さまざまな“いきもの”をモチーフとした逸品に眼福!〈皇居三の丸尚蔵館〉の「いきもの賞玩」展

皇室に受け継がれた品々を保存・調査・研究するための施設としてひらかれている、東京・大手町の〈皇居三の丸尚蔵館〉。現在、「いきもの賞玩」と題した展覧会が2024年9月1日(日)まで開催されています。

私たちの身の回りに存在する小さないきものたち。天皇家もそれらの存在を身近に感じ、心を配り、生き物をモチーフとした美術品も身近に置いてきたようです。

上の写真は明治時代後期~大正時代に制作され、宮内省に収蔵されている牙彫作品「羽箒に仔犬」。羽箒のヒモをくわえて遊ぶ、まるまるとした仔犬の愛らしさ……! 象牙の丸彫りでつくられています。

このようないきものがモチーフとなった逸品が、入れ替えを含めて52品展示されている本展。あの有名な“国宝”も拝観できるとあって、お邪魔してきました。

伊藤若冲筆の国宝「池辺群虫図」も!

書跡、軸などが中心の「詠む・描く」の章には、昆虫や鳥を詠んだ漢詩や和歌、動物が描かれている場面の絵巻などが展示されていました。

流麗な筆致で書かれたこちらは、江戸時代中期の公家・近衛家煕が、花と鳥を題にとった和歌を十二カ月撰んで書写した「十二月花鳥和歌」です。

藤原定家の自撰歌集『拾遺愚草』から引用した和歌とのことで、十月は鶴、十一月は千鳥が題となっています。鳥をテーマに寂寥感を醸す歌もステキですが、あまりにも気品漂う麗しい書と、月によって変わる文字の構成に、しばし見とれてしまいました。

こちらは、円山応挙に師事した山口素絢の「朝顔狗子図」。犬好きとして知られる応挙にならって、素絢も可愛らしい仔犬を描いたそう。

コロコロとした仔犬のあどけない表情と、繊細に描かれた朝顔が清々しい。隣に佇んでいたインバウンドで来たらしい外国人の少女が、この絵を見て「Cute……!」と小さく呟いているのが印象的でした。

そして、本章の最たる見どころは、伊藤若冲の「動植綵絵 池辺群虫図」。

全部で30幅あるという「動植綵絵」。そのうちのひとつ「池辺群虫図」は、初めて目にした瞬間、なんとも鮮やかな色彩に驚きました。

瓢箪がたわわに実る池のまわりに棲むいきものたち。どれも生き生きと繊細な描写で描かれ、いきものたちの会話が聞こえてくるような不思議な感覚があり、飽かず眺められます……!

江戸時代中期に描かれたものにしては保存状態が非常によく、皇室にとっても特別な美術品であることが伝わってきました。眼福です。

虫の大名行列⁉

かつての明治宮殿を飾るためにつくられた大きな花瓶や壁掛けなどが展示されている「かたどる・あしらう」の章。「羽箒に仔犬」も本章に展示されています。

見応えのあるさまざまな美術品のなかでも、特にインパクトのあった「竹籠に葡萄虫行列図花瓶」。高さ1メートル程の白磁の花瓶に、竹編みの籠やブドウの蔦・葉などを装飾し、その奥にさまざまないきものがあしらわれています。

コオロギ大名を駕籠に乗せ、隊列を成すバッタの従者。これは大名行列を描いているのだそう! その行列を眺めるアマガエルもいます。

この発想自体がとてもユニークかつ、竹籠も、ブドウの蔦も、すべて陶磁でできているという驚愕の逸品。こちらも飽かず眺めて楽しめます。手がけたのは初代・宮川香山です。

続く「いろいろな国から」の章は、公務においてさまざまな国と交流するなかで、各国から贈られた美術品が展示されています。美しいガラスの花瓶にあしらわれた魚、宝石の鳥、古代の壺に描かれた生き物など、日本で生まれた芸術品とは大きく異なる、それぞれの美しさがありました。

目の肥えること間違いなしの本展は、9月1日まで。展覧会を楽しんだあとは、開放されている皇居内の散策も楽しいです。ぜひ訪れてみてください!

Information

いきもの賞玩

会期:2024年7月9日(火)~9月1日(日)

会場:皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区千代田1‐8 皇居東御苑内)

開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)

※毎週金曜・土曜は夜間開館、20時まで開館(最終入館は19時30分まで)

※ただし8月30日(金)を除く

休館日:月曜

観覧料:一般1000円、大学生500円

※高校生以下及び満18歳未満、満70歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、運転免許証、マイナンバーカードなど)をご提示ください。

※障害者手帳をお持ちの方とその介護者各1名は無料(日時指定不要)。

※事前に日時指定をお願いします(一般・大学生・高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方が対象)

お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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皇居三の丸尚蔵館

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