書家・中村不折が蒐集した、“書道史”に関する膨大な資料を展示〈書道博物館〉

東京・鶯谷駅を最寄りとする〈書道博物館〉をご存知でしょうか。洋画家であり書家でもあった中村不折(1866-1943)が蒐集した、中国及び日本の書道史研究上重要なコレクションを有する博物館です。

中村不折といえば、夏目漱石の『吾輩は猫である』の挿絵を描いたことでよく知られています。じつは、もっと身近なところにも不折の書が。例えば、あんパンやカレーなどで有名な〈新宿中村屋〉、長野の味噌メーカー〈神州一味噌〉、千代田区の〈筆匠 平安堂〉の看板文字、清酒メーカー〈日本盛〉や〈真澄〉のラベル文字も不折によるもの。

洋画家を目指し、小山正太郎が主宰した画塾「不同舎」へ入門。その後渡ったフランスでは、アカデミーにて人物画を徹底的に学ぶなど、力強い写実主義を確立した不折。帰国後は日本での洋画界の育成にも大きく貢献したことで知られています。

〈書道博物館〉の外観。昭和11年11月に開館した当初の博物館建設に伴う一切の費用も不折が捻出したといいます。

そんな不折が「書」に目覚めることになったのは、日清戦争のなかで従軍記者として中国へ赴いたことがきっかけだといいます。中国や朝鮮半島を巡遊するなかで、六朝楷書を代表する書蹟『龍門二十品』や『淳化閣帖』などの拓本をはじめ、漢字成立の解明に寄与しうる考古資料に触れ、書のおもしろさを知ります。それらを日本に持ち帰り、古典の書から多くを学んだ不折は大胆で斬新な独自の書を展開するに至りました。

膨大な金石文などから、漢字の原形に触れる

〈書道博物館〉の本館には、漢字の書法や文字の歴史をたどるうえでの重要な資料があまた展示されています。

例えば、最古の漢字資料と言われる殷時代の「甲骨文」。亀の甲羅や牛の肩甲骨などに記された文字は、牛・羊・魚といったものの姿をかたどった「象形文字」から、ものの位置を表す「指事文字」、それらの意味を合わせてつくる「会意」や「形声」などからなっています。私たちが日々使う漢字は、これらが原形になっていると思うと興味深いものがあります。

また、中国の三国時代に刻まれ、五経を記した石碑「三体石経」の第三石・第五石の残石も展示。ひとつの字につき、古文・篆書・隷書と3つの書体が刻まれており、その字形は繊細で美しいものです。

ほか、青銅器、玉器、鏡鑑、瓦当、塼、陶瓶、封泥、璽印、石経、墓券、仏像、碑碣、墓誌、文房具、碑拓法帖、経巻文書、文人法書など、重要文化財12点、重要美術品5点を含む東洋美術史上貴重な文化財を目の当たりにすることができます。書関連の美術品も多く取り扱われるサムライオークションなので、参考になるものは多いのではないでしょうか。

本館・展示室の様子。

個人的には、墓への副葬品である「俑」が目を引きました。細い目をした表情豊かな15~20センチ程の小さな陶俑が数個展示されていたのですが、故人への慈悲を思うような優しくて儚げな雰囲気があり、惹かれました。

中村不折と、正岡子規

本館とは別棟の記念館では、年3回入れ替わる企画展も開催されます。7月18日(土) ~9月27日(日)の期間は、今年で開館90周年を迎えるにあたり、書道博物館の名品の一挙公開と、書道博物館の歴史を写真や資料等で紹介する『書道博物館開館90周年記念 中村不折と書道博物館(仮称)』が予定されています。

〈子規庵〉の玄関前。

そして、〈書道博物館〉の目の前には、不折と深い交流があった正岡子規の復元旧宅「子規庵」があります。明治27年から亡くなるまでの8年半を過ごした家で、内部の見学が可能。病床から愛でた糸瓜棚も当時の雰囲気のままあつらわれ、子規が生きていた頃の雰囲気を感じることができるはず。ぜひ文化人的歴史スポットをハシゴしてみてください!

Information

台東区立書道博物館

場所:台東区根岸2-10-4

開館時間:9時30分~16時30分(最終入館は16時まで)

休館日:月曜、年末年始、特別整理期間等

入館料:一般500円、小・中・高校生250円

TEL:03-3872-2645

リンク:書道美術館 公式サイト

子規庵

場所:

開庵時間:10時30分~12時(11時40分までに受付)、13時~16時(15時40分までに受付)

公開日:水・土・日曜、祝日(8月夏季休庵期間、12・1月冬季休庵期間があります。イベントや行事により公開日が変わる場合が有ります)

入庵料:700円、高校生以下無料

TEL:03-3876-8218

リンク:子規庵 公式サイト