
軸、画、古文書、茶道具などなど、さまざまな東洋美術品が出品されるサムライオークション。それらの評価や、価値の決定づけには、落款、賛、銘文などが参考になり、当サイトの出品者やファンの方々も常日頃からそうした文字に親しみ、勉強されていると思います。
そこで今回は、「美術のなかの文字」に触れ、東洋古美術鑑賞により親しみたくなる展覧会をご紹介します!
東洋古美術の名品に触れながら、教養を深める
東京・南青山にある〈根津美術館〉にて、2026年7月12日(日)まで開催されている企画展「はじめての古美術鑑賞 -美術のなかの文字-」。画家の落款、鑑蔵印、賛、詩文や和歌、仏画のなかの文字、文房具や器物に記された銘文、詩歌、吉祥の文字などに注目し、それらがいかに東洋美術において大切であるかを実感できる展覧会です。
まず「絵画のなかの文字」の章は、「落款と鑑蔵印」「賛」「仏画にも文字」「景色のなかの和歌」という4つのテーマに分けられています。
作品の真贋を問う際のヒントになったり、制作時期の推定にも一役買う「落款」。それらの印章のなかには「鑑蔵印」もあり、これは将軍や大名などの所蔵を示す印です。今回展示されていた、伝 牧谿筆の重要文化財《竹雀図》には、右上と左下に「鑑蔵印」が捺されています。

左下は3代将軍・足利義満の蔵を管理した善阿弥の印で、右上は6代将軍・義教の書斎の名の印。これは、将軍家に長く伝えられた美術品であることを物語る証拠となっています。
また、依頼された他人が作品を讃えるために書くことが多い「賛」。なかには、自分で絵を描き、自ら賛を書く「自画自賛」の作品も多く存在します。本展では谷文晁の自画自賛作品も展示。ひとりで獅子舞を踊る人物画に「ひとはいさ われ面しろし 歳の暮」との賛が書かれています。
おなじく「賛」の作品として、画中の茅屋を理想の棲家とみなした12人の禅僧が、自分の心境を漢詩に詠んで書きつけた詩画軸《江天遠意図》も。自分もここに賛を添えられるなら、どんな言葉を書きつけるか――そんな想像をしてみるのも楽しいです。ちなみにこの作品は、伝 周文筆とされる重要文化財。文字にフォーカスした展覧会ながらも、並ぶ作者の名がじつに豪華です。

「仏画にも文字」には、絵仏師・大臨晋城が描き、本展のパンフレットのメインビジュアルとなっている《文字絵十一面観音像》が。想像していたよりも小ぶりな印象の作品でしたが、そのなかには約4750文字の観音経の経文が散りばめられています。じっくり眺めていると、作者の深い信仰心に触れられるようです。

「工芸のなかの文字」の章では、青銅の香炉や鏡、釜や鉢に記された「銘文」をはじめ、蒔絵硯箱、刀鍔、印籠、碗、鉢などの器物に記された文字についての解説も。全展示品を通して、当オークションファンの参考になる情報も多くあるのでは、と感じました。東洋古美術の名品に触れながら、教養を深める充実の時間になるかもしれません。
企画展以外にも、同時開催展の蒔絵のほか、仏教美術、青銅器、茶道具の展示も充実している〈根津美術館〉。6月の眩い新緑の庭園も見どころで、訪れた際は館内をくまなく巡り、楽しんでみてはいかがでしょうか。
Information
企画展「はじめての古美術鑑賞 -美術のなかの文字-」
会期:2026年5月30日(土)~7月12日(日)
会場:根津美術館 展示室1・2(東京都港区南青山6-5-1)
開館時間:10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜
入館料:
オンライン日時指定予約の場合・・・一般1400円、学生(大学生以上)600円
現地にて当日券購入の場合・・・一般1600円、学生(大学生以上)800円
※障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、高校生以下は無料
※学生料金の適用ならびに高校生以下の無料入館の際は、有効な学生証の提示が必要です
※一部作品に展示替え、場面替えがあります
リンク:根津美術館 公式サイト