【売れるものを創るから、売れない】

こんにちは! 初心者大歓迎の《古美術専門オークションサイト》サムライオークションです。

日本を代表する木彫作家平櫛田中(ひらくし・でんちゅう/1872〜1979年)。田中の出身地、岡山県井原市にある『井原市立田中美術館』では、11月10日(日)まで《没後40年平櫛田中美の軌跡》展が開催されています。

田中の作品で有名なものに、井原地方の古い伝承に基づく《転生》があります。生ぬるい人間を、口から吐き出す鬼の木彫。絵面的には、フランシスコ・デ・ゴヤの《我が子を食らうサトゥルヌス》と同様のインパクト! でも、表面的な意味合いは真逆という面白さ。また、田中のアーティストとしての意志が表されている《尋牛》という作品も表現の奥行きが広く、大変に魅力的です。

田中が岡山県から上京し、高村光雲のもとで仏師を目指したのが1898(明治31)年。ただ「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」運動の影響で、仏像の需要はほとんどなくなってしまいました。そんな時、田中は岡倉天心(おかくら・てんしん)と出会います。

彫刻家としてどのように生きてゆけばよいか、彫刻の実用性に目を向けてどのような作品を作れば売れるのかを相談した時、天心は「売れるものを(と考えて)創るから売れない、売れないものを創れば必ず売れる」と諭したそうです。そのアドバイスがあってかその後、売れる作品作りではなく、アーティストとして自らの表現を追求する道を選択した田中。《尋牛》という作品には、自分の求める道を模索する田中自身の姿が投影されていると考えられています。

アーティストにその生き方までを諭す岡倉天心、そして素直に納得し自らの表現者としての意志を定めた田中。二人の出会いと田中のその後の運命が大変に感慨深い逸話です。

サムライオークションも、古美術ファンの皆さんの指針になれるようなサイト運営を目指していきたいと思っています!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です