【サムライのおしゃれに“隙”なし!武家文化で育まれた美意識やこだわりを見るコレクション展】

東京・丸の内にある〈静嘉堂文庫美術館〉では、2023年7月30日(日)まで『サムライのおしゃれ ―印籠・刀装具・風俗画―』と題した展覧会が開催されています。

三菱財閥を興した岩崎家が収集した膨大なる古美術コレクションの中から、武家文化の日常生活のなかで育まれたサムライの美しい装身具、工芸品、風俗画などを精選して展示。国宝や重要文化財をふくめた珠玉の品が並ぶほか、「サムライのおしゃれ」というユニークなテーマでも話題を呼んでいます。

サムライたちは日々どのようなおしゃれを楽しんでいたのでしょうか? 粋なファッションに触れるべく、お邪魔してきました。

■第1章 サムライのおしゃれ

4つの章に分かれている本展。まず第1章の展示ルームに足を踏み入れると、明治初期に複製された『蒙古襲来絵巻 摸本 巻二』が展示されています。

鎌倉時代に起こったモンゴル帝国による日本侵攻。その際の、筑前国・生の松原に築かれた石築地の前を進む竹崎季長(たけさき・すえなが)の一党が描かれた絵巻です。

武士集団が身につけている甲冑は色とりどり。特に季長の甲冑は威風堂々たる朱の武具で、馬の鞍にはなんと「虎の毛皮」が敷かれています。トップに立つ者は、自身の甲冑だけでなく馬の装具にも余念がないのですね。

また同章では、武士であり、政治家・実業家としても知られる後藤象二郎が、英国ヴィクトリア女王から拝領した「サーベル」も初公開されています。

1868年に明治天皇に謁見予定の英国公使ハリー・パークスらは、2人の攘夷派志士に襲撃を受けますが、護衛を担当した土佐藩士・後藤象二郎と、薩摩藩士・中井弘は、志士らを討ち取ります。その感謝の印として英国から贈られたのがこのサーベルです。

長年行方不明とされていましたが、近年静嘉堂内で発見。刀身の中央には後藤象二郎の名前と、事件の日付も刻まれています。

■第2章 将軍・大名が好んだ印籠

岩崎弥之助がコレクションした印籠40点がずらりと並ぶ第2章。四季の自然、花鳥風月、故事人物などのモチーフを、蒔絵、彫金、螺鈿、象牙、奇石、堆朱などによって精緻に盛り込んだ印籠は溜息ものでした。

印籠に付随する根付との組み合わせによる世界感も見ものです。風流なもの、滑稽でおかしみのあるもの……きっとそのコーディネートにもサムライの“粋”が問われたのでしょう。

大名や将軍、さらには天皇まで蒐集を楽しんだという印籠。お抱えの印籠蒔絵師までいたというから、相当な熱の入れようです。

ちなみに、印籠のそもそもの目的は「常備薬を入れるケース」。一見すればなんてことない小物ですが、いつしかおしゃれを競い合うおしゃれ必需品へ変化したという、ものの価値の変容にも不思議なおもしろさを感じた章でした。

■あの『曜変天目』の展示も! 国宝や重要文化財も楽しめる第3・4章

さまざまな衣装をまとった市井の人々が行きかう『四条河原遊楽図屏風』が展示されている第3章。この二曲一双には、ファッションリーダーであった歌舞伎者、大小の拵(こしらえ)を下げる武士、踊る遊女たち、若衆など、280人前後が描かれているといいます。眺めていると、人々のざわめきが聞こえてくるよう。

第4章では、重要文化財の『羯鼓催花紅葉賀図密陀絵屏風』や、世界に3椀しか存在しないという国宝『曜変天目』、岩崎弥之助がロンドンを訪問した際に購入したという『銀懐中時計』などの展示も。

今回の展示で感じたのは、サムライのおしゃれに“隙”なし、ということ。服装、髪型、拵、小物など、細部の細部までコーディネートに余念がない武士たちのこだわりを見せつけられました。

ちょっとユニークなテーマの本展、ぜひ足を運んでみては?

Information

『サムライのおしゃれ ―印籠・刀装具・風俗画―』

会場:静嘉堂文庫美術館(東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F)

会期:2023年6月17日(土)~7月30日(日)

休館日:月曜日、7月18日(火)(7月17日(祝)は開館)

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)、金曜は18時(入館は17時30分)まで

観覧料:一般1500円、大高生1000円、障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む)700円、中学生以下 無料 TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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