【イノセントな求道者《ベルナール・ビュフェ》】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

『恋は落ちるもの』とは、何かのTVドラマのセリフだったと思うのですが、人は理屈で好きになるわけではなく、直感的に一瞬で気に入ったり、嫌ったりということを繰り返して生きています。

もうだいぶ前になりますが、ビュフェの作品を初めてみた時、ひと目見た瞬間に好きになりました。後づけで考えてみれば、その時自分が感じていた社会の閉塞感や厭世観にピッタリとハマッたという言い方ができるかもしれません。抑制された色使いや、シャープでトゲトゲしい描線が、ある種の痛みにリアリティーを与えながら共感を呼び起こしてくれました。

ビュフェ美術館を設立した岡野喜一郎をはじめ、ビュフェファンには同様のひと目惚れを体験した人が多い気がします。同時代性やわかりやすさ、そしてなによりその独自のスタイルがその魅力の源泉。美術史的には、それほど高い評価を与えられていないのかもしれませんが、市井のビュフェファンにとっては、間違いなく唯一無二の愛すべき作家であり作品、そんなアーティストです。

作品だけではなく、ビュフェの思想信条や生き方にも惹かれるものがあります。30歳で出会い、結婚して、最後まで暮らしを共にしたアナベルとの物語や、パーキンソン病を患って絵が描けなくなってしまった結果として自死を選択した精神性について、そのイノセントさを感じずにはいられません。

20歳で鮮烈にデビューし、スターとしてもてはやされていた時から『私は絵を描くことしか知らない』と、絵を描くことに人生のすべてを捧げていると話していた言葉に重みを感じます。

そんな愛すべきビュフェの回顧展が渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで、11月21日(土)から開催されます。

《▼『ベルナール・ビュフェ回顧展・私が生きた時代』

現在、サムライオークションには、ビュフェの作品は出品されてはいないのですが、例えば〈フランス〉〈パリ〉などの関連キーワードで検索していただきますと、お好きな作家と似たテイストの作品と出会えるかもしれません。ぜひ、条件検索機能をご活用ください。

《▼『フランス パリ』での検索結果・作品はこちらです》

【広告クリエイターから絵本作家へ《レオ・レオーニ》の魅力】

こんにちは!初心者大歓迎の《骨董・美術品専門オークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

初版が1959年。今だにロングセラーとして売れ続けている『あおくんときいろちゃん』という絵本をご存知でしょうか? あるいは、1963年初版の『スイミー・ちいさなかしこいさかなのはなし』は、読んだことがある方も多いかもしれません。作者は、レオ・レオーニ(1910〜1999年)。

アムステルダムに生まれ、ヨーロッパとアメリカを転々としながら成長し、ニューヨークでグラフィックデザイナーとして活躍。50歳にして孫のために描いた『あおくんときいろちゃん』で絵本作家としてデビューを果たし、その後、多くのベストセラー作品を生み出しています。その多くは、日本語版が出版されていますし、世界中で翻訳され愛されている作家であり、アーティストです。

レオ・レオーニの魅力は、その表現の多様性にあります。画材も表現手法もテーマも多彩ですが、それは彼がそのキャリアの多くを、グラフィックデザイナー(アートディレクター)として、広告の仕事をしてきたことと深い関係があると思います。クライアントのニーズを満たすために、先端的な表現が求められていたでしょうし、新しい表現にチャレンジできるフィールドが身近にあったのでしょう。

また、メッセージを送る対象を常に明確にもって、仕事をしていたことも影響があったのではないでしょうか。レオ・レオーニの作品は大人が読んでも楽しめるのですが、絵本作家としてのスタートが、お孫さんのための創作であったように、多くは幼児向けであり、ユニークなカタチや色の表現で作品がわかりやすく展開するように構成されており、その物語性も含めた創造性に感動してしまいます。

そのレオ・レオーニの展覧会が板橋区立美術館で10月24日から開催されます。

《▼『だれも知らないレオ・レオーニ展』板橋区立美術館

文字通り世界中で仕事をして、世界中の人に愛された絵本作家なのですが、絵本の中の絵が1点の作品として成立するものも多く、ファイン・アーティストとして捉えることもできると思います。そのあたりの彼の大きな仕事のフィールドを紹介する展覧会になっているようです。興味のある方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

多彩な表現力と多作な作家と言えば、日本の代表は北斎でしょうか。

現在、サムライオークションには、葛飾北斎の作品も若干公開されていますので、ぜひご覧ください。

《▼『葛飾北斎』での検索結果・作品はこちらです》

【骨董市場ドリーム《ヴィヴィアン・マイヤーを探して》】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

アメリカの骨董市場で、価値が無いと思われていた出品の魅力を再発見し、多くの人に認められて、映画になった《ヴィヴィアン・マイヤーを探して》をご存知ですか? 

▼《ヴィヴィアン・マイヤーを探して》

キネノート映画データベース

この映画は、ジョン・マルーフという青年が、郷土史の執筆にあたって、資料用に大量のネガ・フィルムを骨董市場で競り落としたところからスタートします。ダンボール箱に粗雑に詰め込まれたフィルムの中に、昔のシカゴの街並みが写っているのではないかと考えたようです。落札価格は380ドル。

ところが、画像は昔の街並みなどではなく、人物のスナップ写真が中心。その画像の魅力に気づいたマルーフ青年は、撮影者のヴィヴィアン・マイヤーを検索してみますが手がかりは全くなく、とりあえず200枚ほどの画像をネット上に公開しました。すると、その写真が爆発的な反響を呼び、自らの評価に確信を持ちます。

今まで全く人の目に触れてこなかった魅力的な作品を、少しでも多くの人に見て欲しい。10万枚のネガフィルム、700本の未現像のカラーフィルム、2千本の未現像モノクロフィルムを前に呆然とした彼は、画像の整理と保存をMOMAなどの美術館に頼ろうとします。しかし、門前払い。そこで、自分一人で見も知らぬ写真家の作品整理に取り組む決意をした彼は、少しずつ画像を整理しながら、展示会を開き写真集を発行を目指します。

シカゴ文化センターで開かれた《ヴィヴィアン・マイヤー》展は、なんと同センターの美術展史上、最高の来場者数を記録。ここから本格的な伝説が始まりました。映画の中で、世界的に著名な写真家ジョエル・マイヤーウィッツやメアリー・エレン・マークが、全く無名の彼女の作品を絶賛。生前に作品を発表していれば、間違いなく評価されていたはずだと話していました。

そこで、映画のはじめのシーンです。貸倉庫に眠っていたフィルムが売りに出され、二束三文で買い取った主人公。フリーマーケット好きで、普段からいろいろなモノを物色していたそうですが、本人いわく、価値あるものを見つけ出すセンスがあるのだとか。それはともかく、無名な作家の作品であろうと、タダ同然の値段がついていようとも、何か惹かれるものがあるのなら、たまには自分を信じて、思い切ってみても良いのではないでしょうか。

信じるのは自らの審美眼。他人の判断や客観的な指標ではなく、『自分が良いと感じた感受性』を信じてみることから、新しい何かが始まる気がします。 サムライオークションにも有名・無名さまざまな作家さんの作品が出品されています。お手頃な価格帯が中心なので、お時間のある時には、ぜひ新しい作品との出会いを楽しんでみてください!

【誰が何を書いているのか《書を楽しむ》】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

先日、将棋の藤井聡太二冠が王位戦で書いた『封じ手』がオークションに出品されました。その金額は2局分2通で総額2050万1000円。興味深いのが、将棋ファンの間でもその価値について、意見が分かれていることです。

王位奪取を決めた第4局の封じ手は1500万円で落札。その1手の大胆さもあって高値がついたのですが、第2局分を550万1000円で落札した人物は取材に答えて『藤井棋士の初めての封じ手』だから、自分は一番価値があると思って落札したと話していました。

確かにセオリー通り考えれば、どのようなジャンルのオークションでも『初』にまつわる出品は高値が付きます。しかし、今回はその封じ手の物語性に、より強い魅力を感じたファンが多かったということでしょう。

この『封じ手』のようなオークション出品の場合、その価値を決めるのは紛れもなく入札者の思い入れ。まだ若い藤井二冠ゆえに、今後の活躍次第でその価値はさらに上がってゆく可能性はありますが、古美術品などに比べればマーケットは狭いでしょうから、投資目的で入札する人は少ないと思います。

自分の思い入れに従って、お財布の範囲内で入札するというのが、一般人のオークションの楽しみ方。そんな王道の楽しみ方がしやすい作品ジャンルに『書』があります。

書は、《誰が》《何を》《どのように》書いたのかを楽しむものです。歴史上の偉人など《誰が》に強くこだわりを持つ方もいるでしょうし、その見た目の表現《どのように》に惹かれる方も多いと思いますが、結局のところ書の評価は『主観』によるところが大きくなります。

つまり、その作品を評価する人がどのような価値観を持っているか、その人にとってその書かれた言葉がどのような意味を持つか、といった鑑賞者の思い入れによって、その価値は大きく変わります。それゆえに、万人にとって共通の客観的な価値をつけることが難しく、それが商業オークションで作品が売買されにくくなってしまうひとつの理由だと思います。

ですが、だからこそ他人の評価を気にせずに、自分の価値観・思い入れによって値段をつけて入札すれば良いのです。そこには失敗という概念はありません。歴史を学んで憧れの人物ができたなら、その人物がしたためた《書》が市場に流通していれば、入札にチャレンジしてみましょう! もしもそんな《書》が身近にあったなら、きっとあなたの毎日に少しの力を与えてくれるはずです。

現在、サムライオークションには、歴史上の偉人が残した『書』が多数公開されています。
《『書』での検索結果・作品はこちらです》

時間のある時にぜひご覧ください。

【エディションで異なる、その物語もおもしろい《木版画》】

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刑事コロンボで有名な米国人俳優のピーター・フォークは、優れた役者の条件として『同じ演技が何度でもできること』と話していたそうです。確かにどんな仕事でも、プロならば何度でも同じことができるはず、というのは説得力があります。

再現性の高さが、作品の本質に重なるアートがあります。《版画》です。版画のおもしろさは、その再現性にあり、同時に版木の劣化によって生まれてくる味わい深さや、売れ行きによって作品が変遷するその物語性にあります。北斎でも広重でも、初刷の売れ行きが悪いと版元が流行などを鑑みて、刷り色を変更するなどアレンジを加えたことで、同じ版木を使っていても、刷り色が異なるエディションが存在することになります。

大正時代に誕生した新版画は、それまでの木版画に比べて摺り度数が格段に多く、30〜40回ほども摺りを重ねることで、表現力が飛躍的に広がっています。新版画ムーブメントの作家の中で、現在世界的にも人気がある作家が川瀬巴水(1883〜1957年)。アップル創業者のスティーブ・ジョブズがコレクションしていたことでも有名になりました。

巴水は日本画、そして洋画を学び、最後に自分にとって最良の表現手段として、版画を選択しました。巴水が版画作品に力を入れ始めた1918年頃は、浮世絵版画は衰退していましたが、当時の人々にとって写実的な洋画の技法を木版画に取り入れた巴水の作品は新鮮だったようで、徐々に人気が高まったいったようです。

巴水が生涯で製作した作品は、600点以上と言われています。しかし、オリジナルの版木は関東大震災や第二次世界大戦でほとんど焼かれてしまったそうで、現存する初摺りは、大変人気が高くなっています。特に欧米では以前から評価が高く、海外のオークションでは高値で売買されています。

サムライオークションには、現在巴水の作品のお取り扱いは無いのですが、それ以外の版画作品が数点公開されています。ぜひアクセスして、ご覧になってください。

《▼『版画』での検索結果・作品はこちらです》

贋作に価値は無いのか?

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの井戸です。

2020年5月26日のブログにも同じテーマの内容のブログがありますが、私なりに記事を書いてみました。

美術品に付きまとう問題のひとつに贋作があります。贋作とは偽物という意味です。手に入れたものが贋作だったらがっかりしてしまうかもしれません。しかし美術の世界では、見る人の目を唸らせる程の贋作に対して、その技術に高い値がつけられることも少なくありません。

そんな贋作を通じて映し出される人間模様を描いた、『嘘八百』という骨董品がテーマのコメディ映画があります。イカサマ古物商の小池則夫と、落ちぶれた天才陶芸家の野田佐輔の二人は、大手美術商に騙された共通の過去を持ちます。意気投合した二人が各分野のスペシャリストを率い、「幻の千利休の茶器」の贋作を作り出して大手美術商への復讐劇を企てる、というお話です。

物語の結末は映画を観ていただくとして、贋作のように「真似をすること」を芸術家はどのように考えるのでしょうか。ピカソは「凡人は模倣し天才は盗む」という言葉を残しました。サルバドール・ダリは「何も真似したくないと思う者は、何も生み出さない」という言葉を残しました。人は真似をすることで学び、それを活かして成長していくというメッセージです。

美術品を見るとき、偽物に騙されたくないと変に力が入っていませんか?本物と見分けがつかないほど似せられた作品にも、背景には深い物語があるかもしれません。その人にとって精神的な価値があれば、それは良作だと言えるでしょう。製造から人の手に渡るまでのストーリーによっては、本物を超える価値にもなり得るのです。

映画の中で、小池則夫が贋作の茶器でカフェオレを飲みながら「カフェオレが映えない」と野田佐輔にボヤき、ニヤニヤしながら飲むシーンがあります。二人の物語が始まる場面に居合わせた贋作です。ひとつの骨董品をこんな風に楽しむことができれば最高ですね。

※もちろん当社としては、贋作を容認したりオススメしているわけではありませんので、あしからずご了承くださいませ

【詩情を描写するミニマル・アート《浮世絵》】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

TBSのプレバトをたまに見るのですが、俳句の夏井いつき先生の大ファンです。何がおもしろいかって、駄作があっという間に傑作に変わる訂正がすごい。作者が描き出そうとした光景を、的確な修正でみごとに立ち現してくれます。

俳句の魅力は少ない文字数で、誰にも同じ情景をイメージさせ、詩情を感じさせるところ。究極のミニマリスム。描写したい状況の本質を感じさせるための言葉の絞り込み、文脈の作り方に才能が出てきます。これは、浮世絵に似ています。どちらも世界に誇れる、洗練された日本の文化ですね。

描く対象の本質を感じさせる線を、極力まで絞り込む。構図や色、余白の表現で、文脈を作り出す。確かに浮世絵の魅力は、シンプルで数少ない線で、いかにその情景のリアリティを鑑賞者に実感させるかという点にあるので、これは俳句と一緒だと思います。

現在、サムライオークションには、浮世絵も数多く公開されています。

《▼『浮世絵』での検索結果・作品はこちらです》

サムライオークションには、幅広いお宝作品が出品されています。あなたのセンスで、浮世絵のお宝作品を発掘してみてください。

【自分と向き合う《自画像》の魅力】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

在宅時間が長くなると、自然と自分の顔を見る機会が増えてしまいます。オフィスでは、手洗いを済ませれば直ぐ出ていくところ、洗面所の鏡で顔を眺めながら『皺が増えたな』とか『疲れているな』と思ったり。そう、普通の人は自分の顔と向かい合う時って、どちらかと言えばネガティブな気持ちを呟きますよね? おそらく、調子が良い時には自分と向かい合う必要がない、というところでしょうか。

自画像で思い出すのは、鴨居玲(かもい・れい:1928〜1985年)とアルブレヒト・デューラー(1471〜1582年)。鴨居玲は、今年が没後35年ということで、この7、8月に回顧展が石川県立美術館で開かれていました。彼の作品には、人間の深部に隠されている、生々しい本質が描き出されている気がします。

鴨居の自画像からは、作家が創作と向かい合う上での苦しみのようなものを感じます。人間は多面的な存在なのに、わざわざその暗部、翳の部分に惹かれてしまうことに、自分自身も戸惑うことがあるのですが、本質を見つめるというのはそういうことなのかもしれません。

そして、デューラー。鴨居の自画像に対して、未来に向かって明るい光を見続ける、そんな強い意志を感じるのが、1500年に描かれた自画像です。デューラーが生きた時代、画家が自画像を描くのはまだ珍しかったようですが、彼は数枚の自画像を残しています。最も有名な1500年の自画像は、自身をキリストに模して描いているらしく、明暗法によって光が強調された顔、眼力の強さは確かに神々しい。

同じように人間の奥深いところにある何かを描き出した作品でありながら、一方は翳を、もう一方は光を見ている、そんな印象です。生きた時代、背景も違うので単純に比較はできませんが、どちらも人の本質を捉えた魅力的な作品です。

【《花鳥画》の魅力】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

先日の台風10号も恐ろしかったですが、まだまだ台風シーズンは続きます。本当に自然の脅威の前では、人間は手も足もでないということを思い知らされます。ただ、時として恐ろしい顔を見せる自然だからこそ、人の思うようにならないというところにまた、美しさを感じるのかもしれません。

諸行無常、常に変わり続ける自然の儚さに美を感じる日本人のメンタリティーから、数々の花鳥画の名作は誕生しました。

現在、サムライオークションには、花鳥画の名品も数多く公開されています。

《▼『花鳥画』での検索結果・作品はこちらです》

花鳥画は、もともと中国で体系化され、日本に広がった画題のひとつです。花と鳥の他に、草木や虫、小動物が描かれたものも含まれます。自然の美しさ、命の尊さを感じさせるものから、風物詩などもあり、例えば軸ものであれば、季節ごとに自然やお客さまに合わせて、気分に寄せた作品を掛けて楽しみたいものです。

現代人の感覚からすると、作家が心の内なる創作欲求から作品を描いたように考えてしまいがちですが、社会や人々から求められて製作された花鳥画も、数多くあります。

【帝王と呼ばれた男《東郷青児》】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

安倍首相が辞意を表明してから、マスコミは自民党総裁選挙の話題でもちきりです。日本最長の在任期間だったとはいえ、それほど強烈な個性を感じることのない安倍首相ですが、次の総裁と目される菅さんも、あたりさわりのない選択肢として浮上してきた地味な印象。これも時代の流れというものでしょうか。カリスマは、どのジャンルでも、時代の要請に応えて誕生すると言われます。

かつての日本に、帝王と呼ばれたアーティストがいたことをご存知でしょうか? 洋画家、東郷青児(1897〜1978年)です。コマーシャルアートの分野で活躍していたため、その作風であるデフォルメされた女性像を、どこかで目にしたことがあるかもしれません。

19歳で二科賞を受賞した早熟の天才は、その後パリに渡ってパブロ・ピカソ(1881〜1973年)とも交流を持ったそうです。帰国後は、日本の絵画マーケットに違和感を感じていたようですが、自分の表現を追求し、少しずつ自分のスタイルを確立していきました。ただ、作品以上にそのスキャンダラスな生活が人々の興味・関心を惹き、マスコミに多くの話題を提供しました。

既婚のまま別の女性と結婚披露宴を挙げたり、32歳の時に19歳の愛人と自殺未遂を図ったり。派手なのは女性関係だけではなく、仕事面でも雑誌の挿絵や書籍の装丁、壁画など幅広く精力的に活動、展覧会への動員を増やすためのパフォーマンスなども行っていたようです。エネルギーに溢れていたんでしょうね。

東郷が最も活躍していた明治から大正の時代は、いわば日本の産業革命時代。大量生産や民主化が進み、日本が西洋化と近代化を目指していた時代です。大きく変わっていく価値観について、戸惑いや迷いを感じる人も多かったと思います。そんな時代だからこそ、東郷のような強烈な個性や時代の流れにのった新しいスタイルの作品が、大衆から熱狂的に支持されていったのかもしれません。

現在、サムライオークションには、東郷青児とその流れをくむ作家の、作品取り扱いがございます。ぜひご覧ください。

《▼『東郷青児』での検索結果・作品はこちらです》