【江戸に華やぐヴェネチアの「粋」に酔う「彩のガラス達 魅惑の世界」を〈東京芝 とうふ屋うかい〉で開催中】

東京タワーの麓に佇むとうふ会席料理店〈東京 芝 とうふ屋うかい〉。2023年12月20日(火)~2023年3月26日(日)の期間、同店内にて「彩のガラスたち 魅惑の世界 ―江戸に華やぐヴェネチアの『粋』―」と題したヴェネチアン・グラスの展示・販売会が行なわれています。 うかいグループが運営する〈箱根ガラスの森美術館〉のバイヤーがセレクトした、イタリア・ヴェネチアの名匠による希少価値の高い商品をさまざまに堪能できるとあり、先日〈東京 芝 とうふ屋うかい〉へお邪魔してきました。

と、ヴェネチアン・グラスの話の前に。

〈東京 芝 とうふ屋うかい〉を初めて訪れた私は、「本当にここは東京なのだろうか……?」とうろたえるほど、喧噪とは無縁の、まさに非日常という言葉がピタリと当てはまる空間に圧倒されてしまいました。

約2000坪の敷地を有する同店。長屋門をくぐって石畳を進み、庭師さんが毎日手を掛けているであろう美しい日本庭園に心を奪われながら店舗へ。

庭園ではさまざまな和の草木が枝葉を揺らしており、その彩りや配置は、花の時期、紅葉期、冬枯れ期などを徹底的に考慮したものであることは明らか。店舗に入る前から、創設者の並々ならぬこだわりや美への探求を感じ、ヴェネチアン・グラスの展示はもちろん、建造物や館内の設えにも期待は膨らむ一方でした。 さて、今回の訪問はヴェネチアン・グラスの鑑賞が目的。食事の予定の無い私が入店してよいのか少し不安でしたが、フロントの方はほかのお客様と分け隔てなくにこやかに案内してくださり、そのホスピタリティも感動ものです。

さて、本題の「彩のガラスたち 魅惑の世界」!

フロント横に設けられた特選ギャラリーには、さまざまなスタイルの優美なガラス作品がずらり。本展では主に、ヴェネチアン・グラスの3大技法とされる「ミルフィオリ」「レースガラス」「ハンドワーク」が展示されています。 なかでも、個人的に印象深かったのが「レースガラス」。

ヴェネチア発祥という説があるレースの編み物(諸説あり)。これに着想を得て編み出されたレースガラスは、かつての王侯貴族がこぞって買い集めた、ヴェネチアンガラスの代名詞です。

今回展示されているレースガラスは、1400年代から脈々と技術を継承し、ヴェネチア共和国より貴族の称号を下賜された名工「バラリン工房」の作品。繊細なレース模様と優美な姿のガラスは、レースの折り重なる白いドレスを纏った貴婦人を思わせる、なんともいえない高潔さを放っていました。この技術を編み出した職人、それらを継承してきた職人へ、心から敬意を表したくなる、そんな作品たち。すっかり魅了されてしまいました。 じつは後継者不足により、バラリン工房は2020年に閉鎖。現存する作品は今後価値が上がっていくかもしれません。

期間中は〈箱根ガラスの森美術館〉のスタッフが在廊し、さまざまな話を伺うことができます。なかでも興味深かったのは、ヴェネチアン・グラスの発展にまつわる歴史的背景の話でした。

ヴェネチア共和国というひとつの国家が形成されていた時代、ガラス産業のさらなる発展と、高度な技術の流出を防ぐため、ヴェネチア本島の北東に位置する「ムラーノ島」という小さな島に、ガラス製造にかかわる人々を強制移住させ、幽閉。「島外に脱出する者には死罪を課す」という厳しい法令をしいたといいます。国家繁栄のためとはいえ、なんとも自由度のない、窮屈な掟……。死を覚悟して逃げ出す職人もいたのだとか。

一方で、小豆島ほどの小さな島のなかに工房が密集したことで、それぞれの匠が切磋琢磨し、高度なガラス工芸技法が確立され、世界に名を馳せる地域ブランドが生まれたのも事実です。

ちなみに、潟(かた)の上に築かれたヴェネチア。そんな場所にガラスの原料となる珪砂やソーダ石灰があるとは思えませんよね。なぜ、水の都でガラス製造が盛んになったのか? そんな歴史的背景も、スタッフの方が教えてくださいます。

作品が展示されている特選ギャラリーの一画には、日本庭園を眺める目的で設えられた三つの間があり、ここにヴェネチアン・グラス作品が多く展示されています。

意匠のある建具を取り入れた趣きのある書院造の間と、ガラス襖から覗く日本庭園。そこに西洋の優美なガラス作品が並ぶさまは、かつて南蛮貿易で栄えた商人の邸宅や貴賓室はこんなふうだったのではないか……と想像を巡らせたくなる趣きです。 かつての江戸の町は、網目のように水路が巡らされ「東洋のヴェネチア」と呼ばれていました。そんな共通点にも思いを馳せながら、ヴェネチアン・グラスの輝きと、古きよき日本の風情、こだわりを貫くうかいのお料理、スタッフの心づくしのホスピタリティに酔いしれてみてはいかがでしょうか。

《Information》

「彩のガラスたち 魅惑の世界 ―江戸に華やぐヴェネチアの『粋』―」

場所:東京 芝 とうふ屋うかい(東京都港区芝公園4-4-13)

会期:2022年12月20日(火)~2023年3月26日(日)

営業時間:平日 11:45~15:00(14:30 L.O.)|17:00~22:00(19:00 L.O.)

     土日祝 11:00~22:00(19:00 L.O.)

TEL:03-3436-1028 リンク:東京 芝 とうふ屋うかい 公式サイト

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