【「竹久夢二」の多才な表現に触れる!大正ロマンの「描き文字」展】

東京大学のほど近く、東京都文京区に〈竹久夢二美術館〉があるのをご存じでしょうか。弁護士・鹿野琢見(1919~2009年)によって設立された私立美術館です。

創設者である鹿野琢見は、美少女・美少年・美人画で一世を風靡した高畠華宵(1888~1966年)の作品に魅了され、所有する多くのコレクションを公開すべく、1984年に〈弥生美術館〉を創設。

また竹久夢二のファンでもあり、多くの夢二コレクションも所蔵していました。1990年に〈弥生美術館〉の同敷地に〈竹久夢二美術館〉を創設しました。

同館では年に4回、さまざまな切り口による夢二の企画展が開催されています。2023年4月1日(土)~6月25日(日)の期間、『竹久夢二 描き文字のデザイン ―大正ロマンのハンドレタリング―』と題した展覧会を開催中。

グラフィック・デザイナーとしても才能を発揮した夢二の、手描きによるレタリング(デザインされた文字)に焦点を当てた本展。ポスター、雑誌や楽譜の表紙、書籍の装幀などに描かれた独創的なフォントがさまざまに紹介されているとのことで、お邪魔してきました。

まずはこちら、夢二が表紙を多く手掛けた「セノオ楽譜」です。

こちらの楽譜は、大正時代に設立された〈セノオ音楽出版社〉が、古今東西の名曲を楽譜に落とし、出版したもの。当時は音楽に親しむ手段として、「ピース楽譜」と呼ばれる小曲1編だけを収めた楽譜が多く出版されていたようです。

それらの楽譜の表紙の多くを手掛けていたのが、夢二だったのだとか。

文字の太さ、形状、文字の強弱も、実にバリエーション豊富。そのフォントに優しさや慰めを感じさせるものもあれば、強さや刺々しさを感じさせるものも。文字だけで、さまざまな心象を表現できる夢二の匠さに驚かされます。

また、「涙」「鳥」「花」「月」「日」といった文字の図案化のユニークさ。特に「花」は美しさのなかに刺々しさも含まれ、「花かそもなれ」の歌詞にも通じるものが。

「歌」という漢字ひとつにしても、こんなにも表現が可能とは! 見ているだけで楽しくなってきます。

「春」という描き文字にもフォーカス。四季のなかでは特に「春」を好み、その季節特有の感傷を、絵画や詩歌などで表現していたという夢二。暖かな季節ということもあって、赤系の色づかいも多い様子。

また、書籍の装幀も多く手掛けていた夢二の、いくつかの作品も展示されていました。その中で、個人的に好みだったのが、こちらの『凧』。

表紙をめいっぱい埋めつくす「凧」の字のダイナミックさ。一瞬、幾何学模様のような装飾かなと思ったのですが、よくよく眺めているなかで「ハッ…!」と気づかされるその意匠。この潔さに心掴まれました。

ほかにも『恋愛秘語』の文字のおもしろさと、それらを分解して装飾にした表紙もかっこいい。

さまざまな夢二の描き文字に触れつつ、直筆の書画、恋人や知人などに宛てた手紙など、夢二の多彩な文字の表現を楽しめる展示になっています。

また、館内で続く〈弥生美術館〉には、創設者・鹿野琢見がコレクションした、美人画の巨匠・高畠華宵の作品展示も。

「夢二式美人」という言葉が確立されるほど、美人画で有名な竹久夢二ですが、彼の意匠は描き文字をはじめ、ありとあらゆる部分で表現されていることを発見。改めて、彼の多才さを思い知る展覧会でした。

〈竹久夢二美術館〉と〈弥生美術館〉が併設され、それぞれの企画展と常設展を同時に鑑賞できる同館。現在は、1980~90年代に活躍した伝説のファッション・イラストレーター『森本美由紀展』も6月25日(日)まで開催されています。

年代を超えたさまざまなアーティストの作品を一度に楽しめる同館を、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

Information

『竹久夢二 描き文字のデザイン ―大正ロマンのハンドレタリング―』

場所:弥生美術館・竹久夢二美術館(東京都文京区弥生2‐4‐3)

会期:2023年4月1日(土)~6月25日(日)

開館時間:10時~17時(入館は4時30分まで)

休館日:月曜、展示替え期間中、年末年始

入館料:一般1000円/大・高生900円/中・小生500円

※2つの美術館は同じ建物内で見学ができ、上記料金で2館あわせてご覧いただけます

TEL:03‐5689‐0462

サイト:弥生美術館・竹久夢二美術館 サイトはこちら

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【圧倒的迫力に酔いしれる《東福寺展》】

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの井戸です。

先日、東京国立博物館にて開催されていた【東福寺展】に遊びに行ってきました。

「圧倒的スケール」「すべてが規格外」

これらのキャッチコピーだけでワクワクが止まりません。

本展での「圧倒的スケール」の象徴が釈迦如来 四天王像や仏手による木彫りの像たちです。広大さもさることながら彫りの細かさ、表情、衣類のしわ、指先のゴツさなど細部の細部にまでこだわり抜かれたクオリティに圧倒されました。仏手以外は撮影NGな為、写真はありませんが、四天王像などの目は砡でしょうか。命が吹き込まれており、力強い生命力を感じます。

焼け残りの仏手に至っては2m17cmもあるとのこと。手だけでこのサイズということは本像はどれだけのサイズだったのでしょうか…開いた口が塞がらないとはまさにこういうことを言うんだなと。

さて、順路は前後しますが、本展のもう1つの見どころが吉山明兆の五百羅漢図。ここは「すべてが規格外」の象徴と私は感じました。

明兆の羅漢図は全部で50幅。この時点で規格外です。更に14年もの歳月を掛け、総勢70人もの職人による大修繕は代え難い苦労があったことでしょう。

描かれている羅漢たちの神秘な表現や極彩色、毛線の細さの他に、みんなでお風呂に行ったり、剃髪をしたりと親しみを覚える描写が多数でとても楽しめます。中には漫画風な解説を入れたユニークな運営側の施策なんかもあったりしますよ。

本展は第1会場と第2会場で別れていますが、1会場辺り少なくとも2時間は滞在していられる程充実した内容です。

また、まだ春ではありますが、東福寺の絶景スポット通天橋を紅葉の景色で再現したフォトスポットも展開しています。夏を通り越して秋の装いですが、10月からの京都会場ではジャストタイミングで開催されますので、西にお住いの方は是非【東福寺展】に足を運んでみてください。

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