【エディションで異なる、その物語もおもしろい《木版画》】

こんにちは! 初心者大歓迎の《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

刑事コロンボで有名な米国人俳優のピーター・フォークは、優れた役者の条件として『同じ演技が何度でもできること』と話していたそうです。確かにどんな仕事でも、プロならば何度でも同じことができるはず、というのは説得力があります。

再現性の高さが、作品の本質に重なるアートがあります。《版画》です。版画のおもしろさは、その再現性にあり、同時に版木の劣化によって生まれてくる味わい深さや、売れ行きによって作品が変遷するその物語性にあります。北斎でも広重でも、初刷の売れ行きが悪いと版元が流行などを鑑みて、刷り色を変更するなどアレンジを加えたことで、同じ版木を使っていても、刷り色が異なるエディションが存在することになります。

大正時代に誕生した新版画は、それまでの木版画に比べて摺り度数が格段に多く、30〜40回ほども摺りを重ねることで、表現力が飛躍的に広がっています。新版画ムーブメントの作家の中で、現在世界的にも人気がある作家が川瀬巴水(1883〜1957年)。アップル創業者のスティーブ・ジョブズがコレクションしていたことでも有名になりました。

巴水は日本画、そして洋画を学び、最後に自分にとって最良の表現手段として、版画を選択しました。巴水が版画作品に力を入れ始めた1918年頃は、浮世絵版画は衰退していましたが、当時の人々にとって写実的な洋画の技法を木版画に取り入れた巴水の作品は新鮮だったようで、徐々に人気が高まったいったようです。

巴水が生涯で製作した作品は、600点以上と言われています。しかし、オリジナルの版木は関東大震災や第二次世界大戦でほとんど焼かれてしまったそうで、現存する初摺りは、大変人気が高くなっています。特に欧米では以前から評価が高く、海外のオークションでは高値で売買されています。

サムライオークションには、現在巴水の作品のお取り扱いは無いのですが、それ以外の版画作品が数点公開されています。ぜひアクセスして、ご覧になってください。

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【《花鳥画》の魅力】

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先日の台風10号も恐ろしかったですが、まだまだ台風シーズンは続きます。本当に自然の脅威の前では、人間は手も足もでないということを思い知らされます。ただ、時として恐ろしい顔を見せる自然だからこそ、人の思うようにならないというところにまた、美しさを感じるのかもしれません。

諸行無常、常に変わり続ける自然の儚さに美を感じる日本人のメンタリティーから、数々の花鳥画の名作は誕生しました。

現在、サムライオークションには、花鳥画の名品も数多く公開されています。

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花鳥画は、もともと中国で体系化され、日本に広がった画題のひとつです。花と鳥の他に、草木や虫、小動物が描かれたものも含まれます。自然の美しさ、命の尊さを感じさせるものから、風物詩などもあり、例えば軸ものであれば、季節ごとに自然やお客さまに合わせて、気分に寄せた作品を掛けて楽しみたいものです。

現代人の感覚からすると、作家が心の内なる創作欲求から作品を描いたように考えてしまいがちですが、社会や人々から求められて製作された花鳥画も、数多くあります。

【帝王と呼ばれた男《東郷青児》】

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安倍首相が辞意を表明してから、マスコミは自民党総裁選挙の話題でもちきりです。日本最長の在任期間だったとはいえ、それほど強烈な個性を感じることのない安倍首相ですが、次の総裁と目される菅さんも、あたりさわりのない選択肢として浮上してきた地味な印象。これも時代の流れというものでしょうか。カリスマは、どのジャンルでも、時代の要請に応えて誕生すると言われます。

かつての日本に、帝王と呼ばれたアーティストがいたことをご存知でしょうか? 洋画家、東郷青児(1897〜1978年)です。コマーシャルアートの分野で活躍していたため、その作風であるデフォルメされた女性像を、どこかで目にしたことがあるかもしれません。

19歳で二科賞を受賞した早熟の天才は、その後パリに渡ってパブロ・ピカソ(1881〜1973年)とも交流を持ったそうです。帰国後は、日本の絵画マーケットに違和感を感じていたようですが、自分の表現を追求し、少しずつ自分のスタイルを確立していきました。ただ、作品以上にそのスキャンダラスな生活が人々の興味・関心を惹き、マスコミに多くの話題を提供しました。

既婚のまま別の女性と結婚披露宴を挙げたり、32歳の時に19歳の愛人と自殺未遂を図ったり。派手なのは女性関係だけではなく、仕事面でも雑誌の挿絵や書籍の装丁、壁画など幅広く精力的に活動、展覧会への動員を増やすためのパフォーマンスなども行っていたようです。エネルギーに溢れていたんでしょうね。

東郷が最も活躍していた明治から大正の時代は、いわば日本の産業革命時代。大量生産や民主化が進み、日本が西洋化と近代化を目指していた時代です。大きく変わっていく価値観について、戸惑いや迷いを感じる人も多かったと思います。そんな時代だからこそ、東郷のような強烈な個性や時代の流れにのった新しいスタイルの作品が、大衆から熱狂的に支持されていったのかもしれません。

現在、サムライオークションには、東郷青児とその流れをくむ作家の、作品取り扱いがございます。ぜひご覧ください。

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【心が静まる《仏画》のオススメ】

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洋の東西を問わず、近代以前の社会では宗教が人々の生活に与える影響は、現代社会比較にならないほど大きなものでした。疫病や天災の時に、絶望する人々に寄り添う無名の僧侶がいたかと思えば、時の権力者の近くで存在感を強める寺院があったりと、影響力が強かっただけに、その功罪も大きかっただろうと想像します。

教会やお寺には、祈りの対象としての彫刻や絵画があり、そこで祈ることで精神の安寧が実際に保たれていたのだと思います。宗教には、今以上の力が備わっていたはずです。

やがて経済的に豊かな人々が、祈りの対象を自宅にも欲しいと願い、宗教画の需要が社会に広がっていきます。ただ、そうはいっても、家に祈りの対象を持てる人々というのは、長いこと少数派だったと思います。きっととても高価な、贅沢品だったんでしょうね。

日本では平安時代から、仏像とともに仏画が多く制作されるようになり、鎌倉時代からそのバリエーションが広がって、室町時代には特に禅画が盛んに描かれるようになりました。ただ、江戸時代以降は、文人画や浮世絵など絵画のジャンルがさらに多彩になったために、仏画というジャンルの持つ価値や意味合いが変化していったのだと思います。そして、明治時代以降、新しい仏画が誕生して現在に至ります。

現在、サムライオークションには、数点の仏画の作品が公開されています。

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いずれも特長的な作品ばかりです。その画に向かい合ってみると、そこに特別な物語を感じたり、信仰を持たない自分でも自然と静謐な気持ちになることができます。やはり、お葬式や法事などで、ずっと身近にあった仏教的な考え方や物語が、身に備わっているのでしょうね。 ぜひご自宅に飾ってみてはいかがでしょうか。

【この秋は、骨董市に行ってみませんか?】

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もともと集団で生活するように最適化され、進化してきた人間にとって、人との接触を制限されることは、多くの人にとってしんどいことだと思います。ただ、まだまだ油断はできないとはいえ、新型感染症もある程度の落ち着きをみせてきています。

誰かと出会うこと、触れ合うことで人は成長します。刺激を受け、気づき、考えることがとても大切。骨董や美術にも同様の効果がありますね。全く知らなかった作家や作品に出会い、何かを感じて好きになる、そんな瞬間が大好きです。

サムライオークションはネットオークションなので、コロナ禍でのネット閲覧推進をもっとPRするべきなのでしょうが、今回は大江戸骨董市のご紹介をします。

春先からずっとお休みだった大江戸骨董市は、10月4日(第1日曜日)・18日(第3日曜日)に東京国際フォーラムにて開催予定です。新型コロナ感染症の状況によっては、中止になることもあると思いますので、事前に以下のサイトより、情報をご確認ください。

《大江戸骨董市・公式ホームページ》

骨董ファンの方でしたら、ご存知の方も多いかもしれませんが、大江戸骨董市は、〈有楽町・東京国際フォーラム〉と〈原宿・代々木公園ケヤキ並木※8月現在、次回開催日程は未定〉で開催されているアウトドア骨董市です。

日本最大規模とうたわれているように会場が広く、なんと言っても屋外なので、参加者が最低限のマナーとしてマスク着用で感染防止に努めていれば、それほど感染の心配もしなくて済むと思います。

出店数は約250店舗、一見フリーマーケットのように見えるお店もありますが、出店資格は〈古物商許可証〉取得者なので、身元は確かな方ばかりです。陶磁器、版画、軸物、道具類、などなど、あらゆるものがありますし、陳列も個性豊かでユニーク。初心者の方に最適だと思います。お時間があれば、ぜひ足を運んでみてください。 気になる作家や作品と出会った時には、サムライオークションでも検索してみてくださいね!

ガラスの宝石【とんぼ玉】

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暑い季節に飲みたくなる飲み物といえばラムネですよね。ラムネの瓶に入っているビー玉を集めたことがある方は多いのではないでしょうか。ビー玉は不要なガラス瓶を砕いたものが原料となり、工場で大量生産されます。

そんなビー玉とは用途も製造方法も違うガラス製の玉に、「とんぼ玉」というものがあります。とんぼ玉は、ガラス工芸のように職人の方が、ガラス棒をバーナーなどの高温の火にかけて、溶かしながら形や模様を作ります。トンボの目を連想させる形や模様をしており、ビー玉と違って穴が通っています。

とんぼ玉は、太古の時代からお守りや上流階級のアクセサリーとして大事に扱われてきました。古代エジプト時代では「目」をあしらったアイビーズと呼ばれるデザインが邪悪なものを睨み返す力があるとされ、身を守る意味がありました。また、副葬品として高貴な人々が亡くなった時一緒に埋葬されたりと、神秘的な力を持つと信じられてきました。その後シルクロードから中国へ伝わり、伝統的なガラス工芸の技術があったイタリアのベネチアでは、宝石のような価値があるとんぼ玉が製造されるようになります。これは「トレードビーズ(交易玉)」と呼ばれ、宝石や金と交換されました。

日本では江戸時代に大流行し、煙草入れの袋の紐を締めるためや、女性のかんざしや帯留めに使われました。当時のオシャレ小物としてアクセサリーにしたり、組み合わせでコーディネートを楽しみ、オシャレを競い合っていました。しかし、とんぼ玉は贅沢品として幕府に禁止されたこともあるなど、小さいながらも高価な宝石のような存在だったのです。日本独特の四季の風景を表した色彩が使われているものは貴重で、とても高い価値がある場合があります。また、製造の都合上、直線のデザインが一番難しいとされるので、鑑賞の際に参考にしてみると良いでしょう。

「japan」と言えば「蒔絵」

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お正月のおせち料理を重箱に詰めたり、特別な日に使う食器やお椀などに漆器を使う場面をよく見かけると思います。漆器は英語で「japan 」と呼ばれていたこともある、日本を代表する工芸です。その漆器の表面に漆で模様を描き、金粉を蒔きつける技法を「蒔絵」と言います。

蒔絵は、1000年以上も前から完成している日本独自に発展した伝統的な技法です。漆で模様を描き、その漆が乾かないうちに金粉を蒔きつける、といった細かい作業を何度も繰り返します。金を蒔くから蒔絵なんですね。ストローのような小さな筒に金粉を入れて、軽く叩きながら必要な分量を落として濃淡をつける地道な作業です。

鑑賞のポイントは、その金の粒を見ることです。金の粒の色や大きさで奥行きが変わります。撒き散らした金を筆で払いながら整えて密度をコントロールし、遠近感を出します。平目粉という不均一の粉を使えばきらきらした質感を表現でき、丸粉という金粉を使えばやわらかくぼやけた感じを表現することができます。

食器の他にも昔から、手箱、印籠、かんざし、万年筆、めがね、最近ではスマホケースなど、高級感を出したい小物に幅広く蒔絵は登場します。海外でも人気で、16世紀後半にキリスト教文化と共に鉄砲やワインなども日本へ来ましたが、それと同時に日本からも蒔絵が大量に注文され、輸出されました。蒔絵を施したものはヨーロッパ貴族のステータスだったのです。今でもヨーロッパの教会に行くと当時の漆器が大事に保管されていると言います。 近年は工業化によってプラスチック製品が横行していますが、日本の美術品としては外せない蒔絵がこれからも続いていってほしいものですね。

お湯を沸かすだけなのに、特別な存在感【鉄瓶】

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お茶やコーヒー、料理など、お湯は毎日の生活に欠かせません。健康に気を遣って、白湯を飲むことを習慣にしている方もいらっしゃるかもしれません。お湯を沸かすための道具は色々なものがありますが、過去百年から二百年にわたって広く普及した「鉄瓶」に注目してみたいと思います。

江戸時代、岩手県盛岡市の周辺でよく取れる砂鉄を使った製品が多く作られていました。同じ頃、煎茶の登場がきっかけでお茶が手軽に楽しめるようになります。そこで、使いやすい湯沸かしの道具が必要になり、日本の茶道で用いられる茶の湯釜を小さくして、取っ手と注ぎ口をつけるというアイデアから「鉄瓶」が誕生し、たちまち全国へ広がります。

鉄瓶は丈夫で長く使われやすく、広く普及して種類も多いので、保存状態は気にしなければいけませんが、比較的見つけやすい骨董品かもしれません。戦前にはどの家庭にも一つはあったもので、古い鉄瓶は今では大変貴重なものとなっています。

査定や鑑賞で確認しておきたいポイントとして、「鉄瓶のつまみ」があります。「象牙」や「翡翠(ひすい)」が使われている場合、富裕層が財をつぎ込んで作らせた「嗜好品」である可能性が高く、「希少性」と「芸術性」から高価値になりやすいとされています。「つまみ」や「取っ手」は作者の遊び心やこだわりがよく反映されるので、よく観察してみましょう。また、鉄瓶の内部に白っぽいものがある場合、それは水に含まれるカルシウムが付着したものになります。カルシウムは赤錆を防ぎ、お湯の味を良くするものなので、必ずしも価値が落ちるものではなく、こすって落とす必要はありません。 重厚な存在感を持つ鉄瓶を生活に取り入れると、お湯を沸かすだけで特別な儀式を行っているような、厳かな気持ちになれそうです。

意外な価値があるかもしれない陶磁器「盆器」

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最近は日本だけではなく、海外でも緑のアートとして盆栽が人気です。欧米では「BONSAI」という表記で認知されるようになりました。年配の方の趣味のように思われることが多いですが、モダンなインテリアとして若い世代にも受け入れられてきています。

盆栽の始まりは中国で、お盆の中に石と共に花や木を並べて山水を再現するというものでした。日本では平安時代に広がり始め、貴族が趣味として楽しみました。盆栽を本格的に楽しむには、背景に広がる景色や四季までを想像するという心構えが必要とも言われています。

盆栽は木にばかり注目が集まりがちですが、鉢もまた木と共に育てていくものです。時間が経つほど味が出てくるため、木やテーマに合った選び方が重要になってきます。近年では盆栽鉢は「盆器」とも呼ばれ、美術品として扱われる場面も少なくありません。中国清の時代に長江の泥で作った鉢には、数千万円の値が付くこともあるそうです。

盆栽鉢作家でもっとも有名な鉢職人といえば、平安東福寺です。その生涯は貧しく、他人の窯を借りて鉢を焼き続けたそうです。素朴で控えめなデザインが特徴的で、当時はあまり見向きもされませんでしたが、死後10年ほど経ってから価値が見直されてきました。

海外でのブームが広がるにつれて、今後「盆器」の価値も上がっていくのでしょうか。奇抜な配色やオシャレな形をしているものも多く、雨風に耐える強度が必要で丈夫な作りになっているので、陶磁器の焼き物食器とは違ったコレクションとしても楽しめそうですね。

一本の木を思い起こさせる家具【李朝家具】

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韓流ブームが起こったこともあり、韓国の映画や歴史ドラマなどを見かけることが増えました。韓国の王朝時代を舞台にしたドラマなどでは、書き物をするときの低い机や、「卓子」という書物を乗せる本棚のような台、「文匣」という文房具や紙をしまう棚など、生活家具に書斎道具がよく出てきます。そのような、朝鮮王朝時代の生活家具のことを「李朝家具」と呼びます。文芸に携わる人々に愛された貴重な骨董品で、日本人の目利きたちをも魅了したと言われています。

14~20世紀初めまで支配が続いた李王家の時代で、学問や芸術が発展します。その文化を支えたのが両班(ヤンバン)という高級官僚で、彼らが好んで使用していたのが李朝家具でした。李朝家具は優雅で簡素であることが良しとされ、釘を使わない方法で組み立てる技術を使うなど、見えないところに財がつぎ込まれました。

李朝家具の価値や魅力は、その製造段階から見ることができます。材料を同じ素材で統一する家具が一般的な中、李朝家具は色々な種類の木材を適材適所に取り入れて作られています。例えば、重心がのしかかる家具の下部には、木の根元の部位を使用します。この部分は、重い木を支えるため固く締まっているからです。また、材料の接続部分などには、木目の細かい幹の上の部分を使用します。さらに家具の正面にあたる部分には、日光のよく当たる木の南側部分を使用します。

自然の姿に逆らわない組み立て方で作り上げられる李朝家具は、まるでそこに木が立っているかのような、自然なバランスと温かみが感じらる家具なのです。