【風呂敷ブームで思い出す《クリスト》の梱包アート】

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レジ袋有料化で、風呂敷が密かに人気のようです。学生時代、なぜか風呂敷を使っていた事がありました。はっきり言って、とても便利です。今は生地や柄も選択の余地が広がって、ブームもうなずけます。

今年5月、現代美術家のクリスト(1935〜2020年)が亡くなりました。歴史的な建造物や自然や公園の風景をラッピングする作品は、常に大きな話題となって、世界を騒がせました。オーストラリアの海岸やパリのセーヌ川にかかるポンヌフ橋、ドイツの国会議事堂などなど、今調べてみてもよく実現できたなぁという印象のものばかりです。日本でも1991年に茨城県常陸太田市で巨大な青い傘を立てる《アンブレラ》プロジェクトが行われています。

このような巨大な構造物や自然をラッピングする行為が、なぜアートになるのか、美術評論家のような専門家の間でも、議論の対立があったように記憶していますし、私自身ももちろんよくわからず、アーチストというよりも、何かビッグイベントのプロモーターのような印象さえ持っていました。

しかし、2016年に水戸芸術館で行われた作品回顧展などを見ると、作品の舞台となる理想的な土地を探して日本全国を探した話や細かい設置場所などについて解説があり、当然ですが明確な意図を持って巨大な傘を1340本立てていることがわかります。茨城県の山間地の谷間にならぶ巨大な傘は、壮観なだけではなく、日本に住む人間の社会を想起させる力があります。 歴史的建造物を包む行為も、鑑賞者に新しい視点を与え、その建物を包む意味を考えさせることで、人間の営みやその本質に気づかせてくれます。新しい視座の提供、物事の本質の啓示というような意味で、まさしくクリストにしかできない、唯一無二のアートなのだと思います。

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