“怖い浮世絵”で納涼! 太田記念美術館にて「浮世絵お化け屋敷」開催中

お盆が過ぎ、朝夕は涼しさを感じるものの、まだまだ日中の残暑が厳しい9月。そんな今こそ、日本古来の方法で涼んでみるのはいかがでしょう?

世界有数の浮世絵コレクションで知られる〈太田記念美術館〉(東京都渋谷区)では、2024年9月29日(日)まで「浮世絵お化け屋敷」と題した展覧会が開催されています。

さまざまな事象が「物の怪の仕業」と強く信じられていた近代以前の日本。恐怖の物語や、震え上がるような出来事が浮世絵で描かれ、恐々ながらも市井の人々に親しまれてきました。

そんな、古人の背筋を凍らせてきた浮世絵を集めた企画展。夏の〆としておもしろそう! と思い、お邪魔してきました。

足がない!

残念ながら館内は写真撮影NG。ぜひ〈太田記念美術館〉の公式サイトを眺めながら雰囲気を感じていただけると嬉しいです。

本展に展示されている作品の多くは、国芳、国貞、広重といった歌川派の面々や、陰惨なモチーフやシーンをよく描いたことから“血まみれ芳年”と呼ばれた月岡芳年など、江戸~明治期に活躍した絵師の作品が中心。

「怒れる亡霊たち」「哀しむ幽霊たち」「祟る怨霊たち」「不気味な屋敷」といったテーマのほか、鬼・天狗・河童といった怪物や妖怪、狐・狸・鵺・土蜘蛛・蛸などの動物を取り上げた作品もありました。

亡霊や怨霊などの作品を眺めていておもしろいなあと思ったのは、足の描き方。その多くが足先が描かれていないんです。

徐々に霞ませ消えていく足もあれば、伸びた餅のようにヒョロ〜ッと描かれたものも。なかにはつま先までしっかり描かれた亡霊もいましたが、多くは足がない。

調べてみると、足のない幽霊を初めて描いたのは円山応挙で、それ以降、日本の幽霊には足が無い場合が多いのだそう。これは日本独自の表現方法のようです。

西郷隆盛の不気味すぎる霊

本展において作品数がずば抜けて多い月岡芳年。躍動感と凄みにあふれた武者絵が有名ですが、惨たらしいものや、おどろおどろしいモチーフも好んで描いています。

本展(後期)に展示されている芳年の作品の中で、最も背筋がひんやりしたのは《西郷隆盛霊幽冥奉書》。霊となった西郷隆盛が真っ黒な軍服に身を包み、「建白」と書かれた奉書を手にしています。その目は焦点が合わず、唇も真っ青で、暗黒からヌッ……と現れたような不気味さ。

この幽冥奉書は大久保利通に宛てたものだとする説が有名なようです(その理由は、ぜひ展覧会場のキャプションでご確認を)。大久保利通が暗殺された直後にこの錦絵を描いた芳年。その意図とは……? なにか底知れない思惑が含まれていそうです。

可笑しみいっぱいの作品も

怖いだけでなく、口の端が緩んでしまうような浮世絵もたくさん展示されています。

月岡芳年による《芳年存画 邪鬼窮鬼》には、邪鬼と窮鬼(いわゆる貧乏神)に恐れおののき、大きな福袋の下に逃げ隠れる恵比寿天と大黒天が描かれています。彼らの表情がとってもユニークで、可笑しみたっぷり。

また、深川木場に現れた河童をオナラで退治するという《東京開化狂画名所 深川木場 川童臭気に辟易》や、神田明神にて7人の影武者といろんな表情で撮影に臨む平将門を描いた《東京開化狂画名所 神田明神 写真師の勉強》など、その斬新な発想力と謎すぎるテーマにニヤリとしてしまうこと間違いなし。

目に見えぬ力を信じ、信仰を大切にしていた江戸時代の人々。こういった浮世絵を前に想像力を働かせ、「おお、こはひ……」と夏をやり過ごしていたのでしょう。そんな当時の人々の畏怖にも思いを馳せながら、ぜひ〈太田記念美術館〉で涼しいひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。

Information

浮世絵お化け屋敷

会期:2024年8月3日(土)~9月29日(日)

会場:太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)

開館時間:10時30分~17時30分(入館は17時まで)

休館日:9月9日、17日、24日は休館

観覧料:一般1200円、大高生800円、中学生(15歳)以下無料

※中学生以上の学生は学生証をご提示下さい。

※障害者手帳提示でご本人とお付き添い1名さま100円引き。

お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

リンク:太田記念美術館公式サイト