“植物分類学の父”と呼ばれる植物学者・牧野富太郎博士の生涯をユーモラスに描く、NHK朝の連続テレビ小説『らんまん』を毎朝楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。かくいう私もそのひとり。
ドラマのモデルとなった牧野博士は、大正15年~昭和32年に逝去するまでの約30年間、東京都練馬区の大泉で過ごしました。その居住地が〈練馬区立 牧野記念庭園〉として無料公開されているのをご存じでしょうか?
博士愛用のさまざまな道具、執筆した書物、描いた植物図などを展示した「常設展示室」や、年に3~4回展示内容を入れ替える「企画展示室」と、博士の遺品や関連資料が展示された記念館になっています。
生涯のなかで発見・命名した植物は1500種にも及ぶという、日本の植物分類学の礎を築いた博士の偉業に触れたいと、〈牧野記念庭園〉にお邪魔してきました。
門をくぐると、さまざまな植物が青々と茂った庭園が広がっています。高・中・低木、さまざまな山野草、シダ類が植栽され、各植物には和名の名札がつけられています。
研究用にと設けられたスペースなのか、3画に分けられた見本園も。ここにはドラマのオープニング曲の一番最初に映し出される黄色い花「ジョウロウホトトギス」が植えられていました。
現在はまだ蕾もついていませんが、10月の開花期に訪れれば、しおらしく俯く貴婦人のような黄色い花に出会えるかもしれません。
園内には博士が名付けた植物も多々。彼の研究を支えた妻・壽衛(すえ)さんの名をとった「スエコザサ」も、博士が詠んだ句と一緒に植栽されています。
さて、庭園をぐるりと巡ったら「常設展示室」へ。ここには、博士の生涯とその解説、愛用していたさまざまな道具類が展示されています。
19歳で初めて上京した際に買い求めた顕微鏡も。ドラマでも描かれていましたが、実話だったんですね!
画力にも恵まれていた博士。植物画を描く際に使用していた絵筆も展示されています。どうやら蒔絵職人が使う極細筆「根朱筆(ねじふで)」を愛用していた様子。
さらに、博士の落款印も展示されていました。自身で作印したもののほか、数多くの書画を残した僧侶・一路居士(いちろこじ)による印も。
下の写真の一番右にある、ひらがなの「の」をぐるぐる巻きにしたような印、ちょっと面白いですよね。どうやら「巻いた“の” = 牧野」という洒落をきかせた印なのだとか。博士のお茶目っぷりがうかがえます。
同園には、博士が晩年に使っていた書斎と書庫の一部が「鞘堂」として残されています。ここに当時の「書斎」を再現するプロジェクトが進められてきましたが、2023年4月に一般公開されました。
4万5千冊もの書籍を所有していたという博士。当時を模した書斎には、足の踏み場もないほどに蔵書が積み上げられています。愛用の電気スタンド、ガラスの「活かし箱」、双眼鏡などが置かれ、晩年の博士が研究に勤しむ臨場感が立ち現れるようです。
今話題のスポットとあって、多くの来園者でにぎわっていた〈牧野記念庭園〉。植物好きな人、歴史好きな人、古物好きな人と、楽しみ方もさまざまです。ぜひお出かけしてみてはいかがでしょうか?
Information
練馬区立 牧野記念庭園
場所:東京都練馬区大泉6‐34‐4
開館時間:9時~17時
休館日:火曜、年末年始
入館料:無料
TEL:03‐6904‐6403
サイト:練馬区立 牧野記念庭園
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