【職人の手仕事に圧倒される《自在置物》】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

鉄や銅、四分一(銀と銅の合金)などの金属を材料として、龍や昆虫、エビ、カニなどの甲殻類などを写実的に、しかもその手足や体節などが本物同様に動かせるように作られた金属工芸作品《自在置物》。博物館などに所蔵された一級品のみならず、骨董市などでみかけた作品でも、その職人技には常に尊敬の念を感じます。

その卓越した技術の源流には、仕事を失った職人たちの技があることをご存知でしょうか? 

室町時代の応仁元年、1467年に始まったとされる戦国時代ですが、歴史に名を残す戦国武将たちを陰から支えていたのが鎧や兜を作ったり修理したりする職人、具足師です。甲冑師(かっちゅうし)や甲匠(こうしょう)とも呼ばれます。

日本では、鉄製の甲冑製作は、古墳時代から始まっていたとされています。鉄板を素材としながら、身体に合った微妙な曲線を巧みに製作する技術は、一朝一夕ではできないものでしょう。やはりいくつかの職人集団があり、お互いに技を磨きあって、激しい戦闘の中で技術革新が進んでいったのだと思います。

ところが、戦乱のない江戸時代になり、武具類の需要が減少。具足師達は経済的に苦しくなります。そこで、技術伝承と収入を得るために、刀の鍔(つば)や轡(くつわ)などの武具や馬具などを足がかりに、鉄製の工芸品を作り始めました。それが、《自在置物》という金属工芸ジャンルの誕生につながっていったようです。

自在置物は、日本国内よりも欧米では早くから高い評価を受けており、多くの一流作品が海外に残っているようです。

今年のコロナ禍においても、一瞬にして消滅してしまった人々の需要や仕事があり、唖然としました。そんな想像を超えた苦境に立たされた時でも、確かな技術や技を身につけていれば、それが新しい道を切り開いてくれるという示唆に富んだ話だと思います。

サムライオークションには現在、《自在置物》は公開されていませんが、マニアックなアンティーク品が数点公開されています。

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お時間のある時に、ぜひご覧ください。

【《竿秤》を手にすることで学べるもの】

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長さ、体積、重量の3つの単位を合わせて度量衡(どりょうこう)と言います。計測の概念とそれを測る〈ものさし・ます・はかり〉などの器具を意味します。古来より計測することは、租税・貨幣・土地制度など、社会を維持するための基本中の基本、正しく測ることはすなわち国家の根幹に通じています。

日本における度量衡(計測法)の歴史は、大宝律令(701年)に始まり、長さは〈寸(すん)・尺(しゃく)〉、体積は〈升(しょう)〉、重量は〈貫(かん)〉を基本の単位としましたが、実際の数値は地域や年代、用途によってもばらばらだったようです。

ばらばらだった数値が統一され、〈尺貫法〉として成立したのは1875年(明治8年)ですから、それまではさまざまな取引の際に行われる計測には、多分に怪しいものもあったと考えられます。

いつの時代も、不正によって利益を得ようとする人間はいるものです。このため、精密な秤が必要となり、織田信長(1534〜1582年)が卓越した技術を持つ職人に〈天下一〉の称号を与え、道具に〈天下一〉という極印を押すことを許可しました。いわゆる、お墨付きというやつですね。

1653年、江戸幕府は〈天下一〉の称号を受けた東西2つの秤職人だけに、竿秤(さおばかり)の製造と販売、検査・修理を限定しました。この職人集団は、江戸の『守随(しゅずい)家』と京都の『神(じん)家』です。

画像のひょうたん型のケースに入った竿秤は、別名銀秤(ぎんばかり)とも呼ばれ、江戸時代以前まで秤量貨幣として流通していた銀や砂金の重さを測るために使われました。取引をする上で互いの平等を確認し合うため、それぞれが自前の携帯用の秤を持っている必要があったんですね。

骨董道具は、鑑賞して楽しむ他に、その歴史、使われ方、刻印の意味などなど、興味を持って調べだすと無限に広がる楽しみがあります。ぜひサムライオークションで、骨董道具の世界を広げていってください。

【歴史と味わい深さと実用性《箱物》】

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世界遺産、法隆寺の五重塔は、建立から1400年以上が経っています。さらにその材料となっているヒノキは、樹齢1000年以上と考えられているため、その木材が芽吹いた時は紀元前ということになります。日本では、楠、欅、イチイ(アララギ)、杉などが長寿の木とされていますが、場合によっては2000年を超える寿命の個体もあるようで、それだけで私などは畏敬の念を感じてしまいます。

そのような長寿の木は概ね堅い材質のため、摩擦や衝撃に強く、建築物をはじめさまざまな加工品として使用されてきました。箪笥や机など、木目が美しいものは観賞価値も高く、高値で取引されていたようですが、骨董品市場にも木目の美しさや経年劣化の味わいを感じさせる木工家具が出品されています。

今回画像でご紹介しているのは、銭箱とよばれる金庫。江戸時代から大正にかけて使われていました。さまざまなデザインがありますが、ユニークなのは丈夫に丸い穴が空いているタイプ。江戸時代に広く流通していた寛永通宝という四角い穴の空いた貨幣を入れるために開けられた穴で、当時のお財布である『銭通し』(貨幣の四角い穴に通してまとめるための紐)のまま、箱の中に仕舞えるようになっています。金庫であり、レジのような役割もあったのではと思います。

銭箱の穴は、現在の500円硬貨くらいの大きさです。アンティーク貯金箱としても使えますし、自分好みに磨けば、美しい木目を鑑賞したり、往時の商売人の仕事ぶりに想いを馳せることもできるはず。実用と鑑賞用とを兼ね備えた骨董品ならではの楽しみ方が広がります。

まだ道具類の出品は多くはありませんが、サムライオークションでは道具類もウェルカムなので、今後も積極的にPRしていきたいと思っています。

『道具』で検索しますと、現在は以下のような出品作品を確認できます。

《▼『道具』での検索結果・作品はこちらです》

お時間のある時に、ぜひサムライオークションでお宝探しをお楽しみください。

【古くなるほど美しい《漆器》】

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衣食住に関わる品々は、高品質低価格なモノが増え、結果、新調品を好む人が増えていると感じます。ひと昔前、大量生産大量消費を見直すトレンドが確かにあったのですが、デフレ環境が長くなって、時代が逆行しているように思う今日このごろです。手軽なことや効率の良さは、確かに評価されるべき面もあるとは思うのですが、そちらの価値感に少しよりすぎているのではないでしょうか。

革製品や家具など、エイジングを楽しむ文化は、モノを大切にする文化につながります。日本には古くから、漆器の存在があります。漆の木の生息域は東アジアに限られているため、漆器はアジア発の文化であり、海外では漆器全般が〈JAPAN〉と呼ばれることもあるようです。

漆を塗ると表面の強度が高くなり、防腐効果もあるために耐用年数が長くなります。同時に漆は、天然の樹液のため乾いて固まった後にも呼吸を続けて、いつまでも変化します。空気に触れ、紫外線や人の手との摩擦によって表面が透明化して明るくなり、艶が出ます。

漆に似た塗料も多くありますが、化学塗料の場合は色は変化せず、光沢がでるようなエイジングもありません。本物の漆器は、使い続けることで味わいや愛着が出てくる、コレぞまさに骨董の味わいです。 サムライオークションでは現在、漆器の出品はほとんどありませんが、エイジングに魅力がでる品なので、他の骨董と同様に、出品もファンの方も増えると良いなと思っています。

【良い出会いのために!《大江戸骨董市》】

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先週末、大江戸骨董市に行ってきました。感染者が増えてきている中、どのくらいの人出になるんだろうと思っていたのですが、やはり通常時に比べると少なめの人出でした。

でも、見て回る側からすれば、ちょうど良い混み具合。出店者さんは、ほぼほぼ会場いっぱいでしたので、道具系と陶磁器を中心に朝からお昼過ぎまで、たっぷり楽しむことができました。

改めて思いましたが、骨董市とかフリーマーケットは、老若男女が自然に出会える場所ですね。気の良い出店者さんですと、品物の善し悪しの見分け方なんかを丁寧に教えてくれます。全体の印象として、女性と若い方が増えているような気がして、少し嬉しかったですね。

ところで、目の前で積極的にお財布を開けていたのは、30代くらいの若い女性が多かったです。前々から感じていたのですが、女性の方がファッションとかライフスタイルに対して、自分らしさをしっかり自覚している人が多いですね。お化粧と関係があるのではないかと想像しているのですが、自分のスタイルがある人は、市場でも骨董や古美術品との良い出合いが多くなると思います。

自分が気に入ったモノ、素敵だと思うモノと出合うためには、まず自分のスタイルが確立している必要があります。自分の好きなモノがどういうものかわからない人には、良い出会いはなかなかありません。骨董・古美術品に興味を持った時、何か好きだなと思った対象が出てきた時には、その対象のどこに魅力を感じたのか、考えて書き出してみましょう。

沢山の品物を見て、気に入ったらその理由を考えてみる。そんな風にして経験を積んでいくことが、目利きになるということだと思います。私もまだまだ勉強中です。 サムライオークションにも、ぜひ遊びに来てください。あなたのための良い出合いを見つけてください。

【感染症が変えていく新しい世界】

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アメリカ大統領選挙が終わりました。バイデンさんは次期政権運営の準備を進めているようですが、トランプさんからの敗北宣言はなく、まだスッキリした決着は出ていません。

保護主義を強烈に推進する大統領が政権についている時にパンデミックが起こり、世界中の日常が一挙に崩壊。国際社会はグローバルに繋がり連携していく方が、明るい未来があるように思いますが、極端なリーダーの登場とそれに続く強力な感染力を持つウィルスの登場によって、世界は一瞬で閉じられてしまいました。大きな震災やテロ、2008年の金融危機よりもインパクトが大きくなってきている印象です。

ただ、これまでも人類には極限状況が訪れて、そこから何かを学び、新しい思想や文化を生み出してきた歴史があります。ルネッサンスがそうです。大きな概念なので、いろいろなとらえ方がありますが、14世紀にペストが流行って多くの人が亡くなり、社会が共有していた宗教的な価値観が徐々に損なわれ、人々がそれまでの教会ではない、新しい祈りの対象を探すようになっていく精神運動という側面を大づかみで理解しています。その中で絵画表現なども大きな影響を受けました。

今回の新型コロナウィルス感染症が人間社会に与えた影響は、経済的な面だけではなく、文化や精神面についても想像以上に大きく、来年もまだまだ変化の時期が続くでしょう。一時は全面的に閉鎖されていた美術館などは、予約制などを採用して公開され始めていますが、採算がとれているところは少ないようです。WEBを活用した、新しいアート鑑賞のあり方も模索が始まっています。

一方に大きく振られた振り子は、反対側に移動する時のエネルギーも大きくなります。良くも悪くも、新しいものが生まれる時代だと感じます。

サムライオークションも、骨董・美術品専門のネットオークションとして、新しい業態にチャレンジを続けていきます! 皆さま、どうぞよろしくお願いします!

【刺激と創作の関係性《ヘルムート・ニュートンと12人の女たち》】

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昭和世代には、ボンデージファッションの石田えりの写真集が思い出されるヘルムート・ニュートン(1920〜2004年)。生誕100年を迎えた今年、ドキュメンタリー映画『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』が12月11日から公開されます。

《▼『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』》

PLAYBOYや、ヴォーグをはじめとするフランスのファッション誌でカメラマンとして活躍したニュートン。舞台装置としてSMを活用し、フェティッシュなスタイルを確立して一世を風靡しました。その過剰で過激な演出は、賛否両論を呼びましたが、映画では当時の彼と仕事をした12人の女性達が彼との仕事の舞台裏を語っています。

ポルノまがいと評されることもあった彼の写真は、どちらかと言えば女性受けは良くないと思っていたのですが、シャーロット・ランプリングやグレイス・ジョーンズらは、ニュートンとの仕事は刺激的で示唆に富んでいたと評価しているようです。

アートを、既存の価値観に疑問を投げかけ、既成観念を壊して新しい何かを生み出すものと定義すれば、ニュートンの仕事はまさにアーティスティックでした。

刺激と創作の相関性に興味のある方は、ぜひご覧ください。モノ創りのヒントが、手に入るかもしれません。

【文化の日にアートを考える《2020年文化功労者・高橋秀》】

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11月3日は文化の日でしたが、今年の文化功労者20名の中に、美術作家高橋秀(1930年〜)がいます。御年90歳で創作意欲に溢れているコメントを読むと、素直に尊敬の気持ちが沸いてきます。

▼《美術作家 高橋秀・オフィシャルサイト

過去に見たドキュメンタリーでは、作家として売れはじめた1961年頃から、不本意な依頼が多くなり、経済的には潤っていたけれど自分本来の創作ができないことにストレスを感じて、63年にイタリアへ渡った経緯などが紹介されていました。

その後は、2004年まで40年に渡ってローマに滞在。流線状の輪郭を持つ抽象絵画を制作し、エロスの画家と評価されました。

訥々と語る言葉からは、名声やお金よりも自分の創作に打ち込みたいという意志がはっきりと伝わってくる、そんなアーティストです。売れない時に家計を支えてくれた奥様とずっと仲良く暮らしていることや、1950年代の作風などからは、ビュフェ(1928〜1999年)を想起させます。

1日中、絵を描いていても飽きないのが画家の才能だとすれば、高橋秀はまさにそんな才能に恵まれた作家。映像の中で、80代の高橋がアトリエでひとり、嬉々として創作に打ち込む姿はまるで子供のようでした。 高橋はアートについて、『人間の暮らしに決して欠かしてはならない一番基本の肥やし』と記しています。サムライオークションもその考えに全く同意。少しでも多くの人にとって、アートのある暮らしのきっかけになることを目指していきたいと思います。

【KGBのスパイ道具出品! オークションの楽しみ方】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

厳密には骨董・美術品ではないのですが、ユニークなオークションの話題がニュースになっているのでご紹介したいと思います。舞台は、米国の『ジュリアンズオークション』。2003年に設立され、カリフォルニアに拠点を置く、オークションハウスです。

エンタテインメント分野に強く、2011年にはマイケル・ジャクソンがスリラーで着用したジャケットが、180万ドルで落札されて話題になりました。ジョン・レノンのギターやマリリンモンローのドレスなどの販売実績があります。

そのジュリアンズオークションが来年1月、KGB(ソ連国家保安委員会)が東西冷戦時代に使用していたスパイ道具のオークションを開催するそうです。口紅に見せかけた銃や、隠しカメラが仕込まれた財布、盗聴器や暗号マシンなどが出品されるようで、少し古い時代のものとはいえ、数十年前まで実際に使われていたと思うと興味深いです。

出品されるのは、コロナパンデミックの影響で閉館したニューヨークの『KGBスパイ博物館』に先日まで展示されていた品々。落札予想価格は、数百ドル〜1万ドル程度と比較的参加しやすいようです。ミッション・インポッシブルならぬ、スパイ大作戦ファンだった皆さま、WEBで中継される競売の様子を冷やかしてみてはいかがでしょうか。

オークションの楽しみは、自分にとってのお宝探し。歴史的価値、市場価値とは違う、自分価値の探求は、心豊かに生きていくための基本だと思います。最近では美術分野でも、オークションでの人気が専門家による作品評価に影響を与えるといった『オークション主導』となるケースも多くなっているそうですし、やはり自分の好きなものを大切にする感性は大切にしたいものです。

サムライオークションにも、蒸気機関車のプレートなど、マニアックなアンティーク品が公開されています。

《▼『アンティーク品』での検索結果はこちらです》

お時間のある時にぜひご覧ください。

【わかりやすい表現には『力』がある《バンクシー》】

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前回に続いてオークションの話題です。英国を拠点とする正体不明の覆面アーティスト、バンクシー(生年月日未公表)の作品が、10月22日にオークションハウスサザビーズで落札されました。タイトルは、『Show me the Monet』。バンクシー作品で過去最高額となる760万ポンド(約10億4000万円)で落札されました。

推定落札価格は300〜500万ポンドとされていたので、ほぼ倍近い金額での落札。前回紹介したジェイクスピアといい、予想を大きく上回る金額になるのは、やはり世界中に低金利のお金がじゃぶじゃぶと溢れているからでしょう。本来必要とされる人に届かず、情報と力のある人達のところにお金が流れていってしまうのは、このバンクシー作品同様になんとも皮肉な感じです。

この『Show me the Monet』は、2005年制作。『Crude Oils』と呼ばれる環境破壊をモチーフにした連作の中の一枚です。私はこのシリーズの中では、スコットランド出身の画家ジャック・べトリアーノ(1951年〜)の作品『The Singing Butler』のオマージュ作品の方が好きです。砂漠で踊る紳士淑女の背後で、ガスマスクを付けた作業員が原油の缶を運ぶ汚染地域というシチュエーションに、より強い風刺を感じます。 『Show me the Monet』は、モネが晩年に定住したジヴェルニーの楽園で描かれた有名な睡蓮の連作をベースに、バイロンとショッピングカートが棄てられて破壊された池が表現されています。メッセージがわかりやすく直接的なだけに、誰もが環境破壊について少し想いを巡らせるような、そんな力がある作品だと思います。バンクシーならではの作品とメッセージ。現代的で影響力のあるアーティスト、バンクシーのアクションに今後も注目してしまいます。