東郷青児や岡本太郎の作品も!日本画家による「シュルレアリスム」作品やその変遷に触れる展覧会

「シュルレアリスム」と聞いて頭に思い浮かぶのはどんな画家でしょうか。例えば、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、デ・キリコなどを思い出す方も多いはず。

フランスに起源を持つこの文学・芸術運動は、1920年代後半に海を越えて日本にもたらされ、日本人のシュルレアリストを多く生み出しました。

シュルレアリスムの父と呼ばれるアンドレ・ブルトンが、1924年に『シュルレアリズム宣言』という書物を刊行して100年目となる今年。東京都〈板橋区立美術館〉では、「シュルレアリスムと日本」と題した展覧会が開催されています。

館内を飾る絵画は、日本の画家が描いた作品のみ。1929年に国内で初めて発表されたシュルレアリズム作品から、戦前・戦後と、さまざまな変遷をたどった芸術運動を追って展示。社会的な背景も垣間見える内容となっています。

日本で初めてシュルレアリズム作品を発表したのは、あの画家⁉

1929年の二科展に出品された、国内初とされるシュルレアリスム作品3点が本展で展示されています。作者は、東郷青児、阿部金剛、古賀春江。

東郷青児といえば、多くの人が知る美人画家。ですが、展示作品《超現実派の散歩》は、男性とも女性ともつかない人物が月に手を伸ばすような、いわばシュールな構図で描かれています。フランスから帰国直後の、美人画家と評される以前の東郷の知られざる一面をのぞいた気分。

ちなみに作品タイトルには「超現実派」とありつつも、自身はシュルレアリストと呼ばれることを否定。そこにはどんな思惑があったのでしょうか。興味深いエピソードです。

キャプション:板橋区立美術館の外観

時代に翻弄された、戦前・戦中のシュルレアリストたち

その二科展を機に、シュルレアリズムという芸術運動に注目が集まるようになった日本。1920年代にパリに遊学し、最先端の美術潮流だったシュルレアリズムにも触れた画家・福沢一郎によって本格的に導入されていきます。

ところが、戦争の風潮が色濃くなると、シュルレアリスムの表現は共産主義との関係を疑われる事態に。1941年には、福沢と、詩人でありブルトンの『超現実主義と絵画』の翻訳者でもある瀧口修造が拘束・尋問されたという事件もあったそう。

そんななか、作品を排除してでも、福沢などが立ち上げた会の存続に奔走したという芸術家たち。追い込まれ、揺れながら、自分たちの自由な表現に向き合う画家たちの思いを、彼らの手記などを通して知ることができます。

戦争を経験した、シュルレアリストたちの表現

戦時中は多くの画家も召集され、戦地へ赴くことに。なかには命を落とし、二度と筆を握れなかった人もいたそうです。

一方で、命からがら帰還できた画家たちは、戦地の経験、目にした光景などを作品に反映。捕虜、復員、娼婦といったものをモチーフにしたシュルレアリズム作品も本展で目にすることができます。

そのなかのひとり・山下菊二は、中国戦線から帰還後、自らの加害者意識や、社会の暗部と向き合い続けるための過酷な創作活動を続けたといいます。本展に展示されている《新ニッポン物語》では、アメリカの支配下にある日本への強烈な風刺、倒錯した明るさなどを表現。獣、有刺鉄線、いくつものストリートプレートなどが組み合わさり、混沌・欲望・おぞましさといったものがあふれています。決して心地いい雰囲気ではありませんが、戦争を経験したことで向き合わざるを得なかった表現なのかもしれません。

ほかにも、岡本太郎、浜田知明、三岸好太郎、植田正治(写真作品)などの作品のほか、JAN、アニマ、表現、動向、貌(ぼう)、デ・ザミなど、シュルレアリスム隆盛期に誕生したさまざまな美術グループやその会報の展示も。日本におけるシュルレアリスムの変遷をたどる本展、興味深く感じるものがきっとあるはずです。

2024年4月27日(土)からは〈東京都美術館〉で「デ・キリコ展」もスタートします。さまざまな角度からシュルレアリスムに触れられる1年になりそうです。

Information

『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本

会期:2024年3月2日(土)〜4月14日(日)

開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)

休館日:月曜

観覧料:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円

※土曜は小中高校生は無料

※65歳以上・障がい者割引あり(要証明書)

※当館でのお支払いは全て現金のみ

リンク:板橋区立美術館 公式サイト