2019年から改装工事のために長期休業していた東京・港区の〈畠山美術館〉が、2024年秋に〈荏原 畠山美術館〉と名称を新たに開館しました。
個人的な話ですが、ここ数年、美術館の前を通っては「いつ再開するのだろう」と、固く閉ざされた重厚な門を眺めていたので、リニューアルオープンは待ちに待ったうれしいニュースでした!
同館は、株式会社荏原製作所を興した畠山一清氏(1881~1971)が、事業の傍ら「即翁」と号して能楽や茶の湯を嗜むなかで蒐集してきた美術品を広く公開することを目的に、1964年に開館されました。
即翁のコレクションは、茶道具を中心に、書画、陶磁、漆芸、能面、能装束など。国宝6件、重要文化財33件を含む1300件を蒐集してきたといいます。そして、それらの美術品を独占するのではなく、多くの人と共に楽しみたいと考えていたという即翁。その精神を今も受け継いでいるのが〈荏原 畠山美術館〉です。

光悦、宗達、光琳、乾山などの作品がずらり!
さて、〈荏原 畠山美術館〉では現在、即翁がコレクションした「琳派」の作品と、即翁の甥で、荏原製作所社長を継いだ酒井億尋氏の近代洋画コレクションなどを展示した『琳派から近代洋画へ』展が2025年3月16日(日)まで開催されています。
琳派をテーマにした展示では、本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳、尾形乾山などの作品がずらり。かの有名な横浜の生糸王・原三渓氏の旧蔵品も多く展示されています。
個人的に目を奪われたのは、ガラスケースにずらりと並べられた尾形乾山絵付けの器。銹絵の向付や汁次、赤・黄・緑・金彩で四季の草花を描いた鮮やかな五組の土器皿、大きな牡丹を大胆に中央に配した四方皿など、茶の湯の懐石にも用いられたであろう器が目を楽しませてくれます。
即翁は、約40年に渡って茶の湯を楽しみ、実践してきたなかで、懐石やそれらに用いられる器にも大きなこだわりを持っていたのだとか。乾山の器については、万が一来客が器を割ってしまうと怖いので、向付で出して早々に下げてしまおうと語ったなどのエピソードが紹介されていました。

展示されている重要文化財に眼福!
また、即翁がこよなく愛したという、本阿弥光悦の《赤楽茶碗 銘 雪峯》(重要文化財)も展示。火割れを雪解けの渓流になぞらえて金で継ぎ、光悦自らが「雪峯」と命銘したのだそう。眺めているだけで不思議と緊張してしまうような佇まいでした。
本阿弥光悦が書を、俵屋宗達が下絵と、「琳派の祖」と言われる二人による合作《金銀泥四季草花下絵古今集和歌巻》(重要文化財)も! 見事な下絵に合わせて描かれたリズミカルな書。光悦と宗達の息の合った偉大な仕事にただただ見入ってしまいました。

酒井億尋氏の近代洋画コレクションも含め、かなり見応えのある展覧会。2月24日(月)には、通常非公開の茶室「浄楽亭」にて茶席が楽しめる「近代の数寄者 畠山即翁の茶室で一服」という関連イベントも開催されるようです(定員に達し販売終了)。
さらに4月12日(土)からは『松平不昧と江戸東京の茶(仮)』という展覧会も予定。見逃せない展示が続きそうです!
Information
開館記念展Ⅱ 琳派から近代洋画へ―数寄者と芸術パトロン
会期:2025年1月18日(土)~3月16日(日)
会場:荏原 畠山美術館(東京都港区白金台2-20-12)
開館時間:10時~16時30分(入館は16時まで)
休館日:月曜、2月25日(火)
観覧料:【オンラインチケット料金】一般 1300円、学生(高校生以上)900円、中学生以下無料(保護者同伴)、【当日チケット料金】一般 1500円、学生(高校生以上)1000円、中学生以下無料(保護者同伴)
※障害者手帳をお持ちの方と、その介護者1名は無料
※支払い方法を完全キャッシュレスに移行。現金での支払いは不可
リンク:荏原 畠山美術館