【東京開催は6/21まで】作者・語り部・鑑賞者の思いが同空間で交錯する「NHK日曜美術館50年展」

日曜の朝、豊かなアートの世界にいざなってくれるNHKの長寿番組「日曜美術館」。1976年4月の放送開始から50年を迎えた2026年、〈東京藝術大学大学美術館〉にて『NHK日曜美術館50年展』が開催されています。(7月からは静岡県立美術館、大阪中之島美術館と巡回)

サムライオークションのユーザーも「日曜美術館を毎週楽しみにしている」という方は多いのではないでしょうか? かくいう筆者も「日美」の大ファン。先日、ようやく展覧会にお邪魔することができたので、本展の内容を少しだけご紹介したいと思います。

偉大なる巨匠・ピカソの作品からスタートする「第1章」

本展は、2500回を超える放送のなかから、厳選された120点超の名品が5つの章で紹介されています。さらに、番組のゲストたちが語った“時代を超えて響く言葉”も、作品と併せて紹介されています。普遍の名作を、出演者たちはどのような言葉で表現し、紡ぐでしょうか。

第1章「語り継ぐ美」に足を踏み入れてまず目に飛び込んでくるのは、パブロ・ピカソの2つの作品。《ギターのある静物》と《黄色い背景の女》が並んでおり、後者は撮影OKでした。しかし、偉大なる巨匠・ピカソの作品からスタートするなんて! 以降の展示作品への期待も高まります。

パブロ・ピカソ《黄色い背景の女》(1937年/油彩・カンヴァス/東京ステーションギャラリー所蔵)

これまでに幾度かピカソを取り上げてきた同番組。岡本太郎さんや横尾忠則さんがゲストとして登場したようです。その放送での名言として紹介されていたのがこちら。

❝「ピカソを神棚から降ろせ。」――感動したならば、その自分をまた乗り越えなきゃいけない。この言葉は本当に感動したから❞

(岡本太郎)

❝できればあれくらいのエゴイスティックな精神でもって度を過ぎたい❞

(横尾忠則)

世界的にもよく知られる2人の巨匠の、率直で、実直で、羨望のこもるピカソへの思いが、この短い言葉に十二分にあふれていて、初っ端からグッときてしまいました。

ピカソの作品のほか、ルネ・マグリット(言葉:寺山修二、藤子不二雄Ⓐ)、フランシス・ベーコン(言葉:大江健三郎 1980年・2013年)、オディロン・ルドン(言葉:武満徹、唐十郎、田中泯、水木しげる)など、偉大なる作家の作品と、大物ゲストの眼差しによる言葉が交錯。鑑賞する側の作品に対する視野もどんどんと広がっていくようです。

フランシス・ベーコン《スフィンクス―ミュリエル・ベルチャーの肖像》(1979年/油彩、カンヴァス/東京国立近代美術館所蔵)

日美が大切にする「日本美」「工芸」「災い」「創作の現場」

第2章は「日本美の再発見 古代から明治まで」がテーマ。縄文土器で最も有名な《火焔型土器》をはじめ、伊藤若冲の重要文化財である《蓮池図》、曾我蕭白の《柳下鬼女図屏風》、葛飾北斎、歌川国芳、月岡芳年などの作品を展示。

語り部には、モデル・冨永愛さん、舞踏家・大野一雄さん、アーティスト・村上隆さん、漫画家・楳図かずおさん、俳優・井浦新さんなどが言葉を紡ぎます。

《縄文土器 深鉢 火焔型土器》(縄文時代/土製/國學院大學博物館所蔵)

第3章では、日曜美術館が欠かさずこつこつと発信し続けてきた「工芸」作品にフォーカス。正倉院に納められている宝物の忠実な模造復元品から、蒔絵飾箱、友禅着物、本物と見まごうような野菜や生物モチーフの超絶技巧作品などが並びます。

第4章のテーマは「災いと美」。日曜美術館を放送し続けられるか否かという事態に見舞われた“コロナ禍”での経験を経て、古から人間は災いに向き合い、受け止めるために、美が大きな役割を果たしてきたことが改めて浮かび上がったという同番組。「人間はなぜ災いすら美によって表現しようとするのか」という根源的な問いに向き合う内容となっています。

さらには、ピカソの大作《ゲルニカ》を原寸大の高精細映像にて上映。作品の全体像だけでなく、作品の細部まで確認できるような拡大映像も映し出され、実物を眺めるときとは異なる気づきが得られそうです。

香月泰男による3作品。左:《北へ西へ》(1959年)、中央:《青の太陽》(1969年)、右:《〈私の〉地球》(1968年)/いずれも山口県立美術館所蔵

第5章は「作家の生き様と美 ~アトリエ&創作の現場」と題し、番組の「アトリエ訪問」シリーズで紹介されたいくつかの作品を展示。岡本太郎の《遭遇》、舟越桂の彫刻《水に映る月蝕》とそのドローイング、山口晃の《ショッピングモール》など、創作の過程を紹介してきた作品が並びます。

言葉にならないものを表現した美の数々。それらに打ち震え、ときに流麗に、ときに絞り出すように語られた言葉たち。作者、語り部、鑑賞者、さまざまな思いがひとつの空間で交錯し、とても贅沢でユニークな展覧会でした。

東京での開催は6月21日(日)までと、じきに会期終了となります。気になってはいるものの未訪問という方は、終了間際の混雑前にお出かけするのがおすすめです。

Information

NHK日曜美術館50年展

会期:2026年3月28日(土)~6月21日(日)

会場:東京藝術大学大学美術館(東京都台東区上野公園12-8)

開館時間:10時~17時(最終入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜

入館料:一般2000円/高大学生1200円/中学生以下無料、

巡回先:静岡県立美術館:2026年7月18日(土)~9月27日(日)、大阪中之島美術館:2026年10月10日(土)~12月20日(日)

リンク:東京藝術大学大学美術館 公式サイト