原始青磁、星雲の青、越州の秘色……中国名窯の「青磁」を一望する展覧会

国立、都立、県立、区立、市立、私立などなど、日本全国には運営母体をさまざまにする美術館があります。大規模な展覧会を続々と開催する国立・公立の美術館を訪れるのも楽しいですが、住宅街にひっそりと佇む小さな個人美術館を訪ねるのもオツなもの。

じつはものすごい名物を所蔵していたり、展覧会テーマや展示品から蒐集家の趣味嗜好が見て取れたり、展示品からそのものへの愛がヒシヒシと感じられたり。ふと親近感すら湧いてくる瞬間もあります。

さて、今回は個人美術館のひとつといえる、東京都・東中野にある〈東京黎明アートルーム〉を訪ねてきました。芸術家、実業家、思想家、宗教家である岡田茂吉氏の心を受け継ぎ、2005年に〈TOREK Art Room〉として設立され、2015年に〈東京黎明アートルーム〉として再開した美術館です。

現在『青磁と浮世絵』展が開催中。どうやら紀元前からの中国青磁器がさまざまに並ぶらしいというので、お邪魔してきました。

原始青磁「灰釉陶」をはじめとする、中国名窯の青磁たち

高級住宅が並ぶ東中野の一角にある〈東京黎明アートルーム〉の外観

1階、2階、地下1階と、3フロアで展示が行われている〈東京黎明アートルーム〉。1~2階の展示会場には紀元前8~5世紀の春秋時代から12~13世紀の金時代までの青磁器が並んでいます。

解説によると、青磁の技法が確立されたのは後漢時代で、浙江省の北部を発祥とするのだそう。一方で、紀元前15世紀頃の殷時代には「原始青磁」とも呼ばれる「灰釉陶」が登場していたのだとか。本展で展示されている一番古い美術品は、春秋時代の灰釉陶。色を例えるなら、茶と緑と灰を合わせた感じでしょうか。割とムラのある釉薬のかかり具合です。

青磁といえば、一般的に淡い青緑色をイメージする方も多いのでは。ですが、展覧会場には灰釉陶以外にもさまざまな色味の青磁が並んでいました。

〈耀州窯〉の釉はオリーブグリーンが特徴で、〈越州窯〉は「秘色」という青磁最高峰と言われる色を完成させ、〈龍泉窯〉は淡く澄んだ青・青緑色の肌合いで人々を魅了し、〈鈞窯〉は鮮やかな青に紫紅色の斑文を生みだしたのだとか。

ちなみに『茶経』を著述した文筆家・陸羽は「数ある茶碗のうち、越州が茶を喫するのによい」と書いたそう。また、鈞窯の青磁の色は、月明りもない夜空に目を凝らすなかで、ぼんやりと見えてくる“星雲の青”を目指したのだとか。各窯によってさまざまなエピソードがあり、興味深く感じました。

平安時代12世紀に制作されたという持国天立像(左)、多聞天立像(右)が出迎えてくれます

地下1階の会場では、近藤勝信、歌川豊国、菱川師宣、勝川春章といった名浮世絵師たちの肉筆浮世絵も展示されています。青磁に、浮世絵に、さまざまに楽しめるなんて、ちょっぴりお得な展覧会。会期は2025年5月5日(月・祝)まで!

Information

『青磁と浮世絵』東京黎明アートルーム

会期:2025年3月16日(日)~5月5日(月・祝)

会場:東京黎明アートルーム(東京都中野区東中野2-10-13)

開室時間:10時~16時(※最終入室は15時30分)

休室日:3月20日(木・祝)、4月3日(木)、4月20日(日)、5月3日(土・祝)

入室料:一般 600円

※障害者手帳をお持ちの方及び介護者の方は300円引き

※20歳未満は無料。年齢を確認する場合があるため、年齢のわかるものを用意

リンク:東京黎明アートルーム