【元首相・細川護熙さんが京都の寺院に奉納した襖絵を大公開!『京洛の四季』開催中】

第79代内閣総理大臣を務めた細川護熙(ほそかわ もりひろ)さんの展覧会『京洛の四季』が、東京都銀座にある〈ポーラ ミュージアム アネックス〉にて、2023年9月15日(金)~10月15日(日)の期間で開催されています。

政界引退後、陶芸、書画、油絵など、さまざまな創作活動に力を入れてきた細川さん。近年は大型の障壁画や襖絵の制作にも注力しており、奈良・薬師寺慈恩殿の『東と西の融合』や、京都・龍安寺の『雲龍図』などを手掛け、奉納されています。

今回の展覧会では、2014年に京都・建仁寺塔頭寺院正伝永源院へ奉納された『四季山水図襖絵』を大公開! さらに、細川さんご本人によるギャラリートークを交えたプレス向け内覧会が開催され、お邪魔してきました。

意外性のある画材と異文化をミックスさせた、新しい漆絵

会場に入り、まず目に飛び込んでくるのは、荷花(ハス)、ドクダミ、カキツバタ、ツワブキ、ヤマユリといった、古くから愛でられてきた路傍の草花や、カゲロウ、チョウ、トンボ、カタツムリなどが描かれた作品。

油彩用のカンヴァスに描かれているのですが、どうやら油絵の具ではない様子。キャプションを覗くと「漆、金、錫」とあり、既視感のある艶めく黒い画材が、漆の質感であることにようやく気づきました。

カンヴァスに漆。そして中国絵画の伝統的な画題「草虫図」に着想を得て描いたという草花や虫のモチーフ。和洋中さまざまな要素をミックスし、伝統的かつ新しい技法で描き出す細川さんの、とどまることのない創作意欲を目の当たりにしました。

京都各所の四季を描いた『四季山水図襖絵』

続く部屋に足を踏み入れた瞬間、感嘆の溜息が出るかもしれません。ギャラリー内の4面の壁それぞれに大迫力の襖絵が展示され、4作品をぐるりと見渡せるレイアウトになっています。

京都・東山の夜桜が月明りに浮かび上がる「知音(ちいん)」、鳥声だけが響く夏の北山「渓聲(けいせい)」、嵐山周辺の山々が紅葉に色づく「秋氣(しゅうき)」、雪に覆われた大文字山と東山の街並みが連なる「聴雪(ちょうせつ)」。寂然とした京都の四季を眺めているだけで、心が清められる思いです。

これらの『四季山水図襖絵』が描かれることになったのは、当時大型作品を描くアトリエを持っていなかった細川さんが、他寺院から依頼された襖絵の制作場所に困り、建仁寺に相談したことに始まったのだとか。

「当時の建仁寺ご住職に相談したところ、快くお引き受けいただいて。一室を拝借してしばらく襖絵を描いていましたら、ときどきご住職が見に来られて。『ぜひうちにも描いて欲しい』と仰るものですから、『これが終わったら描いてみましょう』と、こう申し上げたんです」(細川護熙さん)

制作の依頼を請けたのが春。南禅寺界隈を歩いているとき、見事な夜桜に遭遇したのだそう。東山に浮かぶ月と夜桜が対話している風景が思い浮かび、「知音」を描くことになったといいます。

「黒い襖は見たことがない」と心配したご住職だったようですが、完成した襖絵を前に「次もひとつ」とさらなる依頼が。そして、紅く色づき始めた嵐山、小倉山、愛宕山などを描いた「秋氣」を制作します。

その後、夏の北山にホトトギスの声がこだまする「渓聲」を描き、雪の降り積もる比叡山や大文字山、静まり返った東山市街や鴨川を描いた「聴雪」と、京洛の4つの季節を描いた24面が完成。

山水画とは、精神性や自然観などを添景した、いわば“創造された景色”であることも多々。細川さんもこれに乗っ取り、写生は行わず、イメージのなかの風景を『四季山水図襖絵』として形にされています。

とはいえ、京都を何度も訪ね、おおかたの地理を把握している細川さんが描いた山水画は、実際の位置関係と比べてもそれほど大きく違いません。

これら襖絵24面すべてを鑑賞できる本展。建仁寺塔頭寺院正伝永源院でも季節ごとに襖絵を入れ替えており、寺院外での展示も10年振りとのこと。

『四季山水図襖絵』を一度に目にする機会はそうありません。お見逃しなく!

Information

細川護熙展『京洛の四季』

会期:2023年9月15日(金)~10月15日(日)

時間:11時~19時(入場は18時30分まで)

入場無料

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

リンク:ポーラ ミュージアム アネックス 公式サイト

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【時代も次元も超えた、真夏の白昼夢!〈目黒雅叙園〉の百段階段で“百鬼夜行”の旅】

「昭和の竜宮城」と称された〈目黒雅叙園〉。1935(昭和10)年に建てられ、今なお残る木造建築は、昔と変わらない絢爛さで来場者に大きな驚きと感動をもたらしてくれます。

現在〈ホテル雅叙園東京〉と名称変更された同ホテルでは、今や夏の風物詩となりつつある企画展『和のあかり × 百段階段』が2023年9月24日(日)まで開催されています。

2023年のテーマは「極彩色の百鬼夜行」。東京都指定有形文化財に指定されている「百段階段」の空間を背景に、現代アーティストの作品や伝統工芸品などをダイナミックかつ繊細に展示。幻想的で美しく、かつ妖しい異世界が、階段廊下でつながる7つの部屋で展開されています。

■美しくて妖しい「あかり」と「物の怪」が待ち受ける7つの間

階段を進んだ最初の間「十畝(じっぽ)の間」を鮮やかに彩るのは、粕谷尚弘家元の一葉式いけ花と、中野形染工場が手掛けた越谷籠染灯籠。

鳥居に絡みつく藤蔓、極彩色の花、和洋さまざまな植物と、ゆかたの藍染に使われていた版型をリメイクした灯籠との、あかりのインスタレーションです。日本画家・荒木十畝による天井画と相まった異世界はインパクト大!

続く「漁樵(ぎょしょう)の間」は、今回の一番の見どころと言っていいかもしれません。

まず目に飛び込むのは巨大な柱水晶のオブジェ。そこから発せられるあかりを浴びた広間の精巧な彫刻。漁師、木こり、今回設置された鬼の陰影が妖しく浮かび上がり、異世界に迷い込んでしまったかのような心持ちに。

ちなみにこの水晶は、「エコ活動の芸術性がテーマ」という本間ますみさんのペットボトル作品。接着剤や塗料を一切使用していないというから驚きです。近くで眺めても、水晶の質感、透明感などが巧妙に表現されています。ペットボトルって、こんなにもクリエイティブな可能性を秘めているんですね!

以降も、さまざまなアーティストが広間ごとに趣向を変えて来場者を楽しませてくれます。

そして、美人画家として知られる鏑木清方が天井や小壁の彩色を手掛けた「清方の間」では、「対岸の現世」と題した展示が行われています。

こちらは照明作家・弦間康仁さんの作品。照明から洩れたアルファベットのあかりが、コズミックに空間を彩ります。

この階下にある「星光の間」にはさまざまな工房のガラス作品が並び、水の中をイメージした展示になっていました。そして「清方の間」は、水の底からあがり、岸から見える懐かしい現世のあかりをイメージ。弦間さんの作品に刻まれている文字は、百鬼夜行から免れるための呪文なのだとか。

贅の尽くされた7つの間それぞれに、現代アートのインスタレーションや、温故知新の伝統工芸品などが並び、見ごたえたっぷりの本展。美しく、妖しく、さまざまに変容する「あかり」と、ちょっぴり怖い「物の怪」の共演。時代も次元も超えた、真夏の白昼夢のような時間が過ぎていきました。

〈ホテル雅叙園東京〉の公式サイトでは、グッズがセットになった“オンライン限定”のチケットも販売されています。筆者が購入したのは「妖怪づくし・人面草紙 手ぬぐい付チケット」。各グッズはミュージアムショップでも販売されていましたが、チケットとセットで購入したほうが断然お得です! 気になった方はサイトをチェックしてみてください。

真夏だけの異世界の旅、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?

information

『和のあかり×百段階段2023 ~極彩色の百鬼夜行~』

場所:ホテル雅叙園東京(東京都目黒区下目黒1-8-1「百段階段」)

期間:2023年7月1日(土)~9月24日(日)

開場時間:11時~18時(最終入場 17時30分)

※8月19日(土)は17時まで(最終入場 16時30分)

入場料:大人1500円、学生800円

※グッズ付きのオンライン限定チケットや、レストランのお食事がセットになった特別プランもご用意

サイト:ホテル雅叙園東京 特設サイト

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