【自分と向き合う《自画像》の魅力】

こんにちは! 初心者大歓迎の《骨董・美術品専門のオークションサイト》サムライオークション、スタッフの利休です。

在宅時間が長くなると、自然と自分の顔を見る機会が増えてしまいます。オフィスでは、手洗いを済ませれば直ぐ出ていくところ、洗面所の鏡で顔を眺めながら『皺が増えたな』とか『疲れているな』と思ったり。そう、普通の人は自分の顔と向かい合う時って、どちらかと言えばネガティブな気持ちを呟きますよね? おそらく、調子が良い時には自分と向かい合う必要がない、というところでしょうか。

自画像で思い出すのは、鴨居玲(かもい・れい:1928〜1985年)とアルブレヒト・デューラー(1471〜1582年)。鴨居玲は、今年が没後35年ということで、この7、8月に回顧展が石川県立美術館で開かれていました。彼の作品には、人間の深部に隠されている、生々しい本質が描き出されている気がします。

鴨居の自画像からは、作家が創作と向かい合う上での苦しみのようなものを感じます。人間は多面的な存在なのに、わざわざその暗部、翳の部分に惹かれてしまうことに、自分自身も戸惑うことがあるのですが、本質を見つめるというのはそういうことなのかもしれません。

そして、デューラー。鴨居の自画像に対して、未来に向かって明るい光を見続ける、そんな強い意志を感じるのが、1500年に描かれた自画像です。デューラーが生きた時代、画家が自画像を描くのはまだ珍しかったようですが、彼は数枚の自画像を残しています。最も有名な1500年の自画像は、自身をキリストに模して描いているらしく、明暗法によって光が強調された顔、眼力の強さは確かに神々しい。

同じように人間の奥深いところにある何かを描き出した作品でありながら、一方は翳を、もう一方は光を見ている、そんな印象です。生きた時代、背景も違うので単純に比較はできませんが、どちらも人の本質を捉えた魅力的な作品です。

【《花鳥画》の魅力】

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先日の台風10号も恐ろしかったですが、まだまだ台風シーズンは続きます。本当に自然の脅威の前では、人間は手も足もでないということを思い知らされます。ただ、時として恐ろしい顔を見せる自然だからこそ、人の思うようにならないというところにまた、美しさを感じるのかもしれません。

諸行無常、常に変わり続ける自然の儚さに美を感じる日本人のメンタリティーから、数々の花鳥画の名作は誕生しました。

現在、サムライオークションには、花鳥画の名品も数多く公開されています。

《▼『花鳥画』での検索結果・作品はこちらです》

花鳥画は、もともと中国で体系化され、日本に広がった画題のひとつです。花と鳥の他に、草木や虫、小動物が描かれたものも含まれます。自然の美しさ、命の尊さを感じさせるものから、風物詩などもあり、例えば軸ものであれば、季節ごとに自然やお客さまに合わせて、気分に寄せた作品を掛けて楽しみたいものです。

現代人の感覚からすると、作家が心の内なる創作欲求から作品を描いたように考えてしまいがちですが、社会や人々から求められて製作された花鳥画も、数多くあります。

【帝王と呼ばれた男《東郷青児》】

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安倍首相が辞意を表明してから、マスコミは自民党総裁選挙の話題でもちきりです。日本最長の在任期間だったとはいえ、それほど強烈な個性を感じることのない安倍首相ですが、次の総裁と目される菅さんも、あたりさわりのない選択肢として浮上してきた地味な印象。これも時代の流れというものでしょうか。カリスマは、どのジャンルでも、時代の要請に応えて誕生すると言われます。

かつての日本に、帝王と呼ばれたアーティストがいたことをご存知でしょうか? 洋画家、東郷青児(1897〜1978年)です。コマーシャルアートの分野で活躍していたため、その作風であるデフォルメされた女性像を、どこかで目にしたことがあるかもしれません。

19歳で二科賞を受賞した早熟の天才は、その後パリに渡ってパブロ・ピカソ(1881〜1973年)とも交流を持ったそうです。帰国後は、日本の絵画マーケットに違和感を感じていたようですが、自分の表現を追求し、少しずつ自分のスタイルを確立していきました。ただ、作品以上にそのスキャンダラスな生活が人々の興味・関心を惹き、マスコミに多くの話題を提供しました。

既婚のまま別の女性と結婚披露宴を挙げたり、32歳の時に19歳の愛人と自殺未遂を図ったり。派手なのは女性関係だけではなく、仕事面でも雑誌の挿絵や書籍の装丁、壁画など幅広く精力的に活動、展覧会への動員を増やすためのパフォーマンスなども行っていたようです。エネルギーに溢れていたんでしょうね。

東郷が最も活躍していた明治から大正の時代は、いわば日本の産業革命時代。大量生産や民主化が進み、日本が西洋化と近代化を目指していた時代です。大きく変わっていく価値観について、戸惑いや迷いを感じる人も多かったと思います。そんな時代だからこそ、東郷のような強烈な個性や時代の流れにのった新しいスタイルの作品が、大衆から熱狂的に支持されていったのかもしれません。

現在、サムライオークションには、東郷青児とその流れをくむ作家の、作品取り扱いがございます。ぜひご覧ください。

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【心が静まる《仏画》のオススメ】

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洋の東西を問わず、近代以前の社会では宗教が人々の生活に与える影響は、現代社会比較にならないほど大きなものでした。疫病や天災の時に、絶望する人々に寄り添う無名の僧侶がいたかと思えば、時の権力者の近くで存在感を強める寺院があったりと、影響力が強かっただけに、その功罪も大きかっただろうと想像します。

教会やお寺には、祈りの対象としての彫刻や絵画があり、そこで祈ることで精神の安寧が実際に保たれていたのだと思います。宗教には、今以上の力が備わっていたはずです。

やがて経済的に豊かな人々が、祈りの対象を自宅にも欲しいと願い、宗教画の需要が社会に広がっていきます。ただ、そうはいっても、家に祈りの対象を持てる人々というのは、長いこと少数派だったと思います。きっととても高価な、贅沢品だったんでしょうね。

日本では平安時代から、仏像とともに仏画が多く制作されるようになり、鎌倉時代からそのバリエーションが広がって、室町時代には特に禅画が盛んに描かれるようになりました。ただ、江戸時代以降は、文人画や浮世絵など絵画のジャンルがさらに多彩になったために、仏画というジャンルの持つ価値や意味合いが変化していったのだと思います。そして、明治時代以降、新しい仏画が誕生して現在に至ります。

現在、サムライオークションには、数点の仏画の作品が公開されています。

《▼『仏画』での検索結果・作品はこちらです》

いずれも特長的な作品ばかりです。その画に向かい合ってみると、そこに特別な物語を感じたり、信仰を持たない自分でも自然と静謐な気持ちになることができます。やはり、お葬式や法事などで、ずっと身近にあった仏教的な考え方や物語が、身に備わっているのでしょうね。 ぜひご自宅に飾ってみてはいかがでしょうか。

【この秋は、骨董市に行ってみませんか?】

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もともと集団で生活するように最適化され、進化してきた人間にとって、人との接触を制限されることは、多くの人にとってしんどいことだと思います。ただ、まだまだ油断はできないとはいえ、新型感染症もある程度の落ち着きをみせてきています。

誰かと出会うこと、触れ合うことで人は成長します。刺激を受け、気づき、考えることがとても大切。骨董や美術にも同様の効果がありますね。全く知らなかった作家や作品に出会い、何かを感じて好きになる、そんな瞬間が大好きです。

サムライオークションはネットオークションなので、コロナ禍でのネット閲覧推進をもっとPRするべきなのでしょうが、今回は大江戸骨董市のご紹介をします。

春先からずっとお休みだった大江戸骨董市は、10月4日(第1日曜日)・18日(第3日曜日)に東京国際フォーラムにて開催予定です。新型コロナ感染症の状況によっては、中止になることもあると思いますので、事前に以下のサイトより、情報をご確認ください。

《大江戸骨董市・公式ホームページ》

骨董ファンの方でしたら、ご存知の方も多いかもしれませんが、大江戸骨董市は、〈有楽町・東京国際フォーラム〉と〈原宿・代々木公園ケヤキ並木※8月現在、次回開催日程は未定〉で開催されているアウトドア骨董市です。

日本最大規模とうたわれているように会場が広く、なんと言っても屋外なので、参加者が最低限のマナーとしてマスク着用で感染防止に努めていれば、それほど感染の心配もしなくて済むと思います。

出店数は約250店舗、一見フリーマーケットのように見えるお店もありますが、出店資格は〈古物商許可証〉取得者なので、身元は確かな方ばかりです。陶磁器、版画、軸物、道具類、などなど、あらゆるものがありますし、陳列も個性豊かでユニーク。初心者の方に最適だと思います。お時間があれば、ぜひ足を運んでみてください。 気になる作家や作品と出会った時には、サムライオークションでも検索してみてくださいね!

【《長楽無極》誰もが憧れる心持ち】

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休日は外出を控えていますし、テレワークも多くなり、自宅で過ごす時間が増えています。猛暑も続いています。無自覚でもストレスは溜まっているのでしょうね。少し心がささくれている気がします。

そこで、書を表してみました! まず、何を書くか悩みました。まあ、アレコレと書いてはみたのですが、こちらでご紹介する言葉は何にしようかなと…。お手本を見ながら、練習すること1時間です。『泰然自若』『大器晩成』『悠々自適』…。今の気分にしっくりくる言葉を探しながら、筆をふるっているうちに、だんだん楽しくなってきました。

書も絵画も、さまざまなスタイルがあり、多くの巨匠がいて、お手本にするのは良いと思うのですが、お手本の通りに書ければ正解というものではなく、要は自分が気に入った絵が、文字が、表現できれば満足、ハッピーということですね。そんなことに改めて気づきました。そこで、公開作品は『長楽無極(ちょうらくむきょく)』にしました。楽しみが限りなく続くこと、極まることがない楽しみ、という意味ですね。

嫌いなことを無理に『楽しい』と思うことは、できないのです。ただ、はじめは楽しくなくても、一生懸命やっているうちに、楽しくなってくることはあります。仕事が典型ですね。気分が乗らなくても、とにかく数分でもいいから集中してみる、頑張ってみる、そこから気持ちが乗ってくる、ということもあります。いつもうまくいくわけではありませんが(^_^;)。

ちなみに、龍のすずりは、栃木の骨董市で落札したものです。古いもののようですが、それほど使い込まれているようでもなく、以前の持ち主の方はどんな方だったのだろうと、いつも考えてしまいます。モノを通じて、見知らぬ人とつながることができるのも、骨董の楽しみのひとつですね。

サムライオークションには、骨董の各種道具類も取り扱っています。時間のある時にぜひご覧ください。

【風呂敷ブームで思い出す《クリスト》の梱包アート】

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レジ袋有料化で、風呂敷が密かに人気のようです。学生時代、なぜか風呂敷を使っていた事がありました。はっきり言って、とても便利です。今は生地や柄も選択の余地が広がって、ブームもうなずけます。

今年5月、現代美術家のクリスト(1935〜2020年)が亡くなりました。歴史的な建造物や自然や公園の風景をラッピングする作品は、常に大きな話題となって、世界を騒がせました。オーストラリアの海岸やパリのセーヌ川にかかるポンヌフ橋、ドイツの国会議事堂などなど、今調べてみてもよく実現できたなぁという印象のものばかりです。日本でも1991年に茨城県常陸太田市で巨大な青い傘を立てる《アンブレラ》プロジェクトが行われています。

このような巨大な構造物や自然をラッピングする行為が、なぜアートになるのか、美術評論家のような専門家の間でも、議論の対立があったように記憶していますし、私自身ももちろんよくわからず、アーチストというよりも、何かビッグイベントのプロモーターのような印象さえ持っていました。

しかし、2016年に水戸芸術館で行われた作品回顧展などを見ると、作品の舞台となる理想的な土地を探して日本全国を探した話や細かい設置場所などについて解説があり、当然ですが明確な意図を持って巨大な傘を1340本立てていることがわかります。茨城県の山間地の谷間にならぶ巨大な傘は、壮観なだけではなく、日本に住む人間の社会を想起させる力があります。 歴史的建造物を包む行為も、鑑賞者に新しい視点を与え、その建物を包む意味を考えさせることで、人間の営みやその本質に気づかせてくれます。新しい視座の提供、物事の本質の啓示というような意味で、まさしくクリストにしかできない、唯一無二のアートなのだと思います。

【《飛鳥美人》の公開に美人を考える】

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優しくて仕事も早い、見た目も男前な知人がいます。当然、若い頃はモテモテでしたが、数年前に偶然街で再会した時、結婚したと聞かされた相手に衝撃を受けました。『蓼食う虫も好き好き』ということわざの意味を、人生で初めて実感しました。いや、お二人が幸せであるならば、何の文句もございませんです、はい。

7月18日から24日まで、『飛鳥美人』の愛称で呼ばれる国宝、高松塚古墳壁画(7世紀末〜8世紀初め)が一般公開されました。事前に募集した見学希望者は、4476人もいたそうです。熱心な美術ファン、考古学ファンの方が多いですね。

約13年にもおよぶ修復作業によって、極彩色の女子群像の汚れやカビが除去され、下地のしっくい強化などが行われたそうです。ただ、その一般公開の様子は、修復作業のためにバラバラに分割された壁画を、貸し出されたオペラグラスを使ってガラス越しに覗くという感じで、少し残念な印象でした。

やはり、壁画はできればそれが描かれた環境の中で、その当時の歴史などを想いながら、先人画家の創作活動を想像するというのが、理想的な鑑賞作法のような気がします。たしかに貴重な人類の遺産なのですが、切り出されてガラスケースに入った壁画に少し違和感を持ちました。

文化庁は「新しい常設施設をつくり、もう少し見やすい形での公開を目指す」としているので、今後に期待したいところです。

ところで、美人の定義ですが、よく時代によって変わると言われます。確かに平安時代の下膨れとか、西洋画古典のぽっちゃり体型とか、現代人のセンスとそのまま比較するのはナンセンスだと思いますが、そもそも何が美しいかというのは、いつの時代でも完全な正解があるわけではありません。

何が美しいのかは、人ぞれぞれに好みがあり、異なる基準があります。描かれる感情表現についても、わかりやすい豊かな表情が好きな人もいれば、控えめな描き方を評価する人もいます。

目の前の作品をじっくり見て味わうのと同時に、作者の意図(趣味嗜好)や時代背景なども合わせて鑑賞し考えるということが、美術の楽しみ方の大きなポイントだと思います。

サムライオークションにも、幅広い作品が出品されています。あなた好みの作品を、じっくりと探してみてください。

【利用されてこその文化施設】

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これまでの人生で、思わず叫んでしまうほど感動したライブシーンが2回あります。1回目は1995年、野茂英雄のMLBデビュー戦。ドジャーブルーのユニフォームの野茂投手がマウンドに上がった時、なぜか涙が出てきました。2回目は1998年、中田英寿が2ゴールを上げたセリエAでのデビュー戦です。それほど熱心なファンではない自分があれほど感動したのですから、多くの国民に対して少なからず影響はあったのだと思います。

文化庁は先日、金沢市に移転する東京国立近代美術館工芸館(国立工芸館)を10月に開館すると発表しました。名誉館長には、中田英寿氏が就任。国立工芸館は日本で唯一の工芸専門の美術館。陶磁器やガラス、漆器、木工など、約1900点の作品を金沢市に移すそうです。

また政府はこの8月、文化施設を拠点とした観光振興のための『地域文化観光推進法』に基づいて、支援対象となる全国10地域を初めて認定しました。海外への情報発信や、施設の利便性向上などを幅広く支援するそうです。

今回認定されたのは、秋田県の『増田まんが美術館』、福井県の『一乗谷朝倉氏遺跡』、愛知県の『徳川美術館』など。税金の使い方ですから、賛否両論はあると思います。それでも、文化施設は人々に利用されてこそ、はじめて意味をなします。影響力のある人がPRしたり、ノウハウのある人が持続性のある運営をサポートするのはとても有効です。

景気が悪くなり、経済的な余裕がなくなると、人々の文化的な活動は急速に停滞してしまいます。ましてや感染症拡大防止策として、美術館などは長らく閉館し、その経営や運営についても問題にされることが増えています。文化財の公開、美術館の運営ノウハウとコスト、そして経営と、いくつもの難しい課題が複合的に存在し、日本の文化度のレベルをそれなりに形成しています。

コロナ禍が落ちついた後、国からの助成がなくなり、財源不足になった時、広く日本の美術業界には、危機的な状況がくるのかもしれません。アーティストを育てるのと同様に、文化財の保護にも、ある種のパトロン的な存在が必要になるような気がします。ネサンス期のメディチ系や日本の松方幸次郎(1866〜1950年)、薩摩治郎八(1901〜1976年)などのような、太っ腹の起業家の出現に期待したいところです。

サムライオークションもまだ大きなことは言えませんが、皆さまの美術鑑賞のお手伝いを通じて、日本の文化度向上に少しでも貢献していきたいと思っています。

ガラスの宝石【とんぼ玉】

こんにちは!《骨董品・美術品専門のオークションサイト》サムライオークションスタッフの井戸です。

暑い季節に飲みたくなる飲み物といえばラムネですよね。ラムネの瓶に入っているビー玉を集めたことがある方は多いのではないでしょうか。ビー玉は不要なガラス瓶を砕いたものが原料となり、工場で大量生産されます。

そんなビー玉とは用途も製造方法も違うガラス製の玉に、「とんぼ玉」というものがあります。とんぼ玉は、ガラス工芸のように職人の方が、ガラス棒をバーナーなどの高温の火にかけて、溶かしながら形や模様を作ります。トンボの目を連想させる形や模様をしており、ビー玉と違って穴が通っています。

とんぼ玉は、太古の時代からお守りや上流階級のアクセサリーとして大事に扱われてきました。古代エジプト時代では「目」をあしらったアイビーズと呼ばれるデザインが邪悪なものを睨み返す力があるとされ、身を守る意味がありました。また、副葬品として高貴な人々が亡くなった時一緒に埋葬されたりと、神秘的な力を持つと信じられてきました。その後シルクロードから中国へ伝わり、伝統的なガラス工芸の技術があったイタリアのベネチアでは、宝石のような価値があるとんぼ玉が製造されるようになります。これは「トレードビーズ(交易玉)」と呼ばれ、宝石や金と交換されました。

日本では江戸時代に大流行し、煙草入れの袋の紐を締めるためや、女性のかんざしや帯留めに使われました。当時のオシャレ小物としてアクセサリーにしたり、組み合わせでコーディネートを楽しみ、オシャレを競い合っていました。しかし、とんぼ玉は贅沢品として幕府に禁止されたこともあるなど、小さいながらも高価な宝石のような存在だったのです。日本独特の四季の風景を表した色彩が使われているものは貴重で、とても高い価値がある場合があります。また、製造の都合上、直線のデザインが一番難しいとされるので、鑑賞の際に参考にしてみると良いでしょう。