「昭和の竜宮城」と称された〈目黒雅叙園〉。1935(昭和10)年に建てられ、今なお残る木造建築は、昔と変わらない絢爛さで来場者に大きな驚きと感動をもたらしてくれます。
現在〈ホテル雅叙園東京〉と名称変更された同ホテルでは、今や夏の風物詩となりつつある企画展『和のあかり × 百段階段』が2023年9月24日(日)まで開催されています。
2023年のテーマは「極彩色の百鬼夜行」。東京都指定有形文化財に指定されている「百段階段」の空間を背景に、現代アーティストの作品や伝統工芸品などをダイナミックかつ繊細に展示。幻想的で美しく、かつ妖しい異世界が、階段廊下でつながる7つの部屋で展開されています。
■美しくて妖しい「あかり」と「物の怪」が待ち受ける7つの間
階段を進んだ最初の間「十畝(じっぽ)の間」を鮮やかに彩るのは、粕谷尚弘家元の一葉式いけ花と、中野形染工場が手掛けた越谷籠染灯籠。
鳥居に絡みつく藤蔓、極彩色の花、和洋さまざまな植物と、ゆかたの藍染に使われていた版型をリメイクした灯籠との、あかりのインスタレーションです。日本画家・荒木十畝による天井画と相まった異世界はインパクト大!
続く「漁樵(ぎょしょう)の間」は、今回の一番の見どころと言っていいかもしれません。
まず目に飛び込むのは巨大な柱水晶のオブジェ。そこから発せられるあかりを浴びた広間の精巧な彫刻。漁師、木こり、今回設置された鬼の陰影が妖しく浮かび上がり、異世界に迷い込んでしまったかのような心持ちに。
ちなみにこの水晶は、「エコ活動の芸術性がテーマ」という本間ますみさんのペットボトル作品。接着剤や塗料を一切使用していないというから驚きです。近くで眺めても、水晶の質感、透明感などが巧妙に表現されています。ペットボトルって、こんなにもクリエイティブな可能性を秘めているんですね!
以降も、さまざまなアーティストが広間ごとに趣向を変えて来場者を楽しませてくれます。
そして、美人画家として知られる鏑木清方が天井や小壁の彩色を手掛けた「清方の間」では、「対岸の現世」と題した展示が行われています。
こちらは照明作家・弦間康仁さんの作品。照明から洩れたアルファベットのあかりが、コズミックに空間を彩ります。
この階下にある「星光の間」にはさまざまな工房のガラス作品が並び、水の中をイメージした展示になっていました。そして「清方の間」は、水の底からあがり、岸から見える懐かしい現世のあかりをイメージ。弦間さんの作品に刻まれている文字は、百鬼夜行から免れるための呪文なのだとか。
贅の尽くされた7つの間それぞれに、現代アートのインスタレーションや、温故知新の伝統工芸品などが並び、見ごたえたっぷりの本展。美しく、妖しく、さまざまに変容する「あかり」と、ちょっぴり怖い「物の怪」の共演。時代も次元も超えた、真夏の白昼夢のような時間が過ぎていきました。
〈ホテル雅叙園東京〉の公式サイトでは、グッズがセットになった“オンライン限定”のチケットも販売されています。筆者が購入したのは「妖怪づくし・人面草紙 手ぬぐい付チケット」。各グッズはミュージアムショップでも販売されていましたが、チケットとセットで購入したほうが断然お得です! 気になった方はサイトをチェックしてみてください。
真夏だけの異世界の旅、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?
information
『和のあかり×百段階段2023 ~極彩色の百鬼夜行~』
場所:ホテル雅叙園東京(東京都目黒区下目黒1-8-1「百段階段」)
期間:2023年7月1日(土)~9月24日(日)
開場時間:11時~18時(最終入場 17時30分)
※8月19日(土)は17時まで(最終入場 16時30分)
入場料:大人1500円、学生800円
※グッズ付きのオンライン限定チケットや、レストランのお食事がセットになった特別プランもご用意
サイト:ホテル雅叙園東京 特設サイト
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