水墨山水に込められた物語

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水墨山水とは

「山水」とは、山や川などの自然の景色のことです。つまり、墨で表現された自然の風景画のことを「水墨山水」と呼びます。9世紀頃の中国で墨の技術が向上し、墨だけで表現豊かな描画ができるようになったことで誕生しました。その後、禅の教えと共に日本へ伝わったと言われています。

物語を想像して楽しむ

掛け軸のような縦に長い水墨山水は、下から上へなぞるように見ていくことで時間の流れを想像することができます。水墨山水は、下から「近景」「中景」「遠景」と分かれており、近くから遠くへ歩いて行ける景色のような構図になっているからです。このように距離を感じることで、絵の中に吸い込まれていく気分を味わうことができるでしょう。

また、息を飲むような広大な自然の風景の中に、小さく人物が描かれている作品も多く存在します。それは決して風景の一部の飾りとして描かれているのではなく、人の内面や人生そのものを表現しようとしている作者からのメッセージが伝わってくると思います。たとえば「山」は世間から離れた安寧の場所を意味します。「老人」は作者自身、その老人が住む「小屋」は作者がひっそりと余生を過ごす場所を表現していたりします。険しい「山道」は生きることの過酷さだったり、川にかかった「橋」は自分を訪れてくれる友人がいることを表していることがあります。 このように、水墨山水はただの風景画ではなく、自分を物語の主人公に見立てて空想することができる芸術と言えます。作者のメッセージが凝縮されたモノトーンの世界から、物語を想像して楽しんでみてはいかがでしょうか。

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