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暑い季節に飲みたくなる飲み物といえばラムネですよね。ラムネの瓶に入っているビー玉を集めたことがある方は多いのではないでしょうか。ビー玉は不要なガラス瓶を砕いたものが原料となり、工場で大量生産されます。
そんなビー玉とは用途も製造方法も違うガラス製の玉に、「とんぼ玉」というものがあります。とんぼ玉は、ガラス工芸のように職人の方が、ガラス棒をバーナーなどの高温の火にかけて、溶かしながら形や模様を作ります。トンボの目を連想させる形や模様をしており、ビー玉と違って穴が通っています。
とんぼ玉は、太古の時代からお守りや上流階級のアクセサリーとして大事に扱われてきました。古代エジプト時代では「目」をあしらったアイビーズと呼ばれるデザインが邪悪なものを睨み返す力があるとされ、身を守る意味がありました。また、副葬品として高貴な人々が亡くなった時一緒に埋葬されたりと、神秘的な力を持つと信じられてきました。その後シルクロードから中国へ伝わり、伝統的なガラス工芸の技術があったイタリアのベネチアでは、宝石のような価値があるとんぼ玉が製造されるようになります。これは「トレードビーズ(交易玉)」と呼ばれ、宝石や金と交換されました。
日本では江戸時代に大流行し、煙草入れの袋の紐を締めるためや、女性のかんざしや帯留めに使われました。当時のオシャレ小物としてアクセサリーにしたり、組み合わせでコーディネートを楽しみ、オシャレを競い合っていました。しかし、とんぼ玉は贅沢品として幕府に禁止されたこともあるなど、小さいながらも高価な宝石のような存在だったのです。日本独特の四季の風景を表した色彩が使われているものは貴重で、とても高い価値がある場合があります。また、製造の都合上、直線のデザインが一番難しいとされるので、鑑賞の際に参考にしてみると良いでしょう。