【東京・銀座〈ポーラ ミュージアム アネックス〉にて12名の新進アーティストによる展覧会「Chroma Distance」を開催中】

化粧品ブランド〈POLA〉が、東京・銀座に〈ポーラ ミュージアム アネックス〉というギャラリーを構えているのをご存じでしょうか。

伝統・食・芸術といった文化の発信地であり、古きも新しきもが織り交ざる銀座の街において、気軽にアートを楽しみながら、感性や美意識を磨くことができるカルチャースポットとしてひらかれています。

同ギャラリーでは2023年1月20日(金)~2月5日(日)の期間、展覧会「Chroma Distance」が開催されています。12名の新進アーティストによる、さまざまな手法を用いた作品が約40点展示されるとあって、お邪魔してきました。

ポーラ銀座ビルの3階を丸ごと割いた展示スペースには、白い空間を彩るさまざまな絵画やパネル作品が。フロアの中央には、ユーモラスなポーズをとる小人のような立体作品も置かれています。

ぐるっと館内を見回すなかで、まず目が釘づけになったのは、こちらの作品。

「できるだけ考えないようにする」「かなしいことも、うれしいことも」と題された相川恵子さんのふたつの作品です。

顔の中にも顔があるように見え、その表情はさまざまな感情を訴えかけてくるよう。この人物は、日常の大きな変化のなさに安堵しつつも、なにも起こらないことへの不満も抱え、代り映えのない無表情な毎日を過ごす私自身を投影したようでもあるし、もしかしたら一見穏やかな知人の、内に込められた鼻息の荒い憤怒の表情かもしれない……。

この人物が誰なのかはわかり得ないし、その表情の意味を知る必要もないのかもしれません。「できるだけ考えないようにする」――これがベストな答えである場合も、ときにはある。そんなことに考えを巡らせた作品でした。

続いて、ぐっと興味をそそられた作品は、沼田侑香さんによるプラスチックビーズ作品。見ての通り、よく知られたお菓子のパッケージがモチーフになっています。

5ミリ程度の小さなビーズを敷き詰め、アイロンで圧着させたこの作品。ファミコン時代のピクセル画像を思わせ、なんだかビープ音さえも聴こえてきそう。

デジタルのなかで構築した「キャベツ太郎」のパッケージの歪みや、「かっぱえびせん」と融合するグラフィティ。それらをアイロンビーズというアナログな手法を用いて作品化することで、デジタルとアナログの中間――つまり、2次元でも3次元でもない、新たな次元の表現を試みているといいます。

ほかにもどんな作品を制作しているのか。ますます興味がそそられました。

続いて、夜間の首都高の煌めきを彷彿させる、大村雪乃さんの作品です。

ところで、どんな画材を用いているかわかりますか? じつは事務用品でもお馴染みの「丸型カラーシール」。大きさも色もさまざまなシールを黒ベースのパネルに貼り、リアルな風景画に仕立てています。

美術大学で絵画を専攻していた大村さんは、アートは誰もが楽しめるもののはずであるのに、専門的に学んだ人だけの技法ともいうべき油絵に疑問を抱き、アートを身近に感じられるアイデアを模索。そのなかで丸型シールを用いた作品に辿り着いたのだとか。

さまざまな作品展に精力的に出展し、これまでに多くの賞を受賞。さらには某TV番組で、丸型シールアートを査定する講師役としても出演しています。そんな大村さんの作品を間近で見るチャンスです。

ほかにも、アイデンティティの親密な描写、崩壊と再生、時代の交差などをコンセプトに、技法、規模感もさまざまな現代アート作品が展示され、若手作家のリアリティを垣間見るような時間となりました。

入場は無料。気に入った作品は購入も可能です。

会場となる〈ポーラ ミュージアム アネックス〉は、年間を通じてさまざまな無料の企画展を行っています。ポーラ・コレクションをはじめ、現代美術、伝統工芸・芸能、民族芸能、世界情勢のうねりに関連する展示など、多彩な企画展は見ごたえあり。また若手アーティストの支援となる活動も積極的に行っています。

今回の展覧会「Chroma Distance」をはじめ、今後の同ギャラリーの企画展にも、ぜひ注目してみてください。

《Information》

Chroma Distance

場所:ポーラ ミュージアム アネックス(東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル 3階)

会期:2023年1月20日(金)~2月5日(日) ※会期中無休

時間:11時~19時(入場は18時30分まで)

料金:無料

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) リンク:ポーラ ミュージアム アネックス 公式サイト

骨董品・美術品専門オークション「サムライオークション」はこちら

【江戸に華やぐヴェネチアの「粋」に酔う「彩のガラス達 魅惑の世界」を〈東京芝 とうふ屋うかい〉で開催中】

東京タワーの麓に佇むとうふ会席料理店〈東京 芝 とうふ屋うかい〉。2023年12月20日(火)~2023年3月26日(日)の期間、同店内にて「彩のガラスたち 魅惑の世界 ―江戸に華やぐヴェネチアの『粋』―」と題したヴェネチアン・グラスの展示・販売会が行なわれています。 うかいグループが運営する〈箱根ガラスの森美術館〉のバイヤーがセレクトした、イタリア・ヴェネチアの名匠による希少価値の高い商品をさまざまに堪能できるとあり、先日〈東京 芝 とうふ屋うかい〉へお邪魔してきました。

と、ヴェネチアン・グラスの話の前に。

〈東京 芝 とうふ屋うかい〉を初めて訪れた私は、「本当にここは東京なのだろうか……?」とうろたえるほど、喧噪とは無縁の、まさに非日常という言葉がピタリと当てはまる空間に圧倒されてしまいました。

約2000坪の敷地を有する同店。長屋門をくぐって石畳を進み、庭師さんが毎日手を掛けているであろう美しい日本庭園に心を奪われながら店舗へ。

庭園ではさまざまな和の草木が枝葉を揺らしており、その彩りや配置は、花の時期、紅葉期、冬枯れ期などを徹底的に考慮したものであることは明らか。店舗に入る前から、創設者の並々ならぬこだわりや美への探求を感じ、ヴェネチアン・グラスの展示はもちろん、建造物や館内の設えにも期待は膨らむ一方でした。 さて、今回の訪問はヴェネチアン・グラスの鑑賞が目的。食事の予定の無い私が入店してよいのか少し不安でしたが、フロントの方はほかのお客様と分け隔てなくにこやかに案内してくださり、そのホスピタリティも感動ものです。

さて、本題の「彩のガラスたち 魅惑の世界」!

フロント横に設けられた特選ギャラリーには、さまざまなスタイルの優美なガラス作品がずらり。本展では主に、ヴェネチアン・グラスの3大技法とされる「ミルフィオリ」「レースガラス」「ハンドワーク」が展示されています。 なかでも、個人的に印象深かったのが「レースガラス」。

ヴェネチア発祥という説があるレースの編み物(諸説あり)。これに着想を得て編み出されたレースガラスは、かつての王侯貴族がこぞって買い集めた、ヴェネチアンガラスの代名詞です。

今回展示されているレースガラスは、1400年代から脈々と技術を継承し、ヴェネチア共和国より貴族の称号を下賜された名工「バラリン工房」の作品。繊細なレース模様と優美な姿のガラスは、レースの折り重なる白いドレスを纏った貴婦人を思わせる、なんともいえない高潔さを放っていました。この技術を編み出した職人、それらを継承してきた職人へ、心から敬意を表したくなる、そんな作品たち。すっかり魅了されてしまいました。 じつは後継者不足により、バラリン工房は2020年に閉鎖。現存する作品は今後価値が上がっていくかもしれません。

期間中は〈箱根ガラスの森美術館〉のスタッフが在廊し、さまざまな話を伺うことができます。なかでも興味深かったのは、ヴェネチアン・グラスの発展にまつわる歴史的背景の話でした。

ヴェネチア共和国というひとつの国家が形成されていた時代、ガラス産業のさらなる発展と、高度な技術の流出を防ぐため、ヴェネチア本島の北東に位置する「ムラーノ島」という小さな島に、ガラス製造にかかわる人々を強制移住させ、幽閉。「島外に脱出する者には死罪を課す」という厳しい法令をしいたといいます。国家繁栄のためとはいえ、なんとも自由度のない、窮屈な掟……。死を覚悟して逃げ出す職人もいたのだとか。

一方で、小豆島ほどの小さな島のなかに工房が密集したことで、それぞれの匠が切磋琢磨し、高度なガラス工芸技法が確立され、世界に名を馳せる地域ブランドが生まれたのも事実です。

ちなみに、潟(かた)の上に築かれたヴェネチア。そんな場所にガラスの原料となる珪砂やソーダ石灰があるとは思えませんよね。なぜ、水の都でガラス製造が盛んになったのか? そんな歴史的背景も、スタッフの方が教えてくださいます。

作品が展示されている特選ギャラリーの一画には、日本庭園を眺める目的で設えられた三つの間があり、ここにヴェネチアン・グラス作品が多く展示されています。

意匠のある建具を取り入れた趣きのある書院造の間と、ガラス襖から覗く日本庭園。そこに西洋の優美なガラス作品が並ぶさまは、かつて南蛮貿易で栄えた商人の邸宅や貴賓室はこんなふうだったのではないか……と想像を巡らせたくなる趣きです。 かつての江戸の町は、網目のように水路が巡らされ「東洋のヴェネチア」と呼ばれていました。そんな共通点にも思いを馳せながら、ヴェネチアン・グラスの輝きと、古きよき日本の風情、こだわりを貫くうかいのお料理、スタッフの心づくしのホスピタリティに酔いしれてみてはいかがでしょうか。

《Information》

「彩のガラスたち 魅惑の世界 ―江戸に華やぐヴェネチアの『粋』―」

場所:東京 芝 とうふ屋うかい(東京都港区芝公園4-4-13)

会期:2022年12月20日(火)~2023年3月26日(日)

営業時間:平日 11:45~15:00(14:30 L.O.)|17:00~22:00(19:00 L.O.)

     土日祝 11:00~22:00(19:00 L.O.)

TEL:03-3436-1028 リンク:東京 芝 とうふ屋うかい 公式サイト

骨董品・美術品専門オークション「サムライオークション」はこちら

【国宝の絵画「十六羅漢像」とは】

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

国宝「十六羅漢像(じゅうろくらかんぞう)」をご存じでしょうか?

羅漢とは、仏教において修行を完成させた聖者のことを指します。羅漢の中でも、十六羅漢と呼ばれる16人は釈迦が亡くなった後もこの世に長くとどまるとされて、仏教を守り人々に広めることを託された特別な存在の人たちのことを指します。

十六羅漢像は、この羅漢を描いた作品にあたります。滋賀県大津市の聖衆来迎寺旧蔵のもので、現存する中では最古の十六羅漢像となります。

羅漢をはじめとした人物の表情は他の作品よりも穏やかに捉えられていて、たくさんの色を使用して明るめにまとめられているのが特徴的です。実は、この作品は絹に描かれているのですが、絹の裏から色を塗る技法が取られていて、裏からの絹目を通して見えることによって穏やかな色調となり、柔らかな肌の質感なども表現されているということです。

このような明るく柔らかい雰囲気の表現が11世紀における日本仏画全体の特徴ともいえるのです。 東京国立博物館で開催された「国宝展」で唯一絵画で全期間掲示されました。機会があればぜひお目にかかることをおすすめします。

サムライオークションはこちら