋が必須であり、大きさは手のひらに収まるサイズ。素材や形状は多岐にわたり、焼物に限っても染付、交趾、青磁などあらゆる種類がありますし、蒔絵や螺鈿といった伝統工芸が施された木製品も多く、モチーフも十二支、七福神などバラエティに富んでおり、まさにコレクションしたくなる美術品と言えます。

その美しさ、巧みさ、愛らしさに魅了されたコレクターは多く、コレクションアイテムとして人気が高いと思いますが、ただ単純にお部屋のインテリア小物として飾っても素敵ですし、自分の好きなお香を焚いて香りを楽しむのも良いでしょう。 一般的な骨董市でもよく見かけますし、サムライオークションでも取り扱いが増えて欲しいと願う作品ジャンル《香合》。皆さんもお気に入りの《香合》を探してみてはいかがでしょうか?

【想像力と美意識を味わう《金継ぎ》】

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私も愛用しているファストファッションブランドがハイテクジーンズなるものを販売して話題になっています。色落ちしないそうです。かたや新品であるのに最初から傷んでいるダメージジーンズも人気です。好みはまさに十人十色。

昔は自分で履いていくうちに自然と色落ちし、世界で一本のオリジナルになるところにデニムの楽しみがあったのですが、製造技術の進歩は全ての消費者を顧客にするべく、経年劣化のイメージを含めたあらゆるバリエーションを揃えて、手ぐすねを引いているように思えます。

先日の骨董市で見かけた《金継ぎ》の器。手にとってみると手のひらにちょうど収まりもよく、古色蒼然とした雰囲気が魅力的で、買うべきかどうか数分悩み(楽しみ)ました。特に味わい深かったのがその金継ぎの美しさです。

思えば、金継ぎはダメージジーンズの傷と似ています。気にならない人には全くわからないと思うのですが、ダメージがあれば何でも良いというわけではなく、その破れが生み出す景色が自分の美意識と合っているかどうかが重要。明確な正解も論理もなく、その傷、あるいは修復後のカタチを自分が気に入るかどうか、判断は自分のセンスだけです。

本来の金継ぎは、物資が今のように豊かではない室町時代、割れてしまった器に愛着や未練があり、修復してもっと使いたいというところから生まれた技術です。もったいないという気持ちから施した修復の跡に、後の数寄者が美を感じ、景色として楽しみはじめ、今日的には芸術的評価を高めているというのはとてもユニークだと思います。

金継ぎはさらに発展し、別の器の破片を組み合わせる《呼継ぎ(よびつぎ)》という技術も生まれました。これなんかはまさにパッチワークですね。素材の異なる陶磁器をつなぎ合わせるわけですから、金継ぎよりも変数が多くなり、さらにセンスが求められます。 金継ぎに川などを重ね合わせて想像するのは、枯山水の石庭と同じ。骨董はその来歴を想い、長い時間を経て生まれた変化を味わい、そして空想の世界に旅立って想像を楽しむことのできる知的な遊びなのだと思います。

【感受性を育む《骨董のすすめ》】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

骨董が身近にある生活のメリットは、感受性を育ててくれるところにあると思っています。それは、どういうことか? 

目の前の古ぼけた、しかし味わい深い骨董品は、世界で唯一の存在であり、お金を払ってあなた自身が価値を確定した商品です。その商品を見たり使ったりする度に、あなたは自分の美意識とその都度向かい合うことになります。

例えば、小さくて可愛いアンティークの《小引き出し》。女性ならアクセサリーの類や香水の小瓶など、男性ならばカフスやネクタイピンなど、さまざまな小物の整理に活用できると思います。

どこかの骨董市やネットオークションで偶然見かけて、なぜか魅了されて手元に欲しいと思った時、価値が曖昧なその商品を手に入れるために、まずあなた自身が自分のセンス、価値観を自問自答することになります。

一般的な工業製品ならば、比較対象が沢山ありますし、価格もすぐにわかります。でもアンティーク品の場合は、情報がなかなかありません。だから目の前の品物に対して、自分の人生経験を総動員して買うべきかどうか、自ら判断しなければなりません。高いのか安いのか、役に立つのか、必要なのか、などなど。

機能性やデザイン性だけを考えれば、最新式を購入した方が良いに決まっています。それでもわざわざ不便で価値もよくわからないものを手に入れようとする時、そこには自分にとっての明確な理由、すなわち哲学が必要になってきます。

つまり、たとえ意識していなくても、何らかの納得があって購入することを決めた時、あなたの感受性は少しだけ、鍛えられたことになります。 骨董は、好きなものを手に入れることが毎回自らの美意識と向かいあうことになりますし、生活の中にあって毎日眺める時にも同じことを想います。それこそが、骨董・美術品と暮らす魅力、楽しみだと思います。