【運の引き寄せ効果は!?《仏教美術》】

エンゼルス大谷翔平選手の活躍が続いています。本当に漫画みたいですよね。

大谷選手の話題で興味深いのが、高校生の時に書いたという目標達成シート。一部ファンの間では、曼荼羅チャートという言葉が使われているようですが、密教の世界観を伝えるために描かれた曼荼羅というよりも、もっと西欧的で合理的な方法論のように感じます。PDCAとかWOOPとか、そんな類のメソッドですね。

自分の目標を中心に据えて、放射状に設定した8項目の戦略に対して、具体的なアクションプランが書かれているのですが、注目したのはその中に《運》という項目があったことです。合理的で実践的なメソッドの中に、自分ではコントロールできない《運》についての項目があり、運気を上げるためと思われる行動指針が書かれています。私はここに日本的なバックボーンを感じました。

日本社会には仏教をルーツに持った文化が多く、意識していなくてもごく自然に刷り込まれている思考のスタイルがたくさんあります。キリスト教文化圏の祈りが、神のみわざ=ミラクルを願うとすれば、日本では因果応報という考え方によって、日々の善い行いが幸福をもたらしてくれる、そんな風に考えている人が多いのではないでしょうか。

七五三やお正月は神社にお参りに行き、結婚式はキリスト教会で、お葬式は仏教と、笑い話にもなりますが、それぞれの良いとこどりをしてうまく自分のものにしていると考えることもできます。何より自分と違う考えを否定せず、とりあえず受け入れるというそんな気質があったからこそ、新しいものを取り入れて上手にアレンジする、そんな融通無碍(ゆうずうむげ)なところが、とても日本的な魅力のひとつだと思います。

仏教美術は、日本の美術の原点だと思います。飛鳥時代、百済から仏教が紹介されて飛鳥寺や四天王寺が建立され、国家仏教化が一気に推進されました。当時の大陸は時代の最先端。流行りものに飛びついたわけですね。百済の使者によって日本に初めてもたらされた仏像を見て、当時の日本人たちは、その美しさに驚いたという記録が残っています。日本の仏教彫刻の歴史は、ここからスタートしました。

骨董市にもさまざまな仏像が出品されています。仏像を見て、いつ頃の時代のものか、木彫か塑像か、どんな宗派の像かなど、そんな情報も気になると思います。でも、仏像と出会った時、細かい客観情報ではなく、いいなと感じられるかどうかという自分の直感が最も大切なのではないでしょうか。

専門家や特別なコレクターでもなければ、身近において毎日過ごしたいと思えるかどうかだけを拠り所にすれば、それで十分だと思います。本来仏像の鑑賞とは、そういうものだと思います。

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【推しから考える、自分が共有したい価値観《化粧》】

今年1月に発表された第164回芥川賞作品『推し、燃ゆ』。受賞時21歳、2作目の作品ですが全く異なる作風。数々のインタビュー記事から、宇佐美りんに大谷翔平並の才能を感じています。

ところで、美術ファンであればどなたにも『推し』作家がいるのではないでしょうか。では、なぜそのアーティストが、自分にとって特別な存在なのか考えたことはありますか? 『作品が好き』『生き様がかっこいい!』『新しい表現を追求しているから』などなど、十人十色の声が聞こえてきそうです。

推す理由を考えることは、自己分析につながります。そこからわかるのは、自分が大切にしている価値観。作家やあるいは作品の魅力として感じる何かは、あなたが誰かと共有したい大切なことではありませんか?

その意味で私が魅力を感じる作家にトゥールーズ・ロートレック(1864〜1901)がいます。ロートレックは、南フランスで千年以上の歴史を持つ貴族の家系に生まれました。当時の上流階級、名家ですね。ただ、二度の骨折により脚の発育が止まってしまいます。現代医学の見地からは、遺伝的特質と考えられているそうですが、その病気によってリセと呼ばれる日本の高校相当の学校から退学し、父親からも疎まれ、孤独な青春時代を過ごしています。

その後、家族の友人であった動物画家に師事したのをきっかけに絵画を学び初めた彼は、パリの中心となっていたモンマルトルへと向かいます。学び初めた当初の彼の絵は、馬や身近な人の肖像画などが中心でしたが、徐々にその作品の中心は市井の人々や大衆文化の世界へと移っていきました。

ロートレックが過ごしていた19世紀末〜20世紀初頭、モンマルトルは退廃的な歓楽街。イメージとしては新宿歌舞伎町でしょうか。19世紀フランスには公娼制度があり、そこはブルジョワ階級の男たちが集うサロンとなっていました。現代の風俗店とは、全く異なります。そのあたりの様子は、私の推し映画監督であるパトリス・ルコントの『歓楽通り』に詳しいので興味のある方はぜひご覧になってください。

特別な権力を持つ金持ちの男と娼婦たち。きっと毎夜のように、様々なドラマが繰り広げられていたのでしょう。ロートレック後期の作品には、そんな世界に身を置く娼婦を描いたものが多数あります。

超がつくほど裕福な家庭に生まれ、しかし病気で大きな挫折を経験。家を出て都市に暮らしながら自己表現を生きる道標とする暮らしの中で、作品のモチーフに選んだのが市井の人々であり、娼婦たちでした。

今も昔も、大都市は社会的弱者に居場所を与えてくれます。特権階級に生まれながら、都市の底辺に暮らす人々にその眼差しを向けた理由には、彼の成長の軌跡が大きく影響している事は間違いないでしょう。 娼婦の支度風景を描いている《化粧》には、日々を懸命に生きる人間の一瞬が美しく、そして儚く切り取られている、そんな気がします。

【時間を使って丁寧に楽しむ茶陶《萩焼》】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

コロナ禍でもやはりオリンピックは開催されるようです。感染拡大が心配ですが、でも始まれば盛り上がってしまう、そんな予感がします。そう言えば、今回のオリンピックからサーフィンが正式種目として採用されています。実は昔、波乗りが大好きでした。

最初は全くボードに立てず、コンディションも日によって違うのでなかなか上達しません。でもだからこそ、少しずつ上達していく時の喜びや達成感が大きくて、どんどん深みにハマっていきました。

話は変わって、怖いお父さんの娘さんに、いわゆる『良い女』が多いというトリビアを聞いたことがあります。手に入れるためのハードルが高いほど、戦利品の価値が高く見えるというような落ちだったと思いますが、確かに一理あります。

簡単に手に入るものはスグに飽きてしまったり、大切に扱わなくなったりといった側面があるのかもしれません。ポイントは、それを手に入れるために自分がどれだけ多くの身銭を切ったのか。身銭はお金だけではなく、時間とかエネルギーと置き換えることもできます。

手に入れる時の身銭の大きさはさておき、時間をかけてその表情の変化を愛でながら育てるのが茶陶の楽しみ。中でも萩焼は七化けというように、使いこむうちに貫入やピンホールを通してお茶が染み込んで色合いが変わり、味わいを増してくることが際立っています。

萩焼は、土の風合いを生かした素朴な造形が特長です。絵付けなどの作為的な装飾は、ほとんど行われません。釉薬は、なめらかに透けて素地の土色を魅力的に見せる枇杷釉と、立体的でぼってりと温かみのある白萩釉(藁灰釉)の2種類が主流。どちらも土の個性を生かして、魅力的な景色を引き出してくれる釉です。

シンプルな茶碗だからこそ奥が深く、偶然に支配されたその景色は簡単にコントロールできないこと。使い手としては、時間をかけて丁寧に大切に使えばじわじわと味わい深く育ち、愛着がわいてくること。だから長く付き合って飽きがこない。このあたりに、これからの時代を楽しく生きていくための大切なヒントも隠れているように思います。

何でも効率優先の現代だからこそ、時間を使って丁寧に楽しむ生活骨董、茶陶、そして萩焼の魅力を再発見していただきたいですね。

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