【誰が何を書いているのか《書を楽しむ》】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

先日、将棋の藤井聡太二冠が王位戦で書いた『封じ手』がオークションに出品されました。その金額は2局分2通で総額2050万1000円。興味深いのが、将棋ファンの間でもその価値について、意見が分かれていることです。

王位奪取を決めた第4局の封じ手は1500万円で落札。その1手の大胆さもあって高値がついたのですが、第2局分を550万1000円で落札した人物は取材に答えて『藤井棋士の初めての封じ手』だから、自分は一番価値があると思って落札したと話していました。

確かにセオリー通り考えれば、どのようなジャンルのオークションでも『初』にまつわる出品は高値が付きます。しかし、今回はその封じ手の物語性に、より強い魅力を感じたファンが多かったということでしょう。

この『封じ手』のようなオークション出品の場合、その価値を決めるのは紛れもなく入札者の思い入れ。まだ若い藤井二冠ゆえに、今後の活躍次第でその価値はさらに上がってゆく可能性はありますが、古美術品などに比べればマーケットは狭いでしょうから、投資目的で入札する人は少ないと思います。

自分の思い入れに従って、お財布の範囲内で入札するというのが、一般人のオークションの楽しみ方。そんな王道の楽しみ方がしやすい作品ジャンルに『書』があります。

書は、《誰が》《何を》《どのように》書いたのかを楽しむものです。歴史上の偉人など《誰が》に強くこだわりを持つ方もいるでしょうし、その見た目の表現《どのように》に惹かれる方も多いと思いますが、結局のところ書の評価は『主観』によるところが大きくなります。

つまり、その作品を評価する人がどのような価値観を持っているか、その人にとってその書かれた言葉がどのような意味を持つか、といった鑑賞者の思い入れによって、その価値は大きく変わります。それゆえに、万人にとって共通の客観的な価値をつけることが難しく、それが商業オークションで作品が売買されにくくなってしまうひとつの理由だと思います。

ですが、だからこそ他人の評価を気にせずに、自分の価値観・思い入れによって値段をつけて入札すれば良いのです。そこには失敗という概念はありません。歴史を学んで憧れの人物ができたなら、その人物がしたためた《書》が市場に流通していれば、入札にチャレンジしてみましょう! もしもそんな《書》が身近にあったなら、きっとあなたの毎日に少しの力を与えてくれるはずです。

現在、サムライオークションには、歴史上の偉人が残した『書』が多数公開されています。
《『書』での検索結果・作品はこちらです》

時間のある時にぜひご覧ください。

贋作に価値は無いのか?

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの井戸です。

2020年5月26日のブログにも同じテーマの内容のブログがありますが、私なりに記事を書いてみました。

美術品に付きまとう問題のひとつに贋作があります。贋作とは偽物という意味です。手に入れたものが贋作だったらがっかりしてしまうかもしれません。しかし美術の世界では、見る人の目を唸らせる程の贋作に対して、その技術に高い値がつけられることも少なくありません。

そんな贋作を通じて映し出される人間模様を描いた、『嘘八百』という骨董品がテーマのコメディ映画があります。イカサマ古物商の小池則夫と、落ちぶれた天才陶芸家の野田佐輔の二人は、大手美術商に騙された共通の過去を持ちます。意気投合した二人が各分野のスペシャリストを率い、「幻の千利休の茶器」の贋作を作り出して大手美術商への復讐劇を企てる、というお話です。

物語の結末は映画を観ていただくとして、贋作のように「真似をすること」を芸術家はどのように考えるのでしょうか。ピカソは「凡人は模倣し天才は盗む」という言葉を残しました。サルバドール・ダリは「何も真似したくないと思う者は、何も生み出さない」という言葉を残しました。人は真似をすることで学び、それを活かして成長していくというメッセージです。

美術品を見るとき、偽物に騙されたくないと変に力が入っていませんか?本物と見分けがつかないほど似せられた作品にも、背景には深い物語があるかもしれません。その人にとって精神的な価値があれば、それは良作だと言えるでしょう。製造から人の手に渡るまでのストーリーによっては、本物を超える価値にもなり得るのです。

映画の中で、小池則夫が贋作の茶器でカフェオレを飲みながら「カフェオレが映えない」と野田佐輔にボヤき、ニヤニヤしながら飲むシーンがあります。二人の物語が始まる場面に居合わせた贋作です。ひとつの骨董品をこんな風に楽しむことができれば最高ですね。

※もちろん当社としては、贋作を容認したりオススメしているわけではありませんので、あしからずご了承くださいませ

【この秋は、骨董市に行ってみませんか?】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

もともと集団で生活するように最適化され、進化してきた人間にとって、人との接触を制限されることは、多くの人にとってしんどいことだと思います。ただ、まだまだ油断はできないとはいえ、新型感染症もある程度の落ち着きをみせてきています。

誰かと出会うこと、触れ合うことで人は成長します。刺激を受け、気づき、考えることがとても大切。骨董や美術にも同様の効果がありますね。全く知らなかった作家や作品に出会い、何かを感じて好きになる、そんな瞬間が大好きです。

サムライオークションはネットオークションなので、コロナ禍でのネット閲覧推進をもっとPRするべきなのでしょうが、今回は大江戸骨董市のご紹介をします。

春先からずっとお休みだった大江戸骨董市は、10月4日(第1日曜日)・18日(第3日曜日)に東京国際フォーラムにて開催予定です。新型コロナ感染症の状況によっては、中止になることもあると思いますので、事前に以下のサイトより、情報をご確認ください。

《大江戸骨董市・公式ホームページ》

骨董ファンの方でしたら、ご存知の方も多いかもしれませんが、大江戸骨董市は、〈有楽町・東京国際フォーラム〉と〈原宿・代々木公園ケヤキ並木※8月現在、次回開催日程は未定〉で開催されているアウトドア骨董市です。

日本最大規模とうたわれているように会場が広く、なんと言っても屋外なので、参加者が最低限のマナーとしてマスク着用で感染防止に努めていれば、それほど感染の心配もしなくて済むと思います。

出店数は約250店舗、一見フリーマーケットのように見えるお店もありますが、出店資格は〈古物商許可証〉取得者なので、身元は確かな方ばかりです。陶磁器、版画、軸物、道具類、などなど、あらゆるものがありますし、陳列も個性豊かでユニーク。初心者の方に最適だと思います。お時間があれば、ぜひ足を運んでみてください。 気になる作家や作品と出会った時には、サムライオークションでも検索してみてくださいね!

【《長楽無極》誰もが憧れる心持ち】

こんにちは!《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

休日は外出を控えていますし、テレワークも多くなり、自宅で過ごす時間が増えています。猛暑も続いています。無自覚でもストレスは溜まっているのでしょうね。少し心がささくれている気がします。

そこで、書を表してみました! まず、何を書くか悩みました。まあ、アレコレと書いてはみたのですが、こちらでご紹介する言葉は何にしようかなと…。お手本を見ながら、練習すること1時間です。『泰然自若』『大器晩成』『悠々自適』…。今の気分にしっくりくる言葉を探しながら、筆をふるっているうちに、だんだん楽しくなってきました。

書も絵画も、さまざまなスタイルがあり、多くの巨匠がいて、お手本にするのは良いと思うのですが、お手本の通りに書ければ正解というものではなく、要は自分が気に入った絵が、文字が、表現できれば満足、ハッピーということですね。そんなことに改めて気づきました。そこで、公開作品は『長楽無極(ちょうらくむきょく)』にしました。楽しみが限りなく続くこと、極まることがない楽しみ、という意味ですね。

嫌いなことを無理に『楽しい』と思うことは、できないのです。ただ、はじめは楽しくなくても、一生懸命やっているうちに、楽しくなってくることはあります。仕事が典型ですね。気分が乗らなくても、とにかく数分でもいいから集中してみる、頑張ってみる、そこから気持ちが乗ってくる、ということもあります。いつもうまくいくわけではありませんが(^_^;)。

ちなみに、龍のすずりは、栃木の骨董市で落札したものです。古いもののようですが、それほど使い込まれているようでもなく、以前の持ち主の方はどんな方だったのだろうと、いつも考えてしまいます。モノを通じて、見知らぬ人とつながることができるのも、骨董の楽しみのひとつですね。

サムライオークションには、骨董の各種道具類も取り扱っています。時間のある時にぜひご覧ください。

【利用されてこその文化施設】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの利休です。

これまでの人生で、思わず叫んでしまうほど感動したライブシーンが2回あります。1回目は1995年、野茂英雄のMLBデビュー戦。ドジャーブルーのユニフォームの野茂投手がマウンドに上がった時、なぜか涙が出てきました。2回目は1998年、中田英寿が2ゴールを上げたセリエAでのデビュー戦です。それほど熱心なファンではない自分があれほど感動したのですから、多くの国民に対して少なからず影響はあったのだと思います。

文化庁は先日、金沢市に移転する東京国立近代美術館工芸館(国立工芸館)を10月に開館すると発表しました。名誉館長には、中田英寿氏が就任。国立工芸館は日本で唯一の工芸専門の美術館。陶磁器やガラス、漆器、木工など、約1900点の作品を金沢市に移すそうです。

また政府はこの8月、文化施設を拠点とした観光振興のための『地域文化観光推進法』に基づいて、支援対象となる全国10地域を初めて認定しました。海外への情報発信や、施設の利便性向上などを幅広く支援するそうです。

今回認定されたのは、秋田県の『増田まんが美術館』、福井県の『一乗谷朝倉氏遺跡』、愛知県の『徳川美術館』など。税金の使い方ですから、賛否両論はあると思います。それでも、文化施設は人々に利用されてこそ、はじめて意味をなします。影響力のある人がPRしたり、ノウハウのある人が持続性のある運営をサポートするのはとても有効です。

景気が悪くなり、経済的な余裕がなくなると、人々の文化的な活動は急速に停滞してしまいます。ましてや感染症拡大防止策として、美術館などは長らく閉館し、その経営や運営についても問題にされることが増えています。文化財の公開、美術館の運営ノウハウとコスト、そして経営と、いくつもの難しい課題が複合的に存在し、日本の文化度のレベルをそれなりに形成しています。

コロナ禍が落ちついた後、国からの助成がなくなり、財源不足になった時、広く日本の美術業界には、危機的な状況がくるのかもしれません。アーティストを育てるのと同様に、文化財の保護にも、ある種のパトロン的な存在が必要になるような気がします。ネサンス期のメディチ系や日本の松方幸次郎(1866〜1950年)、薩摩治郎八(1901〜1976年)などのような、太っ腹の起業家の出現に期待したいところです。

サムライオークションもまだ大きなことは言えませんが、皆さまの美術鑑賞のお手伝いを通じて、日本の文化度向上に少しでも貢献していきたいと思っています。

お湯を沸かすだけなのに、特別な存在感【鉄瓶】

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

お茶やコーヒー、料理など、お湯は毎日の生活に欠かせません。健康に気を遣って、白湯を飲むことを習慣にしている方もいらっしゃるかもしれません。お湯を沸かすための道具は色々なものがありますが、過去百年から二百年にわたって広く普及した「鉄瓶」に注目してみたいと思います。

江戸時代、岩手県盛岡市の周辺でよく取れる砂鉄を使った製品が多く作られていました。同じ頃、煎茶の登場がきっかけでお茶が手軽に楽しめるようになります。そこで、使いやすい湯沸かしの道具が必要になり、日本の茶道で用いられる茶の湯釜を小さくして、取っ手と注ぎ口をつけるというアイデアから「鉄瓶」が誕生し、たちまち全国へ広がります。

鉄瓶は丈夫で長く使われやすく、広く普及して種類も多いので、保存状態は気にしなければいけませんが、比較的見つけやすい骨董品かもしれません。戦前にはどの家庭にも一つはあったもので、古い鉄瓶は今では大変貴重なものとなっています。

査定や鑑賞で確認しておきたいポイントとして、「鉄瓶のつまみ」があります。「象牙」や「翡翠(ひすい)」が使われている場合、富裕層が財をつぎ込んで作らせた「嗜好品」である可能性が高く、「希少性」と「芸術性」から高価値になりやすいとされています。「つまみ」や「取っ手」は作者の遊び心やこだわりがよく反映されるので、よく観察してみましょう。また、鉄瓶の内部に白っぽいものがある場合、それは水に含まれるカルシウムが付着したものになります。カルシウムは赤錆を防ぎ、お湯の味を良くするものなので、必ずしも価値が落ちるものではなく、こすって落とす必要はありません。 重厚な存在感を持つ鉄瓶を生活に取り入れると、お湯を沸かすだけで特別な儀式を行っているような、厳かな気持ちになれそうです。

意外な価値があるかもしれない陶磁器「盆器」

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

最近は日本だけではなく、海外でも緑のアートとして盆栽が人気です。欧米では「BONSAI」という表記で認知されるようになりました。年配の方の趣味のように思われることが多いですが、モダンなインテリアとして若い世代にも受け入れられてきています。

盆栽の始まりは中国で、お盆の中に石と共に花や木を並べて山水を再現するというものでした。日本では平安時代に広がり始め、貴族が趣味として楽しみました。盆栽を本格的に楽しむには、背景に広がる景色や四季までを想像するという心構えが必要とも言われています。

盆栽は木にばかり注目が集まりがちですが、鉢もまた木と共に育てていくものです。時間が経つほど味が出てくるため、木やテーマに合った選び方が重要になってきます。近年では盆栽鉢は「盆器」とも呼ばれ、美術品として扱われる場面も少なくありません。中国清の時代に長江の泥で作った鉢には、数千万円の値が付くこともあるそうです。

盆栽鉢作家でもっとも有名な鉢職人といえば、平安東福寺です。その生涯は貧しく、他人の窯を借りて鉢を焼き続けたそうです。素朴で控えめなデザインが特徴的で、当時はあまり見向きもされませんでしたが、死後10年ほど経ってから価値が見直されてきました。

海外でのブームが広がるにつれて、今後「盆器」の価値も上がっていくのでしょうか。奇抜な配色やオシャレな形をしているものも多く、雨風に耐える強度が必要で丈夫な作りになっているので、陶磁器の焼き物食器とは違ったコレクションとしても楽しめそうですね。

一本の木を思い起こさせる家具【李朝家具】

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

韓流ブームが起こったこともあり、韓国の映画や歴史ドラマなどを見かけることが増えました。韓国の王朝時代を舞台にしたドラマなどでは、書き物をするときの低い机や、「卓子」という書物を乗せる本棚のような台、「文匣」という文房具や紙をしまう棚など、生活家具に書斎道具がよく出てきます。そのような、朝鮮王朝時代の生活家具のことを「李朝家具」と呼びます。文芸に携わる人々に愛された貴重な骨董品で、日本人の目利きたちをも魅了したと言われています。

14~20世紀初めまで支配が続いた李王家の時代で、学問や芸術が発展します。その文化を支えたのが両班(ヤンバン)という高級官僚で、彼らが好んで使用していたのが李朝家具でした。李朝家具は優雅で簡素であることが良しとされ、釘を使わない方法で組み立てる技術を使うなど、見えないところに財がつぎ込まれました。

李朝家具の価値や魅力は、その製造段階から見ることができます。材料を同じ素材で統一する家具が一般的な中、李朝家具は色々な種類の木材を適材適所に取り入れて作られています。例えば、重心がのしかかる家具の下部には、木の根元の部位を使用します。この部分は、重い木を支えるため固く締まっているからです。また、材料の接続部分などには、木目の細かい幹の上の部分を使用します。さらに家具の正面にあたる部分には、日光のよく当たる木の南側部分を使用します。

自然の姿に逆らわない組み立て方で作り上げられる李朝家具は、まるでそこに木が立っているかのような、自然なバランスと温かみが感じらる家具なのです。

金魚は縁起物

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

夏の風物詩といえば金魚すくいですね。

金魚は、長い年月をかけて品種改良される「生きた芸術品」や「動く彫刻」などとも呼ばれます。「金」運をもたらす「魚」として人気で、癒やし系の存在でもあり、昔から庶民にも親しまれてきました。

そんな金魚を心から愛した陶芸家が「宇野仁松」という人物です。20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチに陶芸の手ほどきをしたこともある陶芸家で、焼き物で稼いだお金の大部分を金魚につぎ込み「宇野系らんちゅう」という品種をも生み出しました。

ガラスの鉢が無かった時代では、金魚は陶器の器に入れて上から鑑賞するものでした。そのデザインは様々で、ツボのような大きいものだったり、平べったいフリスビーのような底の浅い丸いものだったり、ユニークな形をした金魚鉢が出回ります。

ガラス製品が普及してくると、「金魚玉」と呼ばれる風鈴やヨーヨーのような、手のひらサイズの透明なガラス玉に金魚を入れて吊るして鑑賞することもありました。金魚を手に入れて移動する際の手頃な入れ物がなかったため、水が漏れないガラス製の玉が重宝されたのです。

江戸時代頃には、日常の様々な生活道具に金魚を描いたものをよく見かけるようになってきます。うちわ、小物、着物の柄、食器だったり、屏風一面に金魚が描かれたものをインテリアとして飾って涼しさを演出しました。このように、金魚が描かれている骨董品はたくさん見つけることができると思います。

骨董も金魚も好きという方であれば、コレクションしやすいひとつのジャンルであると言えます。金魚を描いた骨董品は縁起も良く人気があるので、ぜひチェックしてみてください。

アーティストが集まったカフェ「ル・セレクト」

こんにちは!《美術品・骨董品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフ井戸です。

文学にしても美術・芸術にしても、作品の創作というものは、作家自信が精神を削るような孤独な作業の果てに生み出されるものです。では、作家たちは社会との接点が無く、自分の世界の殻に篭もってばかりいるのでしょうか。世の中を俯瞰して見る客観的な冷静さと、自分の中に湧き上がる感情をぶつける熱量の両方が必要な芸術家たちは、孤独な時間以外にどのように社交性を磨いていたのでしょう。

その様子を映画の中に再現した「ミッドナイト・イン・パリ」という映画があります。有名なアーティストたちが、熱い語らいの中から社交を楽しみ、芸術について意見を交わしている様子が描かれています。たとえば、ヘミングウェイとピカソ。ヘミングウェイは、独特でシンプルな文体で20世紀の文学界に大きな影響を与えた人物。ピカソはご存知の通り、20世紀最大の芸術家ですね。「ル・セレクト(Le Select)」という、映画にも登場した1924年創業の歴史あるカフェには、ヘミングウェイが座っていた椅子が今もカウンターにあります。そして奥の席はピカソの指定席だったといいます。カフェでの会話を通じて、二人は交友関係を深めていきました。 ヘミングウェイはとても強い倫理基準を持っていました。第2次世界大戦を取材したり、終戦間際のパリ解放に立ち会って、旧友であるピカソとの再会を喜びあったと言われています。ピカソは、「芸術作品は飾るためではなく戦うためにある」という言葉を残しています。反戦や抵抗のシンボルとなった「ゲルニカ」はあまりにも有名です。二人はそれぞれ表現の分野は違いましたが、交友の中でお互いの価値観を確かめ合い、創作意欲を高めていったのかもしれません。