日本各地で製作された「硯」が一堂に会す『和の硯』展、5月10日まで

文房四宝のひとつ「硯」。文人墨客の愛玩品として親しまれ、なかでも中国広東省の端渓硯、安徽省の歙州硯などの古硯はコレクターから絶大な人気を誇ります。サムライオークションファンにも古硯蒐集家がいるのでは?

中国で生まれた硯は日本にも伝来し、飛鳥時代には国内で陶硯の生産が始まったとされています。そうしたなかで、日本の石材を研磨した「和硯」も各地で生まれ、発展してきました。

現在、東京都渋谷区にある〈國學院大学博物館〉では、国産の硯を集めた展覧会『和の硯』が2026年5月10日(日)まで開催されています。國學院大學で教鞭をとった故・佐野光一教授が蒐集した純国産硯約1500面の中から、厳選した約200面が展示されているとのことで、お邪魔してきました。

雄勝硯、雨畑硯、高島硯――23府県の和硯が集結!

展覧会場に入ると、とにかく硯の展示数の膨大さに驚きます。形、大きさ、意匠も多種多様。石の色も、黒系、赤系、緑系などさまざまです。

3~11世紀に大陸で製作された硯も展示されていますが、本展のみどころは、23府県の産地の硯が一堂に会していること。岩手、宮城、山形、茨城、栃木、山梨、長野、新潟、静岡、愛知、福井、滋賀、京都、和歌山、岡山、鳥取、山口、高知、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島と、それぞれの地域で採石される石の特徴、歴史、伝承などが、硯とともに紹介されていました。

宮城県石巻市の「雄勝硯」や、山梨県西部の「雨畑硯」などは和硯としてよく知られていますが、全国にこんなにも硯の産地があったとは! 会場内のパネルによると、明治生まれの書家・相澤春洋が発表した「日本の硯」では、過去の資料をもとに60以上の硯材の種類や製造地を数えているのだとか。

職人の高齢化や需要低下とともに、多くの産地と工房が失われてしまいましたが、現在も製作に取り組む硯匠が各地に点在するようです。会場内の情報によると、2026年1月時点で35名もの職人が伝統と技を受け継いでいると記されていました。

佐野コレクションの雨畑硯。左の《竹節硯》は根岸愛石、右の《壺様硯》は雨宮弥兵衛の作。

さて、これらの和硯を蒐集した佐野光一教授は、山梨県身延町の生まれ。隣町は雨畑硯の産地だったこともあり、佐野コレクション1500面のうち1/3は、幼き頃から親しんだと思われる雨畑硯が占めているのだとか。

また、日本独自の文化として発展した「硯箱」も多く蒐集していたようで、200ものコレクションがあるといいます。本展では「重硯箱」が展示されていました。

江戸時代に製作された高島硯を配した重硯箱。緑系の高島石に赤漆が塗られています。
墨に関する展示もありました。

朝鮮半島や中国からもたらされた硯が、各国の影響は受けながらも、日本らしさを携えたひとつの文化として醸成されてきたことを感じる展覧会でした。

本展のほか、國學院大学博物館には国学、考古学、民俗学、神道などに関する多種多様な資料が展示されており、たっぷり楽しめます。入場も無料。ぜひ足を運んでみてください。

Information

企画展「和の硯-SUZURI-」

会期:2026年3月7日(土)~5月10日(日)

会場:國學院大學博物館 企画展示室(東京都渋谷区東4-10-28)

開館時間:10時~18時(最終入館は17時30分)

休館日:月曜(祝日は開館)、4月28日(火)・30日(木)~5月1日(金)

入館料:無料

イベント「ミュージアムトーク」

日時:2026年3月28日(土)14時~15時

場所:國學院大學博物館ホール

講師:日野楠雄(文房四宝研究・本学文学部兼任講師)、横倉佳男(本学文学部兼任講師)

予約:不要

リンク:國學院大學博物館 公式サイト